【夢の大舞台へ】西山朋佳女流三冠、棋士編入試験へ即決表明「受けるからには出来ることをしっかり」|将棋情報局

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【夢の大舞台へ】西山朋佳女流三冠、棋士編入試験へ即決表明「受けるからには出来ることをしっかり」

【取材・写真】田名後健吾

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 西山朋佳女流三冠が、7月4日に東京・千駄ヶ谷「将棋会館」で行われた第18回朝日杯将棋オープン戦(主催・朝日新聞社)一次予選1回戦で阿部光瑠七段に勝利。これで公式戦直近の成績が13勝7敗で「棋士編入試験」の条件(いいとこ取りで10勝以上、かつ6割5分以上)を満たし、受験の資格を獲得した。



該当成績の内訳は下記の通り。

2023/06/07 第95期棋聖戦 〇 木下浩一七段
2023/06/07 第95期棋聖戦 〇 所司和晴七段
2023/07/28 第17回朝日杯 〇 堀口一史座八段
2023/07/28 第17回朝日杯 〇 谷合廣紀四段
2023/08/10 第13期加古川青流戦 〇 齋藤優希三段
2023/08/10 第13期加古川青流戦 ● 横山友紀四段 
2023/09/19 第95期棋聖戦 〇 梶浦宏孝七段
2023/09/19 第95期棋聖戦 ● 三枚堂達也七段
2023/09/21 第72期王座戦 ● 島朗九段
2023/10/04 第17回朝日杯 〇 渡辺和史六段
2023/10/04 第17回朝日杯 〇 佐々木大地七段
2023/11/15 第32期銀河戦 ● 藤本渚四段
2023/12/08 第17回朝日杯 ● 佐藤康光九段
2023/12/25 第37期竜王戦6組 ● 小山怜央四段
2024/01/26 第50期棋王戦 〇 富岡英作八段
2024/03/05 第50期棋王戦 ● 谷合廣紀四段
2024/05/20 第74回NHK杯 〇 木村一基九段 ※放送日は6/23
2024/05/24 第96期棋聖戦 〇 石田直裕五段
2024/05/24 第96期棋聖戦 〇 高橋道雄九段
2024/07/04 第18回朝日杯 〇 阿部光瑠七段

阿部七段との対局終了時点ではコメントを避けたが、午後の対局(2回戦・佐々木大地七段)終了後に報道各社のインタビューが開かれ、その中で受験の意向を表明した。



●まず、本日午前の阿部七段との対局を制されて、公式戦成績13勝7敗となって、棋士編入試験の受験資格を得られました。まずこの成績を収められたことに関して伺えたらと思います。
「目の前の一局一局をしっかり指そうという意識でいて、気づいたらあと1勝という形で注目をしていただいたので、自分自身めまぐるしいというか。また(いつもと)違った緊張感で今日を迎えていたかなと思います」

●棋士編入試験の受験資格を獲得されました。この資格は申請し、行使されるご意向でしょうか。
「そうですね。先ほど昼食休憩の後に(事務局に)お伝えし、受験させていただこうと思っています」

●棋士編入試験五番勝負に向けての思いを伺ってもよろしいでしょうか。
「そうですね・・・・・・。今日の話なので、すぐには浮かばないんですけど、受けさせていただくからには出来ることをしっかりとやって挑みたいなと思っています」

●2021年に奨励会から女流棋士に転向されて、これまで公式戦をたくさん指されていましたが、棋士編入試験というのは、この3年間ずっと目標にされていたことだったのでしょうか。
「いや、あまりそういった意識は・・・。棋士編入試験を受けたくて一局一局指していたというよりは、目の前の一局を新鮮な気持ちで楽しみにこなしている感じでした」

●五番勝負が始まれば、棋士を目指す戦いになりますが、どうしてもメディアなどは「女性初の棋士へ」というような伝え方をすると思われます。そのあたりの意識はどうでしょうか。
「うーん、そうですね。私自身はそこまで、女性だからっていうことを意識してやるっていうよりかは・・・・・・。自分にとっての大勝負という気持ちで指すことになるのかなとは思っています」

●奨励会三段時代に一度、次点で上がれなかった時があって、そのあと女流棋士に転向されて、プロ棋士になるというモチベーションがいったん閉ざされたと思います。その後、棋士になるという思いについての変化はありましたか。
「うーん・・・・・・。14勝4敗の成績で次点となり、棋士の水準を満たしたかなといったところでの女流棋士としてのスタートだったので、そのあたりはとまどいもあったかなと思います」

●2021年の4月に、奨励会を年齢制限前に退会して女流棋士になられたわけですが、それを決断した時の気持ちを改めて教えていただけないでしょうか。
「当時はいろんな事情があったので。いろいろなことを加味して奨励会を続けるのは大変かなと思って退会を決断しました」

●それから3年余り経っているわけですけれど、ご自身の中で棋士へ憧れみたいな気持ちはずっとお持ちだったのでしょうか。
「女流棋界は本当に、知れば知るほど魅力的な世界だと私自身は思っていて、女流棋士として過ごしたこの3年間はすごく充実していたと思っています」

●今回、受験資格を満たした場合は、受けるということは事前に決めていらっしゃったのですか。
「いえ、今日のお相手は勝つことが本当に大変な方だと思っていたので、勝ったらという気持ちは全然なかったです(笑)」

●福間香奈女流五冠が(2022年に)先に棋士編入試験に挑戦されましたけれども、それはその結果を含めてどのようにご覧になっていましたか。
「同時期に小山さん(怜央四段)も受験されていたりして、それぞれ注目度が高いと思っていて、けっこう独特の空気感で対局しているのかなと端から見ていて思ったりしていました」

●受験することについて、師匠や誰かに相談されたりしましたか。
「いえ、していなくて、自分で決断しようと思いました。昼食休憩のあいだのことだったので、(急に)思い立ったという感じかもしれません。数少ない注目していただける機会だと思うので、積極的な選択をしようと思いました」

●受験資格獲得までの公式戦でのご自分の将棋は、充実しているという感じでしょうか。
「幸運な勝利が多かったと思うので、充実しているというよりは、試験の条件を満たす成績を挙げていたというのも結構、不思議な感覚があります」

●編入試験に向けての自信はいかがですか。
「当日までにどこまで準備できるかといったところも、かなり勝敗に直結すると思うので、ここからなのかなと思っています」

●西山さんにとって棋士四段になるっていうことは、ずっと目標であり夢であったのかなと思いますが、女流棋士を経験されたいま、四段になるということはどういうことなのでしょうか。
「四段だったりというよりかは、本当に積極的な選択をしたいなと思ったというほうが近いかなと思います」

●棋士編入試験五番勝負は、新四段5人が相手になります。いずれも強敵だと思いますが。
「やはり四段になりたての方々ということで、勢いも実力も大変あるのかなという認識です。そこでしっかり対抗できるように、準備することが大事だと思っています」

●五番勝負の日程はまだ決まっていませんが、女流棋戦やタイトル戦と並行する形になると思います。
「そうですね。過密日程といっていただく方が多いのですが、わりと日常的に対局があることにかなり慣れてきた面もあると思っていて。あとは大きく体調を崩さないようにっていうことを心がけようかなと思います」

●女性で棋士というのは今まで誕生していませんが、そこに向けて西山さんの中で何か思っていることはありますか。
「周りの女流棋士の方々であったり、ほかの女性の方々が応援してくださったり、励みになったと言ってくださる方もいらっしゃるので、そういったふうに捉えてくださるのであれば、光栄なことかなと思います」

●三段リーグで次点を取った時と、今と比べて、ご自身で伸びたところ成長したところはどこだと思いますか。
「そうですね、うーん・・・・・・、落ち着きとかは増したのかなととは思っています。あとは、体調を大きく崩すことも減ってはいます。プラスは何点かはあるかなとは思ってます」

西山女流三冠は、このあと日本将棋連盟に書面で申請手続きを行い、理事会で正式に受理されたのちに、五番勝負の日程と対戦カードが決まる。



●西山の師匠・伊藤博文七段のコメント
「西山さんから先ほど、試験を受けると連絡がありました。私の許可なく決めたことに恐縮してましたけど(笑)、決めてくれて嬉しいと伝えました。私は棋士を引退したので、伊達康夫一門の系譜が途絶えてしまうのかなと残念に思っていたので、西山さんにはいつも『棋士になってくれたら嬉しい』と伝えていたので、その気になってくれたのかなと思っています。だから師匠孝行なんですよね(笑)。これからが本番やでと伝えましたけど、本人はわりとプレッシャーは感じてないように思いますね、奨励会時代と比べたら。なので、意外とここ一番で勝ってくれる気がしてるんですけど。西山さんの将棋は面白いというファンが多いので、五番勝負では(気負わず)観ていて楽しい人が喜ぶ将棋を指してもらいたいですね」 お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
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