参加費と賞品、賞状【将棋大会の基礎知識#9】|将棋情報局

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参加費と賞品、賞状【将棋大会の基礎知識#9】

6月から続けた「将棋大会の基礎知識」の連載は今回で最終回です。大会の参加費と賞品や賞状について、そして大会に出なくても楽しめる過去の大会結果の見方について説明します。

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現金当日払いが大半

将棋大会の参加費は無料から4000円程度まで幅があります。無料は子ども大会に多く、小学生以下を対象にしたテーブルマークこども将棋大会(全国11か所で行われる将棋日本シリーズJTプロ公式戦と同日に行われます)のようにスポンサーがついていることがほとんどです。

有料の大会では中学生以下、女性、支部会員などの割引料金が設定されていることもよくあります。将棋界には女性が少ないので、割引は普及策の一環。支部というのは全国各地にある将棋愛好家の集まりで作る日本将棋連盟の支部のことで、会費を払って支部会員になると、あちこちの大会の参加費が割引になります。割引には支部会員証が必要な場合もあります。

参加費は当日現金支払いが大半ですが、最近はPassMarketなどのシステムを利用した前払い制も増えてきました。

参加費の使い道は会場を借りる代金、賞品やトロフィーの用意、盤駒時計などの購入費、それを運搬するためのガソリン代、スタッフの謝礼やお弁当代などに使われます。仮に日本中の将棋大会のスタッフの謝礼が時給1000円になったら、もっと大会の参加費を上げざるを得なくなるでしょう。大会運営のスタッフは無償というのもよくありますし、謝礼があっても準備、片付け含めて2000~3000円というのが平均的ではないでしょうか。

会場を借りる費用は地域によって大きく異なり、東京近辺はやはり高くなります。よく「公民館みたいな施設だとタダで借りられるでしょう? そういうところで大会を開けばいいじゃない」と簡単に言われますが、公営の施設であっても広くて交通の便のいいところはそれなりの値段ですし、参加者全員が〇〇市民である条件付きだったりして、広く参加者を募る大会では借りられないこともよくあります。土日に借りるには抽選になることも多く大都市圏の大会運営者は会場の確保に苦労しているはず。比較的安い価格で会場を借りやすい地方のほうが大会参加費も安めの傾向があるようです。

将棋用品の次に多い大会賞品は食べ物?

参加費の使い道の一つでもある賞品の話をしましょう。大会に出て賞品がいただけると嬉しいですよね。何位まで賞品があるかは主催者の考えやそのクラスの参加人数によって変動し、3位まで10位までなどいろいろです。参加者全員に賞品があり、上位から選べるという大会もあります。

賞品は大会の主催者が用意します。参加費の一部で購入することが多いものの、スポンサーから提供してもらうケースもあります。日本将棋連盟や日本女子プロ将棋協会(LPSA)のようなところはもちろん、小さな大会主催者であっても、主催者のツテを生かして地元企業から特産品を提供してもらったりすることも。地元企業回りの経験がなく、賞品は参加費から購入している筆者は、そんな営業力のある大会主催者は凄いなといつも感心しています。

どんな賞品があるのか紹介すると。

食品

コロナ禍、そして会場の老朽化で休止となっていますが、神奈川県三浦市で行われていた賞品は冷凍マグロのブロック(一番上のクラス優勝は1匹分)という通称「マグロ大会」は、かなり有名な大会で遠方含めて有名強豪から級位者まで広く参加者が集まっていました。スーパーのお刺身みたいに切れていませんから、自分で解凍してから切る手間がかかるにも関わらず、大会直後のネットにはたくさんの調理済みのマグロの写真がアップされたものです。
今もカニや高級果物など豪華食品がもらえることを売りにしている大会は各地にあります。米10キロとか、缶ビール24本セットとか、車で参加していない限り持って帰るのが大変というものも。

金券類

これもよくあります。図書カード、クオカード、JCBなどのギフト券の他、アマゾンギフト券も。大会案内に「優勝 ギフト券1万円分」と明記されていることもあれば、もらってからのお楽しみのこともあります。

現金

上位入賞すれば現金がもらえる大会は賞金大会と言われ、優勝賞金が10万円を超えるものもあります。有名なのは日本アマチュア将棋連盟主催のアマ最強戦、東京アマチュア将棋連盟の都名人戦(都内都外に関わらず参加可)でしょうか。

棋書

著者や出版社による提供で新品の本が賞品になることもありますが、主催関係者による読み終わった本(積読だったのか新品同様の場合も)が提供されることもよくあります。将棋世界のバックナンバーの付録がもらえることも。

