【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年4月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2024年4月編

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皆さんこんにちは。「大事なのは強いか弱いかではなくて、自分の力で立ち向かったって事ですよ」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第20弾でございます。20!切りのいい数字です。そして4月ということで新たな年度がスタートしました。
4月と言えばマイナビ女子オープンですね(問答無用)。今期は絶対王者の西山女王に新鋭の大島女流二段が挑戦しています。皆さん、ご注目ください。

さて、4月は前年度の活躍を振り返る月でもあります。将棋大賞では藤井聡太竜王・名人が4年連続4回目の最優秀棋士賞、そして2年連続6回目の勝率1位賞に輝きました。おめでとうございます!
升田幸三賞が伊藤七段の持将棋定跡、升田幸三賞特別賞が村田システム、名局賞が王座戦の挑決、名局賞特別賞が王座戦第4局ということで藤井先生の影響力の大きさがわかります。
将棋大賞の表彰式が行われた日、私は将棋会館にいたのですが、表彰式があることを知らず「なんか今日は凄いメンバーを見かけるなぁ」と思っていました。
1階の売店でグッズを物色している場合ではなかったです(笑)

今年度もどんな素晴らしい将棋が生まれるか楽しみですね。皆さんとともに盛り上がって観戦していけたらと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、それでは今年度一発目の「今月の藤井聡太」いってみましょう!
4月の藤井先生の対局は以下の通りです。

4月の対局まとめ

7日 叡王戦五番勝負第1局 伊藤匠七段戦 勝ち
10、11日 名人戦七番勝負第1局 豊島将之九段戦 勝ち
20日 叡王戦五番勝負第2局 伊藤匠七段戦 負け
23、24日 名人戦七番勝負第2局 豊島将之九段戦 勝ち
4月は叡王戦と名人戦が開幕!完全に並行して行われているので、藤井先生としても移動日含めて忙しい日々が始まりました。結果は3勝1敗、続いていたタイトル戦での連勝記録は途絶えてしまいましたが、藤井先生の言い回しを借りれば「連勝を直接意識していたということはない」でしょうから、気にせずいきましょう。

では、順に振り返っていきます。

ンチ脱出!素早い寄せで先勝

7日 伊藤匠七段戦
第9期叡王戦五番勝負(主催:株式会社不二家)第1局

序章 三度目の同学年対決
今年度のスタートは叡王戦から。相手は伊藤匠七段で、竜王戦、棋王戦に続いて早くも3度目の同学年対決となりました。
藤井先生はここまで伊藤先生一度も負けていませんでしたが、徐々に力をつけているのは確か。本局もギリギリの勝負になりました。
対局場は藤井先生の地元愛知県の名古屋市にある料亭「か茂免(かもめ)」。将棋のタイトル戦でよく使われる歴史ある料亭ですが、・・・すいません、私はずっと「かもめん」と読んでおりました。
名物料理はすっぽんで、さらにすっぽんと愛知県の郷土料理のきしめんを両方味わえる「ぽんきし」なるものがあり、なんと藤井先生が3年連続で頼まれています。
3年連続と言われるとさすがにどれほど美味しいのか気になりますが、残念ながら私が口にする機会はないでしょう(笑)。3パック100円のうどんにかき揚げを乗せて、お茶を濁しときます。

第1章 藤井スペシャル
さて、本局の内容を解説するためにはここまでの流れを振り返っておく必要があります。
藤井先生のドル箱戦法と言えば角換わり腰掛け銀。そして39手目に▲6九玉と指す「藤井スペシャル」という必殺技があることはこの連載を読んでいる方はご存じのはず。というか、ここでしか使われてないんですけど(;^_^A。
そしてその「藤井スペシャル」を「持将棋」という思いもよらない形で攻略したのが棋王戦の第1局でした。
次に藤井先生が先手番になった棋王戦の第3局では藤井先生は「藤井スペシャル」を使わずに速攻を仕掛ける作戦を採りました。これは推測ですが、おそらく持将棋定跡への対策が万全ではなかったためだと思います。

そして本局、先手番となった藤井先生は「藤井スペシャル」を採用します。
つまり「持将棋定跡に対する指し方を用意してきましたよ」ということですね。
前日会見で「練習将棋を指す機会があったので不安のない状態で臨める」ということをおっしゃっていました。AIを使った研究と練習将棋で持将棋定跡対策を練ってきたのだと思います。
すると相手の伊藤七段のほうが変化して右玉の構えをとりました。
持将棋定跡の対策を練られていることが分かっているので方向転換。この辺りは虚々実々の応酬で面白いです。

第2章 2筋VS玉頭
伊藤先生の右玉に対して2筋から攻めていくのが藤井先生が予定していた指し方。2筋に歩を打って、午後のおやつ「ペコちゃんのほっぺ」を口にします。
私が「ぽんきし」を食べることは難しそうですけど、この「ペコちゃんのほっぺ」は不二家さんで売っているので手が届きそうです。

藤井先生が2筋から攻めて桂馬を得しましたが、その間に伊藤七段が玉頭攻めで反撃します。2筋の攻めと玉頭攻め、どちらが速いかの勝負ですが、やはり直接玉を攻めている伊藤先生の玉頭攻めのほうが速かったようです。
局後の検討によると藤井先生が飛車を引いた時に玉頭に歩を成って攻めていけば伊藤先生に分のある展開でした。この攻めを伊藤七段が逃したために藤井先生の飛車が相手の角を取って攻めにも大活躍する展開となり、以下はあっという間の寄せが炸裂して藤井先生の勝利となりました。

・・・と、こう書くと伊藤先生が最善手を逃しただけのように見えてしまうんですが、なぜ伊藤先生が8筋に歩を成る手を指さなかったのかを考えるのが大事ですね。
これはその後の藤井先生の手が見えていなかったからなのです。
藤井先生が自陣の桂馬をピョンピョンと二段跳ねしていったのが伊藤先生にとってまさかの手順でした。というのも1回目に桂馬を跳ねたとき、自分の玉の可動域を狭めることになるのでいかにも危ないのです。伊藤先生も「思いのほか先手玉がしぶといというのが誤算でした」と述べていました。

自玉の危険度をギリギリのところで見切って綱渡りのような手順で勝つのは藤井先生の真骨頂。本譜は最後に藤井先生の良さが出る形になりました。

第3章 勝ったとはいえ
本局を制して防衛に向けて幸先のいいスタートを切った藤井先生ですが、最強の武器「藤井スペシャル」を発動したにもかかわらず、一時はピンチに陥ったので完勝という感じではありませんでした。

藤井先生も「こちらが2筋から攻めていく間に急所の玉頭に手をつけられて、ちょっと苦しい展開にしてしまったと思うので、そのあたりの判断に少し課題が残ったかと思っています」と振り返ってましたね。

まぁ勝った後に「課題が残った」というのは藤井先生の通常運転ではあるんですが(笑)、紙一重の勝利だったと思います。

米が泣いた!早くも名局賞最有力候補



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