シンプルかつ破壊力抜群! へなちょこ急戦で中飛車を倒そう|将棋情報局

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シンプルかつ破壊力抜群! へなちょこ急戦で中飛車を倒そう

後手番へなちょこ急戦の威力を見よ!
先手中飛車対策!

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 皆さんこんにちは。

本記事では、YouTuber発の新戦法、「へなちょこ急戦」の指し方をご紹介します。
詳しくは、2024年4月26日に発売する『一撃!対振り飛車へなちょこ急戦』(著:Sugar)にも載っていますので、チェックしてみてくださいね。

今回は、対先手中飛車を題材にお送りします。
へなちょこ急戦の狙い筋や手順をしっかり覚えましょう!
※本稿は、Sugar著『一撃!対振り飛車へなちょこ急戦』の内容をもとに編集部が再構成したものです。
 

へなちょこ急戦とは?

まず、へなちょこ急戦とは何か?を簡単にご紹介します。
へなちょこ急戦とは、下図のように最小限の駒組みで振り飛車の攻略を目指す、居飛車用の作戦です。

基本図はへなちょこ急戦(以下:へな急)の最もベーシックな陣形と言えます。囲いをコンパクトに収め、スピーディーに仕掛けているのが見て取れると思います。


へな急のアピールポイントは3つあります。
1つ目は「駒組みのシンプルさ/覚えやすさ」です。

下図が、へな急の攻撃陣の基本形です。飛車先を突き、角道を開け、右の銀・桂・歩を少し動かしただけ。実にシンプルです。

この形に組んだ後は、相手がどの筋に飛車を振っても▲4五歩と仕掛けていきます。
角と桂のコンビネーションで4筋を狙い、△3三角をどかせば2筋を突破できます。


下図が、へな急の守備陣の基本形です。

現在、対振り飛車でよく用いられるのは穴熊やミレニアムなどの堅い囲いですが、本戦法では3手で完成する舟囲いを使用します。
展開によっては▲6八金上と指して金無双にすることがありますが、現段階では「余裕のあるときに金を上がる」と頭の片隅に置いておくぐらいで大丈夫です。

2つ目は「無駄のなさ」です。
従来の急戦策と、へな急を比較してみましょう。ノーマル振り飛車に対して、へな急と同じように4筋からの仕掛けを目指す急戦は昔からあります。
例えば参考図1は対四間飛車、参考図2は対三間飛車の有名定跡です。

昔ながらの左銀を繰り出す急戦。中央は手厚いが、玉が薄くなる短所があります。


三間飛車に対する急戦定跡。居飛車は5筋も絡めて攻めています。

へな急は、これらの作戦と比較すると、
①左銀を攻めに繰り出さないので、玉の堅さを維持することができる
②▲5六歩を保留することで、より早い仕掛けを実現している

といったメリットがあります。
このように、へな急は従来の急戦策の無駄な部分を極限まで削ぎ落とした作戦と言えます。 


3つ目は「AI的にも成立している」です。
AIでヘな急を研究すると、中盤の早い段階で「居飛車有利」の数値を示します。評価値という客観的な数字を見ていただくことで、へな急の優秀性を実感できると思います。
「AIがずっとプラスの数字を示す」というのは、「きちんと研究すれば、相手がどう対応しても勝ちになる可能性が高い」ということでもあるので、研究のモチベーションにもなります。

以上がへな急の基本です。
次は具体的な変化についてご紹介します。

 

後手番でもへな急は使える


下図は先手中飛車VS後手へな急の序盤戦。


先手は△6五桂を防ぐために▲6六歩と突き、△6四歩に▲6七銀と上がって6筋を手厚くしてきます。
▲6七銀に対して△6五歩と仕掛けるのはさすがに無理筋で、▲同歩△同桂▲5九角(失敗図1)で次の▲6六歩が受かりません。


ゴリ押しは利かないので、△5二金右で中央を手厚くして戦機を待ちます。これが対先手中飛車の基本図です。


中飛車側の対応は色々ありますが、今回は▲5六銀の変化をご紹介します。
へな急の流れるような手順を体感してください!

 

勢いよく仕掛けよう


▲5六銀(第2図)は中飛車にとって理想とも言える銀の配置。


後手としては、囲い合うとどんどん▲5六銀型が生きる展開になってしまうので、先手陣が不安定なこのタイミングで仕掛けていきたいです。
というわけで、△6五歩から開戦します。▲同歩△8六歩▲同歩と歩を突き捨ててから、△5四歩(第3図)が有効な手段となります。


第3図で▲5四同歩は最も自然な応手ですが、△7七角成▲同桂に△6六角(変化図1)が王手桂取りとなって後手優勢です。


後手の△4二玉型は戦場に近く危険な形ですが、それは先手の▲4八玉型についても同じことが言えます。
玉形のコンディションがほとんど同じなので、先に技を掛けた方が形勢が良くなるという仕組みです。
 

先手は△5四歩を取ることができないので、▲7八金(第4図)と上がり、攻めに備えます。



後手は素直に△5五歩(第5図)と取り込みます。


△5四歩~△5五歩と居飛車の歩がズンズン進んできました。先手はせっかく取った位が消し飛んでいくのを黙って見ているわけにはいきません。
しかし悲しいことに、第5図で歩を取り返す
①▲5五同銀
②▲5五同角

はいずれも疑問手となってしまいます。順に見ていきます。
 

~①▲5五同銀の変化~


①▲5五同銀には△6五桂が気持ちの良い跳躍。もはやこの手を指すためにへな急をやっていると言っても過言ではありません。
▲8八角△8六飛(結果図1)と進んだ局面は後手の攻めが止まらなくなっています。 


