「考えているうちに『どうやら違うな』と・・・」藤井聡太竜王・名人が難問ぞろいの詰将棋解答選手権を語る|将棋情報局

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「考えているうちに『どうやら違うな』と・・・」藤井聡太竜王・名人が難問ぞろいの詰将棋解答選手権を語る

異次元すぎる藤井聡太竜王・名人の詰将棋解答力!

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皆さんこんにちは。「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ」でおなじみの編集部島田です。

今回は現在予約受付中の『令和6年版 将棋年鑑2024の巻頭特集「八冠達成!藤井聡太ロングインタビュー」の一部を紹介します。



毎年藤井竜王・名人にいろんなことを聞いているわけですが、今回は詰将棋パートで詰将棋解答選手権のお話をうかがいました。

藤井先生自身は残念ながら大会に参加されなかったのですが、後日、大会と同じ条件でご自分で解かれたとのこと。そこで1問ずつ簡単にコメントをいただく、・・・つもりだったのですが、さすが詰将棋好きな藤井先生、予想以上に多くのことを語っていただいたのでこちらで紹介したいと思います。

詰将棋解答選手権のチャンピオン戦は第1ラウンドと第2ラウンドに分かれており、それぞれ5問ずつ出題されます。ここでは第1ラウンドの5問について、斜め前の席でなすすべもなく聞いていた島田の感想を交えてお届けします。

では第1問から行ってみましょう!


高野真人作

――今回はこれまでにないほどの難問ぞろいでしたが、それぞれの問題について一言ずつコメントをいただければと思います。まずは1問目からお願いします。

「はい。1問目は例年11手か13手詰が多くて、この問題もそうなのかなと思ったのですが、考えているうちに『どうやら違うな』と気がつきました(笑)」

今回の問題は難問がそろっていたようで、1問目から頭を悩ませた方が多かったそうです。詰将棋解答選手権に参加した弊社の編集部員も、いつもあるはずのサービス問題がなかったとぼやいておりました。藤井先生もそれを感じたんですね。

「初手はこの一手ですが、△7四玉のときにどうするか、手が広いところです」

これを聞いていきなりビビっている島田がいました。初手は▲6三飛なのですが、「この一手」なんですか?(笑)。私には何もわかりません。藤井先生クラスになると「これ以外何があります?」というレベルなんでしょう。

「▲8三銀~▲8六桂とするんですが、上部に逃げ出される変化を読みきる必要があって容易ではない。また、収束が意表を突いていて、バッテリーを開いて(空き王手をして)終わりではなくて意外なところに開いて馬を取って竜を引いて、という収束です。最後も▲9三飛成とすると金を引かれて詰まないというトラップもあるので、1問目から難度が高いなと思いました」

藤井先生は空き王手のことを「バッテリーを開く」と表現されます。詰将棋界隈の用語ですね。おっしゃっているのは下の図です。



ここで▲9三飛成△7四合▲9四竜で詰んでいるように見えるんですけど、▲9三飛成には△7四金の移動合があるので▲8三飛成としないと詰まないよ、ということですね。
17手詰です。いきなりの難問ということでさぞ時間がかかったろうと思ったのですが・・・。

「10分くらいかかったと思います」

・・・これを聞いたとき、ワールドカップのアディショナルタイムを聞いた時の本田圭佑さんの「ななふぅん!?」と同じテンションで「じゅっぅぷん!?」と叫んでいる自分がいました。解答手順を頭の中で並べるだけで10分以上かかる自信があります(笑)。次は2問目です。


小笠原圭作

「そうですね。初手はよほどひねったことを考えなければ▲4三馬。そこで何を合駒するかが難しくて、歩合だと▲2五銀から詰むのですが、桂合だとその手順で詰まなくなるので桂合なんじゃないかという考えが出てくるところ。しかし読んでいくと高そうに見える香合が正解とわかって意表を突かれます。とはいえ香合まで見えれば、収束まですぐに見通すことができました」

これは初手▲4三馬に対する合駒が△3四香であること、つまり2手目について話しているのですが、それがわかったことで23手詰の収束まですぐに見通せるとはどういうことでしょうか。わけわかめですが、3問目にいってみましょう。


