室岡克彦八段、引退「地元・荒川で将棋の楽しさ伝えたい」|将棋情報局

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室岡克彦八段、引退「地元・荒川で将棋の楽しさ伝えたい」

室岡克彦八段が、6月17日に東京「将棋会館」で行われた第37期竜王戦6組昇級者決定戦1回戦で、岡部怜央四段に敗戦。フリークラス棋士引退規定により、引退が決定しました。
室岡八段は、1959年3月21日生まれの65歳、東京都荒川区出身。73年に6級で(故)佐瀬勇次名誉九段に入門。1981年2月に四段昇段。棋士番号153。現役生活は42年に及びました。
通算成績は454勝642敗。
対局後に行った室岡八段のインタビューコメントを紹介します。
(聞き手・田名後健吾)

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 ●今日の将棋は、後手の室岡八段の四間飛車に先手の岡部四段の居飛車急戦となりました。駒組みの途中で仕掛けるかなりスピードの早い将棋でしたが、終盤の入り口まで、3年前のご自身の公式戦で経験されている形でしたが。

「そうですね、20年ぐらい前に流行った将棋です。昔は研究したのですが、3年前の対局は時間の短い棋戦の予選だったこともあって変化を思い出せなくて(笑)。今日は同じ形になれば何とかしようと思っていたんですけど、研究していたときには浮かばなかった好手を岡部四段に指されてしまって、あっという間に負けてしまいました(笑)。岡部四段とは初手合いでしたが、全部研究されているんだなというのはすぐに分かりました」

●本局の敗戦で、残念ながら引退が決まりました。いまの率直な気持ちをお聞かせいただけますか。

「私はフリークラス転出の棋士だから、時間が経てば自動的にこの日がくることは分かっていましたから、それほど感慨はないです」

●6月13日の対局で青野照市九段が引退されて、短い期間でしたが室岡八段が最年長棋士でした。

「わずか5日間だけでしたけど(笑)」

●42年の棋士生活はどうでしたか。

「もうそんなに振り返ることはないんですけどね(笑)。51年前、私はここ(将棋会館)に奨励会試験を受けにきたんですけど、当時は木造2階建てだったんですが、いまそういうことを知っている現役棋士は泉先生(正樹八段)ぐらいでしょう。過ぎ去ってみればあっという間でしたね」

●思い出に残っている対局はありますか。

「対局が終わったばかりですぐには思い浮かばないです。いまは地元(荒川区)での普及活動を主流にやっているので、そっちのほうを考えています」

●室岡八段といえば、「室岡システム」や「室岡新手」といった独自の研究で知られていました。

「うーん、でも時代が違いますよね。いまはAIを用いての研究が主体で、人間の頭だけで考える時代ではないので。私は自分でアイデアを考えて研究するのが好きだったので、その時流にうまく乗ったというか……。今日まで42年間やってこられたのも、そのおかげではないかと思っていますけど」

●研究の成果をまとめた研究ノートは膨大にあるという噂があります。

「もう使うことがないので、どこかに仕舞っちゃいました(笑)」

●室岡八段の目で見て、いまのAI研究はどう映りますか?

「時代が変わればそうなりますよね。誰かが走り出せばみんな走り出しますから、当然のことだと思いますよ」

●室岡八段の若い時代にAIがあったらどうされましたか。

「どうしたでしょうね、自分が適しているかどうかは分からないから……。ようするに、AIがある時代はまた別の要素が必要なんです。簡単に言うと、強い人は常に栄える、弱者は必ず滅びる、そして(AIに)適した人が生き延びる。私は自分の時代に適した人だったから、今日まで42年間、棋士生活ができたんですね。だから、私がやったことをいま踏襲しようとしてもダメなんです。もう次の時代ですからね」

●室岡八段が主宰する「荒川こども将棋教室」(http://arakawakodomoshogi.blog.fc2.com/)は、いつ頃に始められたのですか。

「2012年のフリークラス転出と同時に始めました。いま、三段リーグで弟子の吉池(隆真)三段が勝っていますけど、教室を始めた動機は、そういう才能ある少年を育成しようということではなくて、とにかく将棋をやる子を増やそうと。将棋は楽しくてためになるんだということを地元の子どもたちに伝えようと思ったんです」

●これからは普及に専念していかれるということですが、未来を担う子どもたちにはどんなことを望みますか。

「将棋は、いろんなことを教えてくれるんじゃないかと。考える楽しさ。自分で決断すること。そして悪手を指したときには、それを受け入れなければいけない。そういったことを、将棋を通じて学んで成長してもらえればいいなと思っています」


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