【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年7月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年7月編

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皆さんこんにちは。「高く登ろうと思うなら、自分の脚を使うことだ」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第11弾でございます。この謎連載もあと1回で1年になるんですね。頑張ります。

それにしても、最近暑いですね。毎年「夏ってこんなに暑かったっけ?」と思うんですが、今年は特に強く感じます。皆さんもこまめな水分補給を心がけてください。
お母さん島田としては藤井先生の健康状態も気になるところです。7/26の王位戦第3局の2日目は朝から藤井先生がうなだれる場面が多く、「夜、ちゃんと眠れなかったんかな?」と心配になってしまいました。
いくら若いとはいえ、普段と違うところで寝るのはストレスを感じるもの。タイトル戦続きの藤井先生におかれましてはなるべく質の良い睡眠を長くとれるようにと祈るばかりです。
なんなら、子守唄を歌いに行きたいです(それが睡眠の妨げ)。

さて、気持ち悪い前置きはこれくらいにして「今月の藤井聡太」行ってみましょう!
7月の対局は以下の通りです。

7月の対局まとめ

3日 棋聖戦五番勝負第3局 佐々木大地七段戦 勝ち
7、8日 王位戦七番勝負第1局 佐々木大地七段戦 勝ち
13、14日 王位戦七番勝負第2局 佐々木大地七段戦 勝ち
18日 棋聖戦五番勝負第4局 佐々木大地七段戦 勝ち
25、26日 王位戦七番勝負第3局 佐々木大地七段戦 勝ち
なんと!7月の対局の対戦相手は全部佐々木大地七段で、5戦全勝という結果になりました。これはこの連載始まって以来のことで、これからも相当ないことだと思います。 並行して行われている棋聖戦と王位戦の挑戦者が両方とも佐々木先生だからですが、他の対局もなかったんですね。珍しい。
藤井先生の対戦相手の棋士を紹介するのもこの記事の役割と思っているのですが、今回は一人しかいないので書くことがありません(笑)。その分、将棋の内容や周辺情報を深堀りしてカバーしていきたいと思います。

では振り返っていきましょう!

つの妙手!驚異の「玉さんぽ」

7月3日 佐々木大地七段戦
第94期ヒューリック杯棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)五番勝負第3局

序章 沼津御用邸
1―1の五分で迎えた棋聖戦第3局。勝ったほうがタイトルに王手を掛ける大きな一番です。本局は静岡県の「沼津御用邸」で行われました。ここは藤井先生が渡辺明九段の挑戦を退けて棋聖初防衛を決めた場所で、当時の対局について聞かれた藤井先生はこのように答えていました。

「そのときの将棋は終盤戦が非常に難解でミスもあったんですけど、指していて面白かったですし対局に関して反響をいただいたところもあったので、今回もそのときのような、それ以上に面白い将棋にできるように頑張りたいと思っています」

「指していて面白かった」というのがポイントその1です。この将棋は終盤の詰む詰まないが非常に複雑だったのですが、豊島先生との竜王戦第4局といい、藤井先生は終盤が難しい将棋が好きなんだな、と思います。「将棋の手を考えるのが好き」という藤井先生の純粋な心が表れていると思いました。

もう一つのポイントは「今回もそのときのような、それ以上に面白い将棋にできるように」というところ、私クラスになると藤井先生が何かを言い換えるだけで悶絶してしまうのですが、この言い換えも「そのときと同じでは観ている皆さんに申し訳ない」という気持ちと、「以前よりもっとレベルアップしたい」という藤井先生の姿勢が表れた部分かなと思って、とても印象に残りました。

そして藤井先生の宣言通り、本局は多くの棋士や将棋ファンに強烈なインパクトを与える一局になりました。

第1章 妙手その1 端桂
本局は藤井先生の先手番。となれば目指すは角換わりですが、佐々木先生はこの伝家の宝刀を堂々と受けて立つ選択をしました。

もちろん、無策で藤井先生の得意形に突っ込むわけはありません。右玉に構えたのが佐々木先生の工夫でした。玉を右側に囲うので右玉です。そのままですね。
右玉はバランスの良い構えなのでどこから攻めていくのか難しい囲いです。しばらくねじり合いが続くのかと思っていたところ、藤井先生にすごい手が出ました。

端に桂を飛んだのがそれです。本局では藤井先生にすごい手が2つも出たのですが、この端桂が妙手第1弾でした。

何がすごいって、まず端に桂を飛んだ瞬間に桂の頭を攻められそうで、とても指しにくいのです。もちろん、藤井先生はそうされても大丈夫だと読んでいるわけですが、そもそも序盤で端に桂を跳ぶのは危ないと習うので、普通には候補手としても考えない手です。
こういう常識外の手も先入観にとらわれずに候補に入れて読むのは藤井先生の強さの一つですね。

また、端に桂を跳ねると飛車先逆襲という一点狙いをすることになるのですが、これが失敗したら即負けにつながりますのでリスクが高い手でもあります。藤井先生自身「桂から攻めていけるかは難しいところかと思っていました」と対局後に振り返っていますが、もちろん、ある程度成算があってこの手を選んだのでしょう。自分の読みを信じて、リスクを恐れず突っ込んでいく勇気がすごいです。

第2章 妙手その2 玉寄り
藤井先生の端桂が機敏な動きでわずかにリードを奪いました。しかし、佐々木先生も反撃に出ます。お互いの玉が戦場に近いので怖いところです。

ところが、それを怖がらないのが僕らの藤井聡太。なんと、佐々木先生の攻めを玉で受けに行きました。飛車と銀で攻められそうなところで、あえて戦火に飛び込むように玉を寄ったのが驚天動地の一手でした。これには将棋ファンだけではなく、解説のプロ棋士もビックリ。そして対局者の佐々木先生にとっても驚きの一手だったようで対局後に「いやいや、玉でしびれましたね」と