子どもの将棋大会その2(中高生編)【将棋大会の基礎知識#7】|将棋情報局

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子どもの将棋大会その2(中高生編)【将棋大会の基礎知識#7】

小学生に比べ中学生で将棋大会に出る子は減ってしまいます。小学生の大会より中学生高校生の大会が少ないこともありますが、大会情報を得るのが難しくなる、部活との兼ね合いの問題もあります。一方で小学生では全国切符がつかめなかった子が中学高校で活躍することも。中高生の大会に出るための方法、要所で必要になる親御さんのサポートについて説明します。大会実績と奨励会試験についても解説。

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「在校地優先」男女別の中学選抜

全国中学生選抜将棋大会(中学選抜)は毎年8月初めに山形県天童市の「ほほえみの宿 滝の湯」で行われる格式高い大会です。中学生個人戦大会では唯一、各都道府県で予選を開催し男子代表と女子代表を選出します。

注意したいのは「在住地優先」の小学生名人戦や倉敷王将戦と違い、通っている中学校のある都道府県の大会に出ることです。「在校(学)地優先」と言います。中学受験をして県外の中学に通う例は少なくないので、県外から進学してきた強敵が中学選抜の県予選にいて驚くことも。

毎年、4月くらいに日本将棋連盟のサイトに各都道府県予選一覧が掲載されますが、3~4月に終わっているケースもあるうえ、稀に学校の許可が必要になるなど小学生大会よりも参加方法が複雑なこともあるので、早めの情報収集を。まずは前年度の情報を探してどこが運営しているのか把握しましょう。

男子の部と女子の部に分かれているのも大きな特徴。将棋を指す女子は30年前に比べたら大幅に増えていますが、まだ少なく、中学生の女子はいないから県代表を出さない県も10県以上あります。
都道府県大会は男子の部の参加40人、女子3人といった県もあり、しかも一部の都道府県は女子だけ代表枠が2人です(女子代表を出せない県の分をカバーしているようです)。「女子は全国大会に行くチャンスが大きい」と言われるのはこういうわけです。

女子の部の県予選を開催せず、推薦で決める県もあります。出たい意思があれば、中学選抜の都道府県予選を主催している○○県支部連合会などに早めに(できれば前年度に)アピールしましょう。中学選抜県予選の運営に関わる筆者は、来年の女子の出場者がゼロになるかもしれない事態に必死で探しているところですが、探してくれる運営ばかりではありません。

「女子はいいよな。弱くても全国大会に行けて」と女子の前で口に出す男子がいるのですが、嫌味に聞こえますし、女子への普及という将棋界の課題に反することなので、慎んでいただければと思います。女流棋士志望の研修会員は女流棋士資格を得る直前まで大会に出られ、中学選抜女子の部にも多数出場します。それもあって全国大会の女子の部のレベルは上昇しています。

中学生名人戦が地区予選→全国大会に

2024年3月「中学生名人戦が全国大会に」という大きな発表がありました。これまでは、地区予選はなく出たい中学生は誰でも7月に東京で行われる中学生名人戦に出場できました。それが全国を14のブロックに分けての地区予選で代表を選び、代表32人が7月に名古屋で行われる全国大会に出場する形に変更になります。詳しい地区予選分け方は上記リンク先をご覧下さい。

1例として北関東地区予選(埼玉・群馬・茨城・栃木県在住者対象)はさいたま市で実施されますが、人口などを考慮して北関東地区は代表枠3です。地区予選ごとに1~4の代表枠が割り振られています。

注意しなければいけないのは中学選抜が在校地優先であるのに対し、中学生名人戦は「住んでいる都道府県が含まれる地区予選大会に出る」在住地優先であることです。例えば、熊本県在住で福岡県内の私立中学に通っている生徒の場合は中学生名人戦は鹿児島市の南部九州地区予選、中学選抜は福岡県予選に出場することになります。

中学生名人戦は伝統があり、これまでは厳密には全国大会ではなかったものの、レベルの高い大会でした。丸山忠久九段、横山友紀四段などプロ棋士になった優勝者も多くいます。中学選抜とのもう1つの大きな違いは男女混合大会であること。48回の歴史の中で唯一の女子の優勝者が野原未蘭女流初段です。

もう1つ、中学生のメジャー大会を上げるとすれば8月に大阪で開かれる中学生王将戦。こちらも男女混合大会です。翌日に高校生王将戦が行われます。中学生名人戦は日本将棋連盟のサイト、中学生王将戦と高校生王将戦は関西将棋会館のサイトに毎年情報が出ます。

中学生でも適度な親のサポートを

他にも中学生が参加できる大会はローカルなもの、比較的大きなもの、いろいろあるのですが、小学生に比べると数が減ります。また、大半の中学に将棋部は無いので、運動部に入る中学生もたくさんいます。将棋大会と部活の練習が重なって出にくくなる。そうやって実力のある子が将棋から遠ざかっていくケースも見てきました。

将棋はやめると本人が決めているならいいのですが、まだやりたいのに部活と両立できず大会に出なくなってしまうのはもったいない。将棋に全振りしなければ大会で勝てないわけではありません。部活をやりながら中学選抜代表になっている生徒さんもいます。

1年生は部活を休むことを言い出しにくいので、親が顧問の先生に将棋大会の日は部活を休ませてもらうよう話すことで大会に出られることも。冒頭に書いた中学選抜の情報収集が難しい県もありますし、中学生名人戦は地区予選→全国大会制に変更されたばかりで、こちらも情報が行き届いてはいません。中学に入学し慌ただしく過ごしているうちに大会が終わっていたとならないように、親が調べて問い合わせをすることも必要ではないかと思います。

