2024.06.11
「いつ衰えるのか」「本当に強かった…」 羽生九段が糸谷流一手損角換わり撃破で四強入り 第72期王座戦挑戦者決定トーナメント
藤井聡太王座への挑戦権を争う第72期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は挑戦者決定トーナメントが大詰め。6月10日(月)には準々決勝の羽生善治九段―糸谷哲郎八段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、早繰り銀を用いて一手損角換わり戦法を攻略した羽生九段が121手で勝利。挑戦まであと2勝と迫っています。
■4カ月ぶりの対戦
両者の直近の対戦は2月に行われたB級1組順位戦。その際は相雁木の熱戦を羽生九段が制していました。振り駒が行われた本局は後手の糸谷八段が得意の一手損角換わりに誘導、対する羽生九段は早繰り銀の攻撃陣を急いで先手番の利を生かす作戦を打ち出しました。
定跡化された攻防が続いて戦いは一段落。右玉に組み替えた糸谷八段は主張ある一手を繰り出します。4筋の歩を伸ばして先手の銀を不自由にしたのがそれで、これに対し羽生九段も端に据えた遠見の角で応戦。ともに右辺で突っ張り合って局面の緊張が高まります。
■羽生九段がベスト4進出
後手が飛車を回って戦機が熟した局面、羽生九段は一転して左辺に手段を求めます。自らの玉頭の歩を突いて左銀をドリブルさせたのが、模様の良さを具体化する好手でした。後手は飛車が出払って自玉周辺がガラ空きなのを突かれた格好で、以降守勢を余儀なくされます。
飛車・角・銀・銀・桂と5枚の攻め駒を配備した羽生九段は攻めを基調に優位を拡大します。後手の反撃をいなしつつ攻め駒を補充したのは緩急自在の指し回し。華麗な玉さばきで自玉を安全にしつつ、いつの間にか後手玉を受けなしに追い込むことに成功しました。
終局時刻は20時56分、最後は自玉の詰みを認めた糸谷八段が投了。2期連続となるベスト4入りを果たした羽生九段は次戦で広瀬章人九段と対戦します。30分ほど行われた感想戦は「最後まで(2筋の)壁銀が祟る」という糸谷八段の一言でお開きとなりました。
羽生九段は局後「序盤からあまり指したことのない形になってしまい手探りだった」と明かした(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)
水留啓(将棋情報局)