扇子や色紙

棋士、女流棋士の直筆の扇子や色紙も賞品の定番です。中にはゲスト棋士がその場で書いてくれた生乾き品がいただけることも。

盤駒時計

優勝賞品が脚付きの盤であったり、美しい木目のツゲの駒、チェスクロックなど将棋に役立つ品もよく賞品として選ばれます。

トロフィーや楯、カップ、メダル

上記の賞品に加えてトロフィー類がもらえる大会もあれば、賞品だけでトロフィーは無し、トロフィーはあるけど賞品は無しなど、いろいろなケースがあります。重さでいくとトロフィーやカップ>楯>メダルでしょうか。将棋の駒がデザインされたトロフィーや楯を扱っているお店もあります。

大きめのトロフィーが各クラス×4(3位2名にする場合)、かさばる賞品がずらりと並んだ大会を見ると、筆者は「これ、輸送の車何台で運んだのだろう」と気になってしまいます。将棋大会には盤駒時計の輸送も必要なので、加えてトロフィーに賞品が大きいと、車数台で分担して運んだであろうことが推察され、大変だったろうなと思います。

逆に輸送力に難はあるけれど、記念になるものを渡したいという大会運営の方には、軽くてコンパクトなメダルがお薦めですよ。

他にも様々な賞品がありますが、豪華な品物なのに入れる袋がもらえないということもよくあります。強いのにボディバッグ1つで大会に参加して上位に入り、賞品の包装されていない厚さ一寸の将棋盤を抱えて持って帰った人を目撃したことも。畳めばコンパクト、広げれば大きいエコバッグがあると便利ですよ。付け加えておくと、筆者が運営に関わる大会では持ち帰り用の袋は用意しています。

羽生善治会長名入り賞状

賞状は主催者代表の名前が最後に入るものが一般的ですが、日本将棋連盟の支部や都道府県の支部連合会(〇〇県連)の大会では、日本将棋連盟会長の名前が入ったA3サイズの賞状が使われることが多いです。今は羽生善治会長の名前ですね。羽生会長の特徴ある毛筆の字を印刷したもので、もらった人に喜ばれています。

入賞者のお名前、大会名や日付は大会運営者が書きます。書道の得意な人がいればいいのですが、いない場合はスタッフの中で比較的字がうまい人が書くことになります。世の中には賞状に美しい文字で名前などを書く専門の方もいらっしゃいますが、なかなかそこまで頼めないのが多くの大会主催者の実情です。

プリンターでお名前を毛筆書体で印刷するという方法もあるのですが、B4、A3に対応したプリンターは高価(家庭用はA4までが主流)で大きく持ち運びが大変な上、ずれないように印刷するのが難しく、あまり普及しているとは言えません。

賞状を入れる筒はもらえることは少なく、輪ゴムを渡されて丸めて持って帰って下さいということのほうが多く、輪ゴムももらえないこともあります。賞品にしろ、賞状にしろ、持ち帰り方法も考えておいた方が良いです。そんな準備をしていたときに限って、何ももらえなかったりするのですが。

大会結果を見るだけもお勧め

さて、これまで大会に出たい人向けの文章を書いてきました。出ない人にも関心を持っていただけると嬉しいなと思います。大会の結果を見るのもなかなか楽しいです。

日本将棋連盟のサイトの将棋大会のページには過去の大会の都道府県代表者一覧や予選通過者の決勝トーナメントの対戦表などが掲載されています。10年前、20年前の小学生名人戦の結果表を見ると、今棋士として活躍している名前がたくさん見つかりますし、今はA級棋士となった佐々木勇気八段(新小4)と菅井竜也八段(新小6)の決勝で佐々木八段が勝って優勝したといった好カードも残っています。

ただ、藤井聡太竜王・名人や伊藤匠七段は小学生名人戦では都道府県大会で負けてしまい代表になったことがなく、必ずしも棋士になってからの活躍と比例するものではありません。

女流棋士の場合はプロになる直前まで大会に出られるので、中学選抜や高校選手権、女流アマ名人戦のトーナメント表には、ここ数年で女流棋士になった人のお名前もたくさんあり、磯谷祐維女流2級は昨年まで女流アマ名人戦を2連覇しています。

連載の1回目で紹介したアマ名人戦など6大アマ大会には元奨励会員も多数参加しているので、応援していたけれど奨励会を退会した人の名前をアマ大会の入賞という形で発見することもあるかもしれません。

藤井ブームに沸く将棋界。藤井竜王・名人もたくさんの将棋大会に参加して強くなってきましたし、将棋界の盛り上がりはプロだけではなく、たくさんのアマチュアがいて成り立つものです。将棋大会に出る人が増えアマ棋界も盛り上がっていくことを願いながら、大会運営を続けたいと思います。


宮田聖子(将棋情報局)
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著者

宮田聖子(著者)
県代表決定大会を中心に将棋大会の運営を15年。手合いをつけるスピードには自信あり。複数代表を選ぶ大会の競技方法を工夫するのが好き。公平で開かれた大会を心掛けています。女性大会を中心に大会出場50回以上。ペンネーム宮田聖子で将棋の記事を書いていますが、将棋は弱いです。