アマの文化・団体戦【将棋大会の基礎知識#8】|将棋情報局

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アマの文化・団体戦【将棋大会の基礎知識#8】

団体戦はアマ大会では盛んに行われ、アマの文化として長く続いています。小学校、中学校、高校、大学の学校対抗の団体戦、同じ職場でチームを作って出場する職域団体戦(職団戦)、LPSAが主催する女子アマ団体戦など、様々なカテゴリーの団体戦の紹介と団体戦の注意点を説明します。

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チーム7人が横並びで一斉対局

大人気のABEMAトーナメント。トップ棋士14名がメンバーをドラフト会議で選び、チーム3人で戦う団体戦です。ABEMAの演出のうまさもあって大変面白いのですが、アマ大会を運営する筆者としては1つ心配なことがあります。

「将棋の団体戦とはこういうものだと思われたらどうしよう」

アマ大会は基本的には1日で1回戦から決勝戦まで終わらせなくてはいけませんので、ABEMAトーナメントのように1局ずつやっていては終わりません。7人制の団体戦ならば7人が横並びになって、相手チームの7人と一斉に対局します。ほとんどの団体戦は3人制、5人制、7人制のどれかです。勝った人数が多いチームが勝ちとなります。

チームメイトの将棋を観るのはOKですが、助言と見なされるので決して口を出してはいけません。
よく言われるのは、団体戦は負けるにしても粘ってなるべく長引かせるのが大事だということ。「口を出してはいけない」ので「勝った」も「負けた」もチームメイトに伝えることはできません。ただ、隣の対局の勝敗はだいたい分かります。

チームメイトが早々に負けてしまっては、自分も負けたらチームの負けだとプレッシャーがかかってしまいます。仲間の負担を少しでも軽くするために長引かせ、最後まで粘ることが必要になるわけです。
 

強い順に並べなくても構わない

並び順はオーダーと言われ、団体戦における重要なポイントです。順番に大将、副将、三将(5人制の場合は、四将、五将、7人制の場合は六将、七将)というのが標準的な呼び方です。しかし、三将を先鋒と呼んだり、大将を主将と呼んだりする大会もあります。剣道や柔道の団体戦では、先鋒から出て行き、大将が最後なので先鋒が1ですが、将棋の団体戦は大将から1、2、3です。

小学生、特に低学年には「副将」などの漢字は難しいので、大将や三将と呼ばず「1番、2番、3番」としている大会もあります。大将(や主将など1番の位置で対局する人)はチームのリーダーというわけではなく、誰が大将でも構いません。ややこしいのですが、対局する位置とは関係なくチームのまとめ役やオーダーを決める責任者としての「主将」が別にいることもあります。

以前の団体戦は「大将から強い順に並べるべき」という考え方が強くあり、大将に一番弱いメンバーを置くことは「当て馬大将」と言われ、卑怯な作戦と非難されることもありました。今でもそのような考え方は残っていて「強い順に並べて下さい」としている大会もあるようです。多くの大会ではそのような縛りはなく、オーダーを工夫し戦力の不足を補うことも作戦のうちと考えられるようになりました。

ただし、当て馬大将にして、相手が大将にエースを配置すれば、他の強いメンバーが相手のエース以外に勝ってチームが勝てる可能性が上がりますが、相手だって単純に強い順に並べてきたりしません。オーダーの読み合いが発生しますが、運の部分も大きいです。

全国大会などでは、大将同士の対局のみ記録係がついて、その棋譜が公開されることもあるのですが、それはエースの対局ではなく、エース同士の対局は四将同士ということもよくあります。

振り駒は大将だけが行い、大将が先手なら副将は後手、三将は先手、と隣とは先後逆になります。先手後手が決まったら「●●大学、奇数先(きすうせん=1、3、5、7が先手)」などと声に出して仲間に知らせます。うっかり、後手なのに先に指して反則負けにならないように注意しましょう。間違えないように?「僕先手」「僕後手」と順番に手を挙げて確認している大学将棋の強豪チームもあります。
 

座る順番に注意

オーダーはその大会で5戦を戦うとしたら1戦ごとにオーダーを入れ替えて良い場合と、5戦とも同じオーダーで対局するオーダー固定制があります。中には大会前に決めてから申し込み、その通りのオーダーで全対局を戦わないといけない大会もあります。大会ごとに違うので、とにかく大会の案内をよく読みましょう。

また、大将、副将、三将の順番を間違えて逆から座ってしまって対局した場合、失格になってしまいます。大将の席にはチーム名の札が置いてあるとか、窓側から大将から並ぶとか説明があるはずなので、間違えないようにしましょう。机のどちら側に座るかによって、さっきは大将の右が副将だったのに、次は大将の左が副将となったり左右が変わるので注意が必要です。

