「技術論よりも精神的脆さの改善を」永瀬拓矢九段が藤井聡太王座とのリベンジマッチへの意気込みを語る|将棋情報局

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「技術論よりも精神的脆さの改善を」永瀬拓矢九段が藤井聡太王座とのリベンジマッチへの意気込みを語る

【取材】田名後健吾

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 藤井聡太王座への挑戦者を決める、第72期王座戦挑戦者決定戦(主催:日本経済新聞社)が、7月22日に東京「将棋会館」で行われ、永瀬拓矢九段が羽生善治九段を114手で破り、挑戦権を獲得した。



永瀬と藤井のタイトル戦は3度目。昨年の王座戦で「王座」を奪われたため、リベンジマッチとなる。永瀬王座は「前期は悔いが残る内容になってしまいましたので、今期はその点を改善してよい将棋を指せればと思います」と語った。



また、本局に勝っていれば現職の日本将棋連盟会長として、故・大山康晴十五世名人以来38年振りの挑戦者となっていた羽生九段は、「残念でした。また次の機会に頑張りたいと思います」と話した。



五番勝負の日程は、下記の通り。
【第1局】9月4日(水) 神奈川県秦野市「元湯陣屋」
【第2局】9月18日(水) 愛知県名古屋市「名古屋マリオットアソシアホテル」
【第3局】9月30日(月) 京都府京都市「ウェスティン都ホテル京都」
【第4局】10月9日(水) 兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」
【第5局】10月31日(木) 山梨県甲府市「常磐ホテル」



◎感想後に開かれた、永瀬拓矢九段の記者会見質疑応答

●挑戦権獲得、おめでとうございます。タイトル挑戦はおよそ2年ぶりになりますが、挑戦を決めた今の率直な心境を教えてください。
「(これまで)挑戦者決定戦でかなり多く負けてしまっていたので、ここで一つ結果を出すことができて良かったというのと、それが(昨年にタイトルを失った)王座戦というのは、運命的なものも感じます」

●おっしゃる通り、各棋戦であと一歩という状況が続いていましたが、その辺のことはご自身でどのように受け止めていらっしゃいましたか。
「歴代(の棋士)で見ないぐらい、たぶん(自分は)挑戦者決定戦で負けてるかなと思っていたので。それが払拭できたわけではないですけど、一つそういう傾向を変えることができたなら良かったとは思います」

●先ほどの終局後のインタビューで「前期の王座戦は悔いが残る内容だった」というふうに振り返っておられましたが、この1年近くの間、どのように受け止めておられますか。
「去年の王座戦は、自分としては精神的な未熟さがダメージとして残ってしまったので、それは自分の弱さとも向き合う機会にもなりましたし。思っていたより弱い部分が目立った1年だったのかなと思いました」

●五番勝負の相手は藤井聡太王座となります。リベンジマッチに向けての意気込みをお聞かせください。
「去年の王座戦は自分としては内容が良かっただけに悔いが残るシリーズになってしまいました。藤井王座のとのタイトル戦は1年ぶりということで、普段から(公式戦やVSなどで)将棋を教えていただいてるんですけど、やはりタイトル戦だと、ひと味もふた味も違う印象がありますので、しっかり準備したいなと思っています」

●先の叡王戦で、藤井さんがタイトルを1つ失いました。藤井さんに対抗する棋士が、かなり研究を重ねてきている状態になっています。その状況についてどのように捉えられていますか。
「藤井さんに対する対抗策がうまくいってるっていうことですか? 私はうまくいってるという認識は持っていません」

