【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年8月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年8月編

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皆さんこんにちは。「君の決心が本当に固いものなら、もうすでに希望の半分は実現している」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第12弾でございます。第12弾!ついに1年到達です。皆さんに支えられてここまでやってこれました。本当にありがとうございました。

元々1年は続けようと思ってやってきましたので、これを一つの区切りとして・・・と、思うじゃないですか。この連載は私の体力と、読んでくださる方がいる限りずっと続いていきますので、これからも末永くよろしくお願いします(^^)

さて、8月も終わりに近づいてきました。
この夏は皆さんどう過ごされましたか?私はわりとお祭りの多い地域に住んでいるのですが、コロナで中止になっていた夏祭りが全面的に復活して毎週どこかでやっていました。

子どもはヨーヨー釣りとかではしゃいでましたが、私は特にやることがないので、甚兵衛を着た藤井先生と夜店をまわる妄想をして楽しんでおりました(心ここにあらず)。

藤井先生は甚兵衛が似合うと思うんですよねー。
あと、射的とか金魚すくいは苦手そうです(止まらない妄想)。

・・・さて、気持ち悪い前置きはこれくらいにして「今月の藤井聡太」行ってみましょう!
8月の対局は以下の通りです。

8月の対局まとめ

4日 王座戦挑戦者決定戦 豊島将之九段 勝ち
15、16日 王位戦七番勝負第4局 佐々木大地七段戦 負け
22、23日 王位戦七番勝負第5局 佐々木大地七段戦 勝ち
31日 王座戦五番勝負第1局 永瀬拓矢王座戦 ?
8月は31日に王座戦の第1局がありますが、それは来月に回すとして、今回取り上げるのは3局です。銀河戦やNHK杯戦の対局があったかもしれないので何とも言えませんが、今月は対局が少なめでした。
藤井先生の場合、対局のほとんどがタイトル戦なので棋聖と王位みたいに並行して行われない限りはこれくらいが平常運転なのかもしれません。

それでは、1局目から振り返っていきましょう!

れぞ将棋!2人の天才が紡いだ盤上の物語

8月4日 豊島将之九段戦
第71期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)挑戦者決定戦

序章 名局率100%
七冠を保持する藤井先生が最後のタイトル・王座を目指す戦い。一発勝負のトーナメント戦を駆け上がって、ついに挑戦者決定戦にたどり着きました。

相手は豊島将之九段。きっと皆さんもそうだと思うんですが、島田的に大好物のカードです。

人生n週目の藤井先生と、公家のような気品あふれる豊島先生が対峙しているだけで「尊い・・・」と惚れ惚れしてしまいます。
それでいて、二人とも自分の中に純粋無垢な少年を住まわせているところも似ていて、対局風景や感想戦を見ていると、二人の男の子が楽しそうに遊んでいるようにも見えます。

そんなお二人の将棋の名局率はなんと100%!(島田基準のため何の意味もなし)

そして本局も名局中の名局になったのでした。

第1章 村田システム・・・じゃねぇ!
振り駒の結果、藤井先生の先手になりました。藤井先生の先手ということは目指すは角換わりです。対して豊島先生は、なんと角道を開けないで銀を5三の地点に移動させました。

こ、これは「村田システム」!!

村田システムといえば、王座戦挑決トーナメントで村田顕弘六段が藤井先生を敗戦ギリギリまで追い込んだ戦法。最近の豊島先生は振り飛車を採用したり、実験的にいろいろ指しているのでついに村田システムにも手を出したか!と、社内で大いに盛り上がったんですが、数手後に4筋の歩を突いたので普通の雁木になりました。

結局よくある将棋になりましたが、藤井先生もこの出だしには意表を突かれたんじゃないでしょうか。序盤は藤井先生の方が時間を使う展開になりました。

第2章 押し切るの?押し切れないの?
藤井先生も雁木にして戦型は相雁木になりました。相雁木と言っても、完全な同形ではなく、右の銀の位置が違います。豊島先生が従来からある雁木に構えたのに対して、藤井先生はここ数年で流行している新型雁木に構えました。