▲8七歩には△7六飛、▲3八玉には△8八飛成▲同金△6七角でいずれも優勢です。

 

~②▲5五同角の変化~


②▲5五同角には、角交換後に△3二玉(第6図)と寄るのが何とも落ち着いた一手。


△8六飛と走ったときに▲6四角が王手飛車になるのを防ぐ意味です。


先手も歩調を合わせて▲3八玉と寄りましたが、△6九角(結果図2)が厳しい打ち込み。


▲6八飛には△7八角成▲同飛△8六飛(参考図3)で突破が実現して後手優勢です。


だからと言って△6九角に▲6七角と打つようではいかにもつらいです。

 

先手の鬼辛抱と後手の過激な攻め


第5図で歩を取り返す手はいずれも失敗に終わりました。そこで先手は▲6七銀(第7図)と引いてチャンスを待ちます。


とはいえ、中飛車のシンボルとも言える▲5五歩が無条件で消え去り、理想的なポジションである▲5六銀型も解消されてしまうので鬼の辛抱です。
対する後手は拠点を奪ったことに満足して△3二玉と囲っても良いのですが、▲3八玉から落ち着いた流れになるので少し不満です。
ここはへな急らしく過激に決めにいきましょう。△6五桂(第8図)と跳ねて攻めかかります。



第8図で先手は角を逃げるよりありませんが、▲5五角は△5七歩、▲6八角も△5六歩でいずれも簡単に後手優勢となります。
よって、角の逃げ場所は
①▲6六角
②▲8八角

の2択に絞られます。順にみていきます。

 

~①▲6六角の変化~


①▲6六角には△8六飛▲8七歩としてから、△8三飛と引くのが良いでしょう。
▲3八玉に△5三飛!(結果図3)と転回するのが狙いの構想です。


飛車を一段目まで引いて転回する地下鉄飛車ならぬモノレール飛車です。
結果図3は1歩得の上、5筋を逆襲できているので後手有利。
この後はいったん△3二玉と囲ってから、△6三銀~△5四銀と自然に右銀を活用していけば良いです。

 

~②▲8八角の変化~


今度は②▲8八角(第9図)と、こちらに引いてみます。

 
後手は△8六飛と飛車先を換えますが、対する▲8七歩に△8三飛と引くと▲6六歩(失敗図2)と一方的に桂を取られてしまいます。


今回はモノレールが通じないようですね。
居飛車が困っているようですが、飛車取りを無視して△5六歩!(第10図)と突き出すのが全ての駒に活を入れる起死回生の一手です。


△5六歩に対して、
A.▲同飛
B.▲同銀

という対応が考えられますが、いずれもへな急の技が決まります。

A.▲同飛は△8八角成▲同金に△6六歩(変化図2)がぴったり。


変化図2以下、▲8六歩は△6七歩成、▲同飛は△5七角、▲同銀には△7六飛でいずれも後手が勝勢となります。


B.▲同銀は△5七歩▲6八飛△8八角成▲同金△7六飛(変化図3)でやはり技が掛かります。


少し変化が多いのでついてくるのが大変かもしれませんが、細かい手順を覚えるというよりは、「後手が飛車取りを逃げずに手を作っている」という流れに注目してください。
本譜のような乱打戦では、いかに相手玉に早く迫るかが重要になります。
局面は既に終盤なので、駒の損得よりも速度の方に意識を向けたいですね。

少し脇道にそれましたが、このように、第10図で△5六歩を取る手はいずれも後手の切り返しが決まりました。
変化手順を振り返ると、後手から角交換をされて▲8八同金とした形が良くなく、それゆえ技を掛けられてしまったことがわかると思います。

そのため先手は、
C.▲2二角成

という修正案を繰り出します。

 

局面が落ち着く


第10図以下▲2二角成とした局面が第11図。


先手から角を換えれば▲6七銀・▲7八金の連結形を維持できます。
対してうっかり△同銀とすると今度こそ▲5六飛(変化図4)と歩を取られてしまいます。


よって後手は△5七歩成から全てを清算します。
△5七歩成▲同飛△同桂成▲同玉△2二銀▲8六歩と進み、お互いに大駒を手にしたのが第12図。


先手は桂得、後手は手番が主張。
しかし、後手は▲5四桂の王手銀取りを防ぐ必要があります。

そこでまずは、△6六歩(第13図)と一発叩きます。

▲6七銀・▲7八金の連結のおかげで先手陣は強度を保っているので、それを崩しにかかります。
逆にこのタイミングで叩かないと、▲7七角と攻防に味良く打たれてしまいます。

▲5八銀と引かせてから△3二玉と寄って、懸案の▲5四桂を受けた結果図4は後手有利。

駒の損得以上に玉形の差が大きいです。△8八歩や△5六歩、△6五角など、攻めの手に困らないのもプラス材料ですね。


結論として、基本図2から▲5六銀には△6五歩から仕掛けて居飛車ペースになります。
どの変化でも、先手は▲4八玉型が不安定なのをうまく咎められてしまいました。

ここまでお読みいただきありがとうございました!
以上が対先手中飛車へなちょこ急戦の指し方です。

詳しくは、2024年4月26日発売の『一撃!対振り飛車へなちょこ急戦』(著:Sugar)に載っています。
本書ではほかにも、「対四間飛車」や「対向かい飛車」などに対するへなちょこ急戦の指し方も解説しています。
ぜひ本書を読んで、へな急をマスターしてください!
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