●現在の藤井さんの調子についてはどのように見ていらっしゃいますか?
「調子ですか? うーん、それを言及するのはなかなか難しいわけですけど……。最近は、藤井さんに将棋を教えていただいても、けっこう五分の成績にはなってきたので。何と言ってよいか分からないですが、一番良い状態ではないのかなとは思います。藤井さんのギアがすごく上がるのはよく知っているので、いつ上がるかと・・・・・・。伊藤匠さんに敗れたタイトル戦(叡王戦)を見ても、評価値上は藤井さん側に〈よし〉という点数が出ていていたし、今までならどんなに難解(な形勢)でも勝たれていたのかなと思います。そこで100点の手を指さないと(形勢が)覆って結果が逆になってしまう場合がありますし、伊藤さんとのシリーズはそういう認識で、藤井さんが何か変わったというわけではないような気がします。いつも穏やかですし、本当に謙虚で素晴らしい方っていうのはずっと変わらないので、本人としては何かエラーの部分があったのかなとは思います」

●永瀬さんが今年の朝日杯で優勝された後に「王座戦のあと、魂が抜けたようになって調子を崩していたところもある。最近になって無理なく努力ができるようになり、調子が戻ってきた」というようなことをお話しになっていましたが、現在のご自身の調子についてはどのようにお考えですか?
「そうですね。去年の王座戦と、いまのこの時期とを比べると、レーティングで言うと自分の感覚では50から100ぐらい下げてる内容なので、去年よりは精度も低いかなと思います。ただ、それでも挑戦者決定戦に進めることは多くありましたので、そこはチャンスをつかめるかどうかなのかなとは思ったんですけど」

●昨年の王座失冠のダメージというのは、どのような状態になって、それをどのように克服して立ち直れたのでしょうか。
「立ち直れたわけではないような気がしますね。あと、どういうことが起きたかというと、今のトップ棋士の中では自分は精神的に弱いほうに入るんですね。強い部分もあると自負はしているんですけど、弱い部分があるからこそダメージを深刻に受けてしまったという感触があります。他の方ならそんなにダメージを受けずにそれを消化したり糧にしたりできたかなと思うんですけど、ダメージが無くならないような状態にしてしまったのは自分自身のせいだと思っているので。ただ、自分としてはダメージを受けることによって、その弱い部分をちゃんと見つめ直さなければいけないというか、逃げてはいけない部分ではあったので。まだ100パーセント改善できているわけでは全然ないんですけど、少しずつ改善していっているつもりです」

●藤井王座とのVSは、去年の王座戦の頃はどれくらいの成績だったのですか。
「ええと、全然覚えてないです(笑)。たぶん五分くらいで、同じような成績だったような気がするんですけど。藤井さんとのVSは、2パターンに分かれることが多くて、こちらが圧倒的に負け越すか、少し勝ち越すかのどちらかだったんですけど、五分に近い成績というのは、ある時期にたまに現れる現象で、それがいま現れているという印象です。藤井さんと五分というのはなかなか珍しいですね。ただ、藤井さんは(将棋の)内容を重視されているので、スコアの結果はあんまり重要視されていないのかなとは思っています」

●今年の朝日杯将棋オープン戦で優勝された際に「借りを3分の1返せた」という話だったんですけれども、今回、王座を取り返せれば借りは完全に返せたことになるのでしょうか。
「3分の1というのは正確ではないかなと思うんですけど(笑)、今回結果を出して、藤井さんに今までタイトル戦で勝ったことありませんので、勝てるようにしたいなと思います」

●昨年のこの1年間で、努力の量とか質ですとか、永瀬さんの中で何か変えられたことというのはあるのでしょうか?
「今までは技術論のみ重視していたんですけど、最近は私がトップの中でかなり精神的に脆いというのが分かりました。バランス良くできるタイプではないので、精神的な強さというものを身につけなければいけないかなと思っています。なのでおそらく今まで技術論だけで生きてきたわけなんですけど。自分と向き合うことでそういう脆さを少しずつ改善できたらと思っています」

●自分と向き合うというのは、どういうことでしょうか。
「例えば、毎日10時間勉強した際、お風呂に入った時に自分と向き合ったり。何て言うか、ふとした瞬間に自分と向き合うということなんですけど。息を抜く時に、趣味に走ってしまうんじゃなくて、自分と向き合うってことです。勉強時間は(毎日)変わらなくても、自分と向き合う時間がかなり重要かなと思っています」

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