大雑把に言うと、旧型は金銀が密集しているので防御力が高く、新型は桂馬を使いやすいので攻撃力が高いです。なので、新型を採用した藤井先生が攻めて、旧型を採用した豊島先生が受ける展開になりました。

中盤は藤井先生の攻めが奏功して局面をリードします。豊島先生の玉が端に追いやられてこのまま決まるかと思われたのですが、そこからの豊島先生の凄まじい粘りが始まりました。

玉を上部に泳がせて、ギリギリの受けの好手を連発します。藤井先生の寄せの力をもってしても仕留めることができないまま両者1分将棋に。ドキドキの終盤戦です。
気が付くと藤井先生の玉も危ない形になってきました。そして豊島先生がと金を寄ってプレッシャーをかけたとき、ついに藤井先生が間違えます。

第3章 もう仕事どころじゃない
藤井先生が3筋に歩を打ってしまったことで、豊島先生の銀打ちに対して歩を受けることができなくなりました。仕方なく銀を使って受けましたが、左からと金に、右から馬に攻められて左右挟撃の形に。

藤井先生の受けがなくなってしまいました。本に出てくるような必至(どう受けても詰み)の形で、絶体絶命です。
正直、これはさすがの藤井先生も負けたと思いました。王座挑戦は来期に持ち越しかと。

しかしかかし!
ここであきらめる藤井聡太ではありませんでした。

ここから藤井先生の執念の王手ラッシュが始まります。デビューから20戦目、あの奇跡の大逆転となった澤田七段との一戦を彷彿とさせる連続王手です。

龍で王手、香で受ける
桂で王手、玉が逃げる

さぁ勝つのはどっちだ!?
もう仕事どころではありません。棋譜中継にくぎ付けです。

藤井先生がさらに桂で王手した局面、ここでドラマが待っていました。

豊島先生は玉を横に逃げたのですが(自然な一手!)、なんとこの瞬間に評価値が一気にひっくり返ったのです。ひゃー!

そして藤井先生が7筋に銀を打ったことで藤井玉の詰めろが解除され、逆に今度は豊島先生の玉に受けがなくなってしまいました。
159手で豊島先生が投了、大熱戦に終止符が打たれたのでした。

中盤から形勢が細かく揺れ動き、終盤は両者1分将棋の中で逆転、再逆転の激闘。
将棋を知らない人にその素晴らしさを伝えるときに、「これが将棋です」と胸を張って紹介したいような最高の名局でした。

実は2回目の桂の王手に対して、とても指しにくいのですが、玉を下に逃げていれば豊島先生が優勢を保っていたようです。
両対局者とも気づいていなかったとのことですが、対局が終わって感想戦の最後に山崎八段から指摘された瞬間、藤井先生が子どものように「へぇー」とおっしゃったのが印象的でした。

あれは、少年・藤井聡太の「へぇー」でしたね(^^)
「こんな手があるんですか」と楽しそうにつぶやいてました。

そこからまたこんこんと考え始める対局者。一日中戦ってなおこの集中力、二人ともほんとに将棋が好きなんだなーと思いましたね。

変化を考えているうちに藤井先生が持ち駒の歩をペン回しのようにクルクル回してるのが面白かったです。無意識だと思うんですが、何十万円もする駒で遊んじゃってるのが微笑ましかったですね。藤井先生がクルクル回してた、あの歩がほしい私です。

第4章 いざ、王座戦番勝負へ
本局に勝った藤井先生は王座への挑戦権を獲得しました。本局も含めて挑戦者決定トーナメントは負けてもおかしくない将棋もありましたので、改めて藤井先生の勝負強さを感じます。

王座戦は永瀬先生との対決。これはもう初戦から目が離せません。
第1局は8月31日。言われなくてもすると思いますが(;^_^A、皆さん注目しましょう!

々木大地七段の底力を見た


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