2024.03.01
「久々の藤井―豊島戦!」「楽しみな春がまた」 「一番長い日」は豊島九段挑戦で決着 第82期A級順位戦
藤井聡太名人への挑戦権を争う第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、最終9回戦計5局の一斉対局が2月29日(木)に静岡県静岡市の「浮月楼」で行われました(「将棋界の一番長い日」)。このうち6勝で首位につける豊島将之九段は5勝の菅井八段との上位対決に96手で勝利。対中飛車の乱戦を制して挑戦権を獲得しました。
■中飛車対超速の力戦
単独首位の豊島九段は本局に勝てば無条件で挑戦決定。敗れた場合は2~3名のプレーオフにもつれます。菅井八段の先手中飛車で始まった本局は、菅井八段が穴熊への移行を見せたところで後手の豊島九段が早繰り銀の要領で左辺から急戦を仕掛けて動き出しました。
大駒の押さえ込みを見せられた菅井八段は大胆な仕掛けで主導権を握ります。攻めの要の飛車を銀と刺し違えたのは直後の両取りの角打ちに期待したさばきの一手。手順に後手の攻め駒を遊び駒にして先手好調に思われましたが、ここから豊島九段の対応が光りました。
■豊島九段が挑戦決める
3筋からの桂頭攻めを見せられた豊島九段は飛車を引き成り竜の力で受けにシフト。こうなると先手からの早い攻めはなく競り合いは一段落です。戦いが夜に入ったころ、手番を得た豊島九段は満を持して二枚竜を先手陣に侵入、不安定な菅井玉への反撃を開始しました。
終局時刻は23時13分、最後は自玉の寄りを認めた菅井八段が投了。7勝2敗の好成績で2020年以来4年ぶりとなる名人戦登場を決めた豊島九段は局後「名人失冠後はなかなか挑戦争いに加われなかった。また出られることをうれしく思う」と喜びを語りました。
なお他の対局の結果を受けて広瀬章人九段と斎藤慎太郎八段の降級が決まっています。
豊島九段のタイトル戦登場はこれで19回目、対藤井戦に限れば5回目となる(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)
水留啓(将棋情報局)