2024.08.02
攻めさせるのが勝利の近道 糸谷八段が羽生九段に快勝で2勝目 第83期順位戦B級1組3回戦
第83期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、3回戦計6局の一斉対局が8月1日(木)に各地の対局場で行われました。このうち関西将棋会館で行われた羽生善治九段―糸谷哲郎八段の一戦は糸谷八段が119手で勝利。中盤の競り合いから抜け出して今期順位戦2勝目を挙げています。
■2か月ぶりの再戦
羽生九段2連勝、糸谷八段1勝1敗で迎えた3回戦。先手となった糸谷八段は角換わり早繰り銀を採用します。両者の間で6月に戦われた王座戦の将棋では先後逆で、糸谷八段の一手損角換わりに羽生九段が早繰り銀で挑んでいただけにその後の展開に注目が集まります。
さて本局、首尾よく3枚の歩を手にした糸谷八段は自玉の壁形を解消するべく持久戦を志向します。これに対しすでに金銀4枚の堅陣に玉を収めていた羽生九段は積極的な自陣角で局面を打開、玉側の守りについていた銀桂の協力で右辺からの勢力拡大を目指しました。
■糸谷八段が受け切り勝利
羽生九段はその後も曲線的な指し回しで戦場を拡大しますが、先に好手が出たのは糸谷八段のほうでした。25分の熟慮でじっと飛車先に歩を打ったのが重厚な一手。後手の攻めの要である桂さえ捕獲すれば自然と後手の攻め急ぎを誘えるというのが優れた大局観でした。
黙っていては桂損に陥る羽生九段は足を止めずに攻めを続けますが、9筋を攻めるために銀を差し出したのは小さくない犠牲。この手を境に形勢の針は大きく糸谷八段に傾きました。終局時刻は20時28分、最後は攻めが途切れたところで羽生九段が駒を投じました。
これで勝った糸谷八段、敗れた羽生九段ともに2勝1敗に。次回4回戦は8月22日(木)に各地の対局場で行われます。
6月のリベンジを果たした糸谷八段は対羽生九段戦12勝目を挙げた(写真は第46期棋王戦第1局のもの 提供:日本将棋連盟)
水留啓(将棋情報局)