【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年5月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年5月編

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皆さんこんにちは。「大事なのは強いか弱いかではなくて、自分の力で立ち向かったってことですよ」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第21弾。ラブレボリューション21です。
2024年5月は藤井聡太竜王・名人にとって試練の月でした。勝敗的にも将棋の内容を見ても苦しんている様子が見て取れましたので、ファンの皆さんも不安や心配にさいなまれた月だったのではないでしょうか(かくいう私もそう)。しかし、月末に行われた叡王戦第4局で、そんな重苦しい空気を吹き飛ばしてくれたのはさすがでした。

この間、島田も母将ぶりを発揮して最近の藤井先生の将棋について、いろんな棋士の先生に意見を聞きまくっていたので、その辺りの情報も含めて「今月の藤井聡太」、書いていきたいと思います。

ではいきましょう!!
 

5月の対局まとめ
2日 叡王戦五番勝負第3局 伊藤匠七段戦 負け
8、9日 名人戦七番勝負第3局 豊島将之九段戦 勝ち
18、19日 名人戦七番勝負第4局 豊島将之九段戦 負け
26、27日 名人戦七番勝負第5局 豊島将之九段戦 勝ち
31日 叡王戦五番勝負第4局 伊藤匠七段戦 勝ち
5月は3勝2敗でした。全体的に山あり谷ありの1ヶ月で、「藤井聡太ファンの心理メーター」を折れ線グラフで表したら、上下動がかなり激しいことになりそうです(笑)。
では、順に振り返っていきましょう。

ピンチ!連敗でカド番に

2日 伊藤匠七段戦
第9期叡王戦五番勝負(主催:株式会社不二家)第3局

序章 解き放たれた伊藤七段
叡王戦第2局で13局目にしてついに藤井先生から1勝をもぎ取った伊藤先生。この初勝利は伊藤先生にとっても大きな自信になったと思います。

しかも伊藤先生の場合、変化球を投げてそれが上手くハマって勝った、というものではありません。持将棋定跡に象徴されるような深い研究で藤井先生を真正面から攻略し、むしろ藤井先生に△3三金型早繰り銀という変化球を投げさせて勝ち取った勝利です。

最近遠山先生とお話しする機会があったのですが、この伊藤先生の姿勢をとても褒めていました。
藤井先生と対峙した時、30代以上の棋士は戦法の幅の広さで勝負します。それは経験を生かした勝負術ですが、伊藤先生はまだ若い。それなら変化球を投げずに真正面から立ち向かったほうがいい。そして圧倒的な研究量と実戦練習を積んだ伊藤先生はついに藤井先生の背中をとらえたのでした。

しかし、本局は藤井先生の先手番です。成長著しい伊藤七段と言えど、さすがに先手番の藤井先生を攻略するのは至難の業とみていましたが・・・。

第1章 角換わり
藤井先生の先手番なら目指すは角換わり腰掛け銀。対して伊藤先生は右の金を5二に上がる、少し古い形で対抗しました。最新形が行き詰ったときに少し古い形が見直されるのは将棋界ではよくあること、藤井先生の仕掛けに対してすぐさま反撃に出るのが伊藤先生の用意した手順でした。

しかし、藤井先生の2筋からの攻めがシンプルにしてディープでした。1筋、2筋を制圧して優勢に。このまま藤井曲線を描いて押し切るかと思われましたが、ここからの伊藤先生の追い込みがすごかった。

第2章 見つけられなかった唯一の受け
受けてもしょうがないと見た伊藤先生が反撃を開始します。数の足りていないところに桂馬を打ち込んだのが迫力満点の一手。飛車は取られましたが、馬と銀で藤井玉にプレッシャーを掛けます。とはいえ、やや無理気味な攻めなので藤井先生もこの変化は勝っているはずと読んでいて、実際その読みは正しかったのですが・・・。

93手目が本局の明暗を分けました。ここでは桂馬を7九の地点に打つのが唯一にして絶対の受け、「対局中には気が付きませんでしたが、▲7九桂で明快だったと思います」と局後に藤井先生も振り返っています。
しかし藤井先生が実戦で打った駒は銀。これでは伊藤先生の攻めが止まりません。馬の横に歩を垂らされて藤井玉に受けがなくなってしまいました。

第3章 魔法のような手順
 しかし、このまま簡単に負ける藤井先生ではありません。桂、桂、銀と3枚連続で捨てて馬を引かせ、王手を掛けながら垂らされた歩を除去することに成功します。受けなしだったはずの先手玉が蘇り、アベマ解説の中村太地八段も「魔法のような手順」と激賞していました。

この辺り、編集部でも盛り上がっていて、デビューから20連勝目となった澤田先生との一局(必至を解除して大逆転した将棋)を思い出していました。

しかし、伊藤先生の指し手は正確でした。小駒を使って藤井玉を追い込み最後は自陣で取られそうだった桂馬が跳ねて、まさに「勝ち将棋鬼のごとし」。自玉の安全をがっちり確保しながらもう一度藤井玉を受けなしに追い込んで、今度こそ藤井先生の投了となりました。

第4章 終盤で競り勝った意味
本局の流れをざっと振り返ると、
藤井先生が仕掛けからリードを奪って終盤に
→伊藤先生が追い込む
→藤井先生が受けの好手を逃して逆転
→窮地に陥った藤井先生が魔法のような手順で肉薄
→しかし伊藤先生の正確な指し手に一歩及ばず投了。
という感じでした。

藤井先生が相手の用意した序盤作戦にハマって負けてしまった、ということではなく、リードして迎えた終盤戦で負けたのは珍しく、逆に言えば伊藤先生がそれだけ強かったともいえます。

本局の結果、伊藤先生の2勝1敗となり、藤井先生は番勝負で初めて先にタイトルに王手を掛けられました。いわゆるカド番です。しかも第2、3局と連勝して流れは完全に伊藤先生にあります。さらに第4局は藤井先生の後手番。・・・ついに八冠が崩れてしまうのでしょうか。

5月頭にして、藤井聡太ファンにとっては月末まで続く暗澹たる日々の始まりとなってしまいました。

井曲線飛行機バージョン

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