他にも地元で中学生が出られる大会の情報を探したり、中学生名人戦の地区予選に出る他県遠征のお金を出してあげたり、親のサポートがあれば将棋を続けやすくなります。

出場のハードルが上がる高校生の大会

高校野球は高野連、インターハイは高体連が運営していることをご存知の方は多いでしょう。その文化版が高文連(全国高等学校文化連盟)。高校生の3大大会は、高校選手権(総合文化祭将棋部門)、高校新人大会(全国高等学校文化連盟新人大会)、高校竜王戦です。

高校選手権と高校新人大会は高文連主催。各都道府県の高文連の将棋専門部(高校将棋部顧問教員で運営。名称は都道府県により違う)が大会運営するのですが、将棋部があり将棋専門部に加盟している学校のみ大会の連絡が届き、学校を通してしか申し込みができず、教員の引率が無いと大会に出られないのが普通です(ゆるめに運営している都道府県もあります)。

将棋部のある学校に入ればいいのですが、そうでない場合、大会がいつあって、どこに申し込めばいいのか情報収集し、学校と話して将棋専門部に加盟してもらい、引率教員をつけてもらうようにお願いし、大会に申し込みしてもらう必要があります。人数を集めて将棋同好会を作らないとダメとか無理難題を言われた話もあるようです。

子ども本人が入学した高校に話してもいいのですが、いろいろなケースを見てきた経験から、親が出たほうが学校は真剣に対応してくれると断言します。粘り強く交渉した結果、無事に大会に出られて全国大会で上位に入った例も知っています。全国大会が8月初めごろ、その都道府県予選が5月ごろに行われるので入学後すぐに動かなければ間に合いません。

高校選びの段階から将棋部の有無の情報収集もした方が良く、文化祭などで将棋部員が何人いるかリサーチしておくのが安心。ネットの情報は古いことがあり入学したときには廃部になっていることがあるからです。

高校選手権という名称で将棋連盟のサイトに載りますが、高文連関係者は高校選手権とは言いません。総文、総文祭とか総合文化祭です。「将棋 高校選手権 ○○県予選」で検索しても情報は何も出てこなかったりします。もともと日本将棋連盟が関わった高校選手権があり、それが総合文化祭(将棋、囲碁、かるたなど多くの部門がある文化のインターハイ)の一部門になったいきさつがあるようで、現在は総合文化祭将棋部門兼高校選手権というところでしょうか。名称から複雑です。

高校選手権は男女別で同性3人チームの団体戦と個人戦があり、男女団体で3人ずつ、男女個人で2人ずつと計10人も都道府県代表になる大きな大会。全国大会では団体と個人の両方に出ることはできません。都道府県大会では先に団体戦を実施し、団体代表に決まった男女3人ずつ(女子代表が出せない県もあります)を除いて個人戦を行って個人代表を決めるなどの方法がとられます。

高校新人大会は、1、2年生が対象で毎年1~2月に行われます。個人戦のみで男女2人ずつが都道府県代表になります。

時の会長と竜王が臨席する高校竜王戦

高校竜王戦は高文連主催ではなく日本将棋連盟と読売新聞社が主催しており、高文連将棋専門部への加盟がなくても、将棋部員でなくても出ることができます。ただし、都道府県によっては高文連将棋専門部が運営を請け負っているケースがあり、申し込みが簡単ではない場合もあります。

毎年、4~5月ごろに日本将棋連盟のサイトに高校竜王戦の各都道府県大会の案内が出ますので、詳細が分からなければ早めに問い合わせしてみることをお勧めします。男女混合で都道府県代表は原則各1人です。大半の県代表は男子ですが、女子が県代表になった例もありますし、先に行われる高校選手権の女子の団体と個人の優勝者計4人は高校竜王戦全国大会に招待枠で参加できます。

毎年8月の後半に福岡県で行われ、1日め午後集合で2勝通過2敗失格の予選、2日めは早朝から決勝トーナメントと予選敗退者のトーナメントがあり、昼過ぎに終了します。持ち時間は10分30秒と短いのが特徴。時の竜王と時の日本将棋連盟会長が挨拶や指導対局、大盤解説などを担当するのが慣例。今年は羽生善治会長と藤井聡太竜王による決勝の大盤解説も見られました。
 

 
高校竜王戦全国大会で渡辺明竜王(当時)の指導対局。飛車落ちや二枚落ちで代表の高校生にほとんど負けなかった。奥は谷川浩司九段。
 

大会実績は奨励会受験条件に含まれない

毎年8月後半に行われる奨励会(プロ棋士の養成機関)試験には全国から小学生中学生大会で上位に入った子どもが集まります。奨励会試験の受験資格に「都道府県大会で優勝」などの条件はなく、小学生名人戦でも倉敷王将戦でも代表になったことのない子どもも受験しますし、合格することもあります。

奨励会は合格がゴールではなく棋士になるための長い戦いのスタート。勝てないなら意味が無く「全国大会の実績ができてから奨励会受験を考えよう」と言う指導者もいます。

奨励会試験は受験者同士で対戦し4勝2敗以上の通過条件がある1次試験と、通過者が現役奨励会員と対戦し3局のうち1回勝てば合格の2次試験があります。優勝者は奨励会の1次試験が免除される小学生中学生大会もあり、試験案内に明記されています。高校生で奨励会受験をする人もいますが、高校大会で奨励会試験の免除になるものはありません。合格した翌日からアマチュア大会には出場することができません。

宮田聖子(将棋情報局)
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著者

宮田聖子(著者)
県代表決定大会を中心に将棋大会の運営を15年。手合いをつけるスピードには自信あり。複数代表を選ぶ大会の競技方法を工夫するのが好き。公平で開かれた大会を心掛けています。女性大会を中心に大会出場50回以上。ペンネーム宮田聖子で将棋の記事を書いていますが、将棋は弱いです。