第17期マイナビ女子オープン開幕直前! 挑戦者・大島綾華女流二段インタビュー|将棋情報局

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第17期マイナビ女子オープン開幕直前! 挑戦者・大島綾華女流二段インタビュー

第17期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦が3月4日に行われ、大島綾華女流初段(現二段)が北村桂香女流二段を下し、自身初となるタイトル挑戦を決めました。 
本記事では、2024年4月3日に発売された『将棋世界2024年5月号』に掲載された大島女流二段の単独インタビューに加え、本誌に掲載しきれなかった内容を公開しています。

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 終局直後の囲み取材での一幕。
「森(信雄七段)一門の絆が支えになったことはありますか」と聞かれた大島は「私が道に迷ったときに、優しくしてくれました」と答えた。
「それは、どのようなことがあったのでしょうか」
「東京の将棋会館の場所がわからなかったときに、案内してくれました」
「あ、道というのはそういう……」
 笑いに包まれる報道陣。しかも、森門下の誰が案内してくれたのかまでは覚えていないのだという。大物の気配が漂う大島綾華女流二段に、本誌単独でミニインタビューをさせていただいた。



――マイナビ女子オープンへの挑戦決定おめでとうございます。マイナビにはどういうイメージがありますか。
「マイナビ出版の将棋の本を小さいときからよく買っていて、たぶん何百冊というくらいの量を持っています。本当に勉強になっていて、ありがたいです」
―今日の結果を親御さんにはご連絡されましたか?
「まだです」
―いま連絡していただいても大丈夫ですよ。
「取材が終わってからにします。『絶対中継を見るよ』と言ってくれていたので、結果は知っていると思います。師匠には先に結果を報告して、『おめでとう!』と返信がありました。師匠からのメッセージに!マークが使われていたのは初めてかもしれません」
―広島在住のまま活躍されています。地元の反応はいかがですか。
「広島でお世話になっている『広島将棋ひろば』の方たちや、アマ強豪の方々からも応援のメッセージをいただいたりしています」
――今年度は各棋戦で好調です。勝率第1位の座をキープしています。
「最高勝率が取れたらうれしいですけど、意識すると緊張してしまうので、あまり自分の成績は見ないようにしています」
――最近勝っている相手も、福間、加藤桃、伊藤沙と強敵ぞろいです。
「いい将棋を指したい、ということだけを強く思っていました。そのために目の前の対局に向けた準備をする、ということの繰り返しでした。どうして勝てるようになったのかは本当にわかりません。対局が増えていったことで、ひとりの勉強でも将棋に対するモチベーションが持続しやすくなったかもしれないです」
――対局と対局の間はどのように過ごされていますか。
「対局が終わったらその日のうちに振り返りをします。次の日の午前中は休みに充てて、午後からはゆったりと将棋を始める、という習慣にしています。さらにその次の日からは、ギアを上げてしっかりと勉強を再開する感じです。最近は丸1日休みという日はないですね」
――きつくはありませんか?
「負けるよりかは何倍もいいので(笑)」
――しっかりやる日は、何時間くらい勉強をしていますか。
「朝起きてから夜寝るまでです」
――自分の将棋の特徴をどのようにとらえていますか。
「悪い局面から、終盤戦で粘って勝つタイプだと思います。逆転勝ちが多いんですけど、逆にすごくいい局面からも落としたりします。優勢な局面の指し回しはまだまだです」
――将棋との向き合い方は、理論派ですか、情熱派ですか?
「理論ではないです。気合で戦う勝負師タイプだと思います。今日の将棋でいうと、横歩取りを指そうと決めたのも気合のいる決断でしたし、終盤の入り口で▲5六飛に△4二玉と引いた手は、かなり怖い局面だったこともあって、思いきって勝負しようと指した手でした」
――理論派ではない、ということでいうと、準決勝の加藤桃子女流四段戦では、先手番から▲2二角成と手損して角換わりに進めたのが印象的でした。実質的に後手番だったことになってしまうので、棋理だけでいえば損だと思うのですが。
「加藤さんに準備がありそうに見えたので。そういう駆け引きは好きなほうだと思います」
――理想とする将棋はありますか?
「いままで話してきた自分の将棋とは違うタイプですが、豊島先生の将棋が好きなんです。将棋がきれいというか」
――番勝負で戦うことになる西山朋佳女王のイメージはどうですか。
「終盤が特に鋭い印象です」
――2月の女流王位リーグで、西山女王と初手合いとなりました。盤を挟んで向かい合ってみて、どう思いましたか。
「あ、西山さんだ、と思いました」
――(笑)
「どんと構えてらっしゃって、貫禄がありました」
――結果は、勝勢を築きながら、詰みを逃して逆転負けとなりました。
「いい勝負ができたことはうれしかったですが、詰みを逃してしまったことは悔しかったです」
―将棋から離れたところも少し伺います。自分ではどのような性格だと思いますか。
「人見知りするのですが、友達になるとすごくしゃべるほうです。うるさいほう、といったほうがいいかもしれません。特に同門の佐々木海法さんと仲がいいです。私もがんがんしゃべりますし、逆に遠慮ないことを言われたりもしますけど……。この間、『最初はすごく真面目そうに見えたのに』って言われたんですよ。いまは真面目じゃないの?って(笑)。一見頭がよさそうに見えるのに、しゃべり出したらちょっと違うらしいんですよ。だから最近はボロが出ないように、無言を心がけています」
―対局中の食事はやまがそばのわかめうどんかほそ島やのかけうどんをいつも注文されていますね。
「そうですね。対局のときは食が細くなってしまいます」
―以前の将棋世界インタビューでは、お好み焼きの話をされていました。
「お好み焼きは好きです。対局終わりにいつも食べてます」
―対局後となると、会館近くの大阪のお好み焼きですか?
「いえ、広島まで帰ってから食べてます。大阪のお好み焼きって食べたことないかも。たしか、麺が入ってないんでしたっけ?」
―やっぱりお好み焼きといえば広島ということなんですね。
「郷土の特別なものという意識もなくて、当たり前にあるものなので食べているという感じですね」
―将棋に話を戻します。初めてのタイトル戦を控えてどのような心境ですか。
「期待も不安もあります。和服を着て対局するというのも、楽しみな部分はあるんですが、イベント以外では初めてなので、どうなるのかわからないところもあります。あとは、タイトル戦の空気のようなものもわからないですし」
――五番勝負では、どういうところをみてもらいたいですか。
「序盤の工夫と、中終盤の戦いを見てほしいです」

