子どもの将棋大会その1(小学生編)【将棋大会の基礎知識#6】|将棋情報局

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子どもの将棋大会その1(小学生編)【将棋大会の基礎知識#6】

将棋大会には子どもを対象にしたものが数多くあります。ほぼすべての都道府県で予選大会が行われる小学生名人戦や倉敷王将戦をはじめ、テーブルマークこども大会などの全国10か所程度で行われる大会、ローカルな大会など様々です。大会の特徴や参加時の注意、何歳から参加できるのかなどについて説明します。

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伝統の小学生名人戦

一番伝統があり多くの人に知られているのは公文杯小学生名人戦でしょう。多くの場合、参加対象は年長~小学5年生となっています。なぜ6年生までではないのかというと、都道府県予選が1~2月、各都道府県代表1名(東京は23区と多摩地区に分かれています)が東西に分かれて集まる西日本大会と東日本大会が3月と旧学年のうちに行われ、東西上位2人ずつが出場しNHKで放送される全国決勝大会(準決勝と決勝)は学年が上がる4~5月に行われるから。小学生名人なので、新学年で小学生であることが出場条件になります。

多くの都道府県で初心者向けクラスや級位者向けクラスを設けており、代表、A、B、Cの4クラス制のところも。県代表を争うクラス以外は旧学年の6年生や年中以下でも出場OKの場合もあります。12月あたりに日本将棋連盟のサイトに各都道府県大会の一覧表が掲載されます。

歴代小学生名人には羽生善治九段(優勝時小6)、渡辺明九段(同小4)、佐々木勇気八段(同小4)などのトップ棋士が。棋士の登竜門的大会と言われるゆえんです。

そればかりが強調されると、プロを目指す強い子どものための大会と勘違いされてしまうのですが、各都道府県合わせて2000人を超える子どもが参加しており、大半が級位者。クラス分けが細かいところでは、一番下のクラスから参加して、級が上がるとともにクラスを上げていくタイプの子もいます。

気を付けて欲しいのは、小学生名人戦も次に紹介する倉敷王将戦も居住地の都道府県(住民票がある)の予選大会でないと出られないことです(まれに、代表を争うクラス以外は他県在住者でも出場可の場合もあります)。県代表決定大会は、あくまでもその県の中で代表を選ぶものです。
 
小学生名人戦県大会での対局。代表を争うクラスは盤面に集中し静かに行われます

高学年低学年別に行われる倉敷王将戦

岡山県倉敷市は今年生誕100周年を迎えた大山康晴十五世名人(1992年没)の出身地で女流棋戦の倉敷藤花戦を主催する自治体でもあります。この倉敷市で毎年8月に全国大会が行われるのが倉敷王将戦。小学校1~3年の低学年の部、4~6年の高学年の部に分かれているのが最大の特徴で、都道府県大会も低学年、高学年に分けて代表を決めます。

全国大会出場者は低学年64人、高学年64人(この連載の#4で説明しましたが、2のn乗の参加人数にすると運営もやりやすく公平になります)。首都圏1都3県、大阪、愛知など将棋人口が多い都道府県の代表枠を高学年2、低学年2にしています。小学生名人戦に比べ代表になれる可能性がグッと上がります。

小学生名人戦同様に、初心者、級位者向けの代表を争わないクラスを設けている都道府県もあります。ここで知っておいて欲しいのは、低学年の代表のレベル。高学年であれば、どの県であっても有段者でなければ代表になることは難しく、四段以上の争いになることも多いのですが、低学年の場合は、級位者であっても代表になれることがあります。

1~2級の子が中~上級者向けの代表を争わないクラスに出て上位に入り「この子は低学年の代表を決めるクラスに出れば、代表になれたのでは?」と思うこともあります。その県の子どもの将棋人口やその年の強い子どもの数によって低学年代表クラスのレベルは変動幅が大きくなります。

他にもたくさんある小学生大会

この小学生名人戦に倉敷王将戦と並ぶ3大小学生大会と言われているのが、テーブルマークこども大会です。全国11か所で行われるJTプロ公式戦と同時開催され、低学年の部、高学年の部の決勝は袴姿でステージに上がり、多くのお客さんが見守る中、プロの対局の前座のような形で対局します。藤井聡太竜王・名人が小2の時、決勝でうっかり角をタダで取られて負け、袴姿で大泣きしている映像が有名ですが、この大会の低学年の部での出来事です。