そして、鉄則はオーダーは同時に開示するということです。相手のオーダーを見てから自分のオーダーを決めることができると「2級の大将にはこちらの二段を当てて、五段の副将に勝つのは無理だからこちらの3級を当てて、二段の三将にはこちらのエースの四段を当てれば勝てる」という作戦が可能になってしまいます。それは不公平なので、相手のオーダーは知らない状態でオーダーを開示するわけです。

オーダーで勝ったとか負けたとか、団体戦ではよく言われます。単純に棋力の合計で勝敗が決まらないところが団体戦の面白さです。
 

小中高大、学校対抗の団体戦

団体戦には同じ学校の生徒だけでチームを組む学校対抗の大会が小中高大すべてにあります。小学生、中学生を対象にしているのが文部科学大臣杯小中学校将棋団体戦。3人制で小学校の部と中学校の部があります。各都道府県大会で代表となった学校のチームが東日本大会、西日本大会に出場します。同じ学校で3人揃えるのは大変だというご意見もよく聞きます。

実際に小学校の部で県大会に40チーム参加していたら全国最多に近い数で、出場2~3チームという都道府県もよくあります。まだまだ将棋を指す子どもは「どこの学校にも3人以上いる」という状況からほど遠いのです。逆に言えば、子どもに将棋を普及する余地はたくさんあるということ。同じ学校で将棋を指せる子が2人いたら、ぜひ、あと1人に将棋を教えたり、将棋教室に誘ったりして仲間を増やすことを考えてみてください。

山根ことみ女流二段は小学4年生の時、あと1人を探していた幼馴染の同級生にこの大会に誘われて将棋を始めました。
高校生はこの連載の#7で紹介した高校選手権(総合文化祭将棋部門)で男女別の3人制の団体戦があります。

大学将棋では団体戦が華と言われます。最も有名なのが年末に三重県四日市市で行われる王座戦(全日本学生将棋団体対抗戦)でしょう。北海道、東北、北信越、中部、中四国、九州地区から各1、関東と関西から各2の10大学が各地区代表として集まる全国大会です。

大学将棋のオーダーのルールは独特で、7人制の王座戦の場合、オーダー表に14人を1~14の順番に書き入れます。順番を入れ替えずに、2が大将、3が副将、6が三将、8が四将、9が五将、11が六将、14が七将というように1戦ごとに出るメンバーを決めていきます。3日かけて10チーム総当たり戦で、9戦すべてに出る学生もいれば、1~2戦だけという学生もいます。出場しない学生も多数集まり、各大学がX(Twitter)に戦況を次々に書き込んで盛り上げるのを見たことがある人も多いでしょう。
これからあたる大学の各選手の戦型をメモして作戦を練ったり、対局する学生以外にも役割があります。



文部科学大臣杯小中学校将棋団体戦の東日本大会。小学校の部、中学校の部に東日本の都道県から代表32チームずつが参加し、上位2チームずつが西日本代表との全国決勝大会に進出する。
 

職団戦や女性の団体戦も

他にも日本将棋連盟の同じ支部の3人チーム(四段以上の免状を持っている人は出られません)の団体戦「支部対抗戦」、同じ職場の5人チームの団体戦「職団戦」、社会人団体リーグ戦という名称ながら子ども達も多数参加し、所属に関係なくチームを組める7人チームの団体戦・通称「社団戦」、女性だけの「アパガード杯・女子アマ団体戦」など様々な団体戦があります。

クラス分けされている大会もあり、社団戦や職団戦のように下のクラスから参加して上位に入れば半年後や翌年の大会で1つ上のクラスに参加できる(逆に下のクラスに落ちることもある)ものもあれば、女子アマ団体戦のようにメンバーの棋力によって、参加するクラスを選ぶものもあります。

どの団体戦もメンバーが足りないのはよくある悩み。チームを作るのは簡単ではありませんが、女子アマ団体戦では「1人で大会に出る勇気がなかったけれど、誘われて出ることができた」という話も聞きますし、職団戦に誘われて「しばらく遠ざかっていた将棋を再開した」という例もあります。団体戦に誘うことは立派な将棋の普及活動。将棋の輪を広げるのにもってこいです。

宮田聖子(将棋情報局)
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著者

宮田聖子(著者)
県代表決定大会を中心に将棋大会の運営を15年。手合いをつけるスピードには自信あり。複数代表を選ぶ大会の競技方法を工夫するのが好き。公平で開かれた大会を心掛けています。女性大会を中心に大会出場50回以上。ペンネーム宮田聖子で将棋の記事を書いていますが、将棋は弱いです。