【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年6月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年6月編

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皆さんこんにちは。「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかなぁ? バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第22弾です。ゾロ目です。最近暑いですね。みなさん元気に過ごされてますでしょうか??
6月は将棋の歴史が動いた月になりました。叡王戦で伊藤匠七段が勝って初タイトル獲得。藤井聡太竜王・名人の八冠の一角が崩れました。一般のニュースでも大きく取り上げられてました。将棋界の新しい物語が始まった感じでしょうか。節目のときということで島田的にもいろいろ思うところがあり、その辺も含めて書いていきたいと思います。

ではいきましょう!!

6月の対局まとめ
6日 棋聖戦五番勝負第1局 山崎隆之八段戦 勝ち
17日 棋聖戦五番勝負第2局 山崎隆之八段戦 勝ち
20日 叡王戦五番勝負第5局 伊藤匠七段戦 負け
6月はすごくいろいろあった気がしたのですが、対局としては3局だったのですね。棋聖戦が開幕して2連勝、そして叡王戦で敗れて2勝1敗でした。

では、順に振り返っていきましょう。

大な構想をとがめて先勝

6日 山崎隆之八段戦
ヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)第1局

序章 永世称号か初タイトルか
初タイトル獲得を目指す山崎隆之八段を挑戦者に迎えた第95期棋聖戦が始まりました。藤井先生にとっては自身初の永世称号獲得が懸かっています。棋聖戦は通算5期で「永世棋聖」の称号を獲得できるので今回防衛すればその条件を満たします。

藤井先生はあまり、というか全く意識していないと思いますが、ここで永世称号を獲得すると、中原誠十六世名人の持つ最年少永世称号獲得(23歳11か月)の記録を破ることになります。
この点に関して、私は何を隠そう中原先生にインタビューさせていただいたのでその時のお話を紹介させてください。

中原先生はいろいろな記録を持っているのですが、その中でも「最年少永世称号」は破られない記録だと思っていたそうです。それはなぜかというと、中原先生がこの称号を獲得したのは棋聖戦なのですが、当時棋聖戦は1年に2回行われていたからです。つまり、棋聖戦だけは永世称号が早く取れる状況にあったのですね。
棋聖戦の開催が年に1回になったことで、中原先生の記録は不滅の記録になるはずでした。
だって、23歳で永世称号を獲得するためには18歳で獲得して5期連続防衛しなきゃいけませんからね。18歳でタイトル獲得も難しいし、5連続防衛も難しい。そんな人が出てくるわけがない・・・はずだったんですけどね(笑)

そこは歴史を創る男、藤井聡太。不滅だと思われた記録に挑んでいきます。

第1局は島田のおひざ元(?)の千葉県。木更津のホテル三日月で行われました。
「ゆったりたっぷりのーんびり」のCMは千葉県限定かと思ってましたが、そうでもなかったみたいです。

前日のブランコでの撮影は印象的でしたね。世代的にブランコを見るとすぐに「アルプスの少女ハイジ」を思い出してしまうんですが、藤井先生は全然揺らしてませんでした。
いつか私もあのブランコに乗ってみたいです。これを読んでいる方の中にはすでに乗った方もいるんでしょうか? うらやまCです。

序章2 山崎隆之八段
初めての「序章2」です。いや、将棋の解説いつ始まるねん!って感じですが、何を隠そう私は山崎隆之八段に対局前にインタビューさせていただいたので、そのときのお話もさせてください。

山崎先生と言えば「独創性」「ちょい悪」「逆転」「優しい」といったキーワードが思いつきますが、私がインタビューしていて特に面白いと思ったのは「手の善悪以外のところで指し手を考えている」ということでした。将棋世界のインタビューを読んでいただいた方はわかると思いますが、過去にこういう将棋があって悔しかったのでリベンジしたくてこの手を指そうと思ったとか、これが最善だとしてもどうせ自分では正しく指せないのでイヤイヤ指したとか、指し手の裏側に人間的な感情があるのです。普通の棋士に自分の将棋を解説してもらうと基本的にその指し手が最善かどうかが基準になるわけですけど、山崎先生の場合、立体的というか、人間的な感情も込みで指し手を選んでいるのがとても面白いなと思いました。

山崎先生の武器である逆転術も恐らくここから来ていて、相手が指されて嫌な手は何か、という感情の部分の嗅覚に優れているのだと思います。

一方、藤井先生は盤上の真理を追究される方なので、山崎先生のような「対人戦術」に特化した棋士は真逆の存在、またそういう棋士とタイトル戦を戦うのは初めてです。
そういう意味でも今回の棋聖戦はどんな展開になるか予測できず、ファンの期待度は高かったと思います。

前夜祭での山崎先生の挨拶「挑戦者になってしまった棋士の山崎隆之と申します。対局場の景色が素晴らしく、そして部屋も素晴らしくて、体調万全で臨めることは間違いないのですが、問題があるとしたら私の技術面だけという……」というのも面白かったですね(笑)


第1章 相掛かり
ようやく将棋の話です(笑)。先手番は山崎先生になり、最も得意とする相掛かりを採用されました。序盤から独創的な将棋を指すことも多い山崎先生ですので、どんな大乱闘スマッシュブラザーズになるのかと思いましが、意外にも普通の出だし。しかし、やはりそこは山崎先生でした、中盤で意外な一手が飛び出します。

それが7筋の歩を伸ばす手でした。これで藤井先生の桂の動きをけん制して、7筋から盛り上がっていこう目論見だったようです。山崎先生らしい、遠大な構想でした。

第2章 満を持して
山崎先生の壮大な計画でしたが、なんと藤井先生の次の一手で瓦解してしまいました。藤井先生の銀引きが好手。何気ない一手見えて、山崎先生が盛り上がろうとして銀を上がった瞬間に角打ちを用意しています。銀を上がれないようでは山崎先生の構想は破綻してしまいました。結局山崎先生は7筋に傷を抱えたまま駒組みをすることになり、藤井先生が玉をしっかり固めた後に満を持して3筋から仕掛けていきました。

この仕掛けの判断は正しく、中盤でリードを奪った藤井先生が着実にリードを広げて、危なげなく勝ちきったのでした。

終局後のコメントで藤井先生は「序盤からあまり経験したことのない展開になってどういう構想で指していくのか難しかった」と語っていますが、ほぼノーミスの完勝と言っていい内容でした。

以前はこういう乱戦を苦手にされている印象もありましたが、最近は自信を持って指されているように見えます。強かったです。

島田的には名人戦の豊島先生との戦いの中でこういう力戦に対する自信をつけたんじゃないかと思ってるんですけどね。(藤井―豊島戦大好きマン)

逆に、山崎先生はいいところが出ず、反省の残る内容になってしまったと思います。
この辺りについては7月頭に発売される「将棋世界」に詳しい自戦解説が載ってますのでぜひ読んでみてください(流れるような告知)。

「永世棋聖」に向けて藤井先生が幸先の良いスタートを切った一局でした。
 

敏コスナーで向かい飛車粉砕

完全版はこちらで読むことができます。

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