大企業がスポンサーとなっており宣伝力が桁違い。小学生名人戦や倉敷王将戦に出ない層も多く出場します。低学年、高学年には分かれていても棋力別クラスにはなっていませんが、初心者が多いので手合い違いの強い相手に何局も続けて負かされて終わるという心配は少ないです。
このテーブルマークこども大会には、全国各地区の代表を集めての全国大会はありませんが、イオンモールこども将棋王決定戦J:COM杯3月のライオン子ども将棋大会 は各地区でブロック代表を決め、代表を集めた全国大会もあります。表にそれぞれの時期や特徴をまとめました。
 

ローカルな子ども大会も数多くあり、県名や市町村名+小学生or子どもor少年+将棋大会で検索するとよく見つかります。大きな市民大会に小学生の部があることも多いです。

子ども大会は親の情報交換の場

ブームになっていると言われる子ども将棋教室ですが、ピアノやスイミングなど定番の習い事のようにあちこちに教室があるわけではありません。また、昔から遊びとして行われてきた面もあるので、将棋は教室に通うものという認識を持ってない人も多くいます。

将棋大会には、そんな級も持っていないお子さんも参加します。初心者向きのクラスであっても教室や道場に通っている子どもに負けて、自信を失ってしまうこともあるのですが、もう大会には出ないと遠ざかってしまうのはもったいない。子ども将棋大会は、親同士の貴重な情報交換の場でもあるのです。

県大会であれば、その県のどこに将棋教室や道場があるか、子どもが多く集まっている道場、レベルが高い教室、格安の教室、初心者指導が上手いのはこの先生などなど、詳しい親御さんが必ずいます。そのような情報を広めることにより、子どもの将棋人口を増やせれば嬉しいというような気持ちでいろいろ教えてくれるんですね。

「どこの教室に通われているのですか」などと話しかけると、期待以上の情報が得られることもあるので、積極的に話しかけてみましょう。
また、大会を運営する側も、そのような県内の情報を持っているので、忙しくなさそうなタイミングで聞いてみても良いと思います。

教室に行ったことはないけれど大会に出る→ボロ負けする→悔しいから強くなりたいと大泣き→大会で負かされた相手の親に教えてもらった教室に行く→将棋の勉強法を教えてもらい熱心に取り組む→その負かされた相手に勝てるようになる。という話も実際にあります。

何歳から大会に出られるか

保育園や幼稚園に通う子どもが大会に出る例はたくさんあります。中には初段近い子どもも。ルールを理解して、親と離れて知らない子相手に対局ができ、完全に詰まされたら「負けました」と投了することができる。これができれば何歳でもOKではないでしょうか。将棋は誰の力も借りずに自分が考えたことだけで対局するのが大原則。幼いからといって親がそばについて大会に参加するというわけにはいきません。
筆者が見てきた中では大会参加は3歳が最年少です。「未就学児可」という大会もあれば、「小学生以上」の大会もあるので、大会案内をよく読みましょう。

将棋よりも幼いうちに覚えやすいと言われ、強い幼児もたくさんいる囲碁は未就学児だけの大会があるそうですが、将棋には筆者の知る限り無いようです。

親は近づけない大会も多い

一手指すたびに子どもが顔をあげて親の顔色をうかがう。かつての将棋大会ではこんなシーンがたまに見られました。しかし、最近の大会は「親は子どもの対局しているところに近づけない」と立ち入り制限をするものが増えてきました。部屋が別に分けられている大会もあれば、部屋は一緒で親の席は遠くに設けられている大会もあります。コロナの影響もありますが、トラブルを防ぐ意味も大きいです。

持ち駒の金を掴んで親の顔を見る、親が首を振ったり表情が険しいのを見てその金を戻して別の駒を掴む。これは助言と言って反則行為にあたります。相手の親がそれを見て、反則ではないかと訴える、けれど証拠はないのでトラブルになる、こういうことを防ぐため、最初から親は近づけないようにするわけです。

もちろん、大会に出ているお友達同士での助言行為はダメなので、人の対局中には口を出さないのはもちろん、合図も送らないよう気を付けて欲しいと思います。

次回は「子どもの将棋大会その2」として奨励会受験と大会、そして中学・高校の大会についてです。

宮田聖子(将棋情報局)
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著者

宮田聖子(著者)
県代表決定大会を中心に将棋大会の運営を15年。手合いをつけるスピードには自信あり。複数代表を選ぶ大会の競技方法を工夫するのが好き。公平で開かれた大会を心掛けています。女性大会を中心に大会出場50回以上。ペンネーム宮田聖子で将棋の記事を書いていますが、将棋は弱いです。