 大島の新幹線の時間が近づき、インタビューを切り上げると、囲み取材のエピソードがX(旧twitter)で大きな反響を呼んでいた(ユーザー間での表示回数は150万にも達した)。
https://twitter.com/shogi_sekai/status/1764563253496262762

 好反応を伝えると「天然だねってよく言われるんですけど、自分では認めたくないです(笑)。真面目キャラでいきたいんですよ」。
 何百冊と将棋の本を読み、朝から晩までひとり将棋に打ち込む大島の真面目さは疑いようもない。まっすぐに、ひたむきに、ひとつひとつの対局を大切にしながら力を伸ばしてきた。そんな風に真面目だからこそ、巧まざるユーモアがとても魅力的に映るのだけれど。
 最後に、将棋は好きですか、と尋ねると、笑って「好きです。大変だなと思うこともあるけど、好きです」と答えた。将棋界で何番目に好きだと思いますか、と意地悪な質問を重ねると、今度は少しだけ迷って、言った。
「いちばん、ですかね?」

 西山朋佳女王は、公式戦で年下の女流棋士に対してこの9年半負けがない。21歳の新星は、女流棋界の序列を揺るがす存在になれるか。
 第17期マイナビ女子オープン五番勝負は、4月9日、神奈川県秦野市「元湯 陣屋」で開幕する。
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