伊藤正作

「初手▲3三角は第一感で、△5二玉に▲8五角と打ったときの合駒読み。第一感はやはり△7四香合になるんですけど、これは▲同角△5三玉▲5二角成で思いのほか狭くて詰んでいる。△7四銀合が正解ですが、高い駒なので意外でした。銀合に対して▲同角△5三玉のときに▲4五桂△同香▲5四銀が見えるかどうか。逆にそこが見えてしまえばあとは容易なので、1問目や2問目に比べるとすんなり解けました。(中略)これは5分くらいでした」

第一感はやはり△7四香合になるんですけど、とおっしゃってますけど、なぜに「やはり△7四香合」なのかわかりません(笑)。しかもこんな盤面いっぱいに駒が散らばっている25手詰を5分で解けるんですか? もう怖いです。では4問目。


芹田修作

「見た目は手ごわいのかなという感じもしましたが、考えてみると3問目と並んで解きやすい問題だったかなと思います。手順構成として的確に逆算されていて、印象のいい問題に仕上がっていると思います」

――ではこちらも5分くらいでしょうか。

「作者名がわかっていたらもう少し早く解けたと思うんですが、初形で警戒して10分くらいかかりました。▲4一馬、▲5一馬のところで他の受けがあるのかなと考えてしまいました」

この問題の作者は芹田修さんなんですが、その名前がわかると早く解けるんですね。もちろん何故かはわかりませんが(笑)。それにしても詰将棋作家の問題傾向まで把握しているとはすごい。いよいよ第1ラウンドの最終問題、5問目です。


佐藤和義作

「見るからに変化を読まされそうな形をしていますが、初手は▲3七銀でほぼ一択。2手目に△同銀成とする変化がいきなり難しいのと、(5手目の)▲3八金のときに△1九玉の変化も容易ではないと思います。その2つがクリアでき▲3八金に△1八玉▲1七角成までいくと途端に読みやすくなります。変化を飛ばして作意から入るとすんなり解ける可能性もあるかなと思います。(中略)25分くらいかかりました」

初手▲3七銀でなぜほぼ一択なのかわかりませんし、▲1七角成までいっても途端に読みやすくならないんですが(笑)、そうなのでしょう。

「岩村凛太朗三段は第5問が4点だったので、18手目の△1五角(下図)のところで銀合を選択したのかなと思いました」



――確かにそうおっしゃっていました。そこまでわかるのはすごいですね。岩村三段は第1ラウンド43分で退室されて周りを驚かせました。昨年の将棋年鑑で藤井竜王・名人が次の優勝候補とおっしゃっていましたね。

「そうですね。△1五銀は▲同飛△同玉▲4二馬から詰むのですが、この▲4二馬が見えにくい手なので正解と錯覚されたのかもしれません」

藤井先生が詰将棋のライバルと考えているであろう岩村凛太朗三段。岩村三段の部分点を見て、おそらくここで間違えたのだろうと予想して見事に当ててくる藤井先生。しかもなぜその間違いをしたのかまで推測してくる始末。さすがです。怖いです。

詰将棋に関して一切妥協のないところを見せていただきました。

記事は以上となりますが、将棋年鑑では選手たちを絶望の淵に追いやった第2ラウンドの問題たちを藤井先生がどうやって攻略していったのかも掲載しておりますので、ぜひ読んでみてください。

また、詰将棋パート以外のところ(島田担当のお気楽部分)では藤井先生の「好きな野菜」「好きなパン」「好きなお味噌汁の具」「パイナップル星からの使者が地球に来た目的」「好きな数字」「将棋を何パーセント理解しているか」といった質問もぶつけてみましたのでご期待ください。

さらに八冠ロードの振り返りや今後についての話なども含めて14ページにわたる超ロングインタビューとなっております。
ここまで藤井先生の長いお話が読めるのは将棋年鑑だけでしょう(当社比)。

また今回の巻頭では、羽生善治九段、藤井猛九段、サバンナ高橋さんの特集も掲載しています。
八冠達成、将棋連盟100周年という記念すべき年の将棋年鑑をぜひ手に入れてください。

現在こちらで予約受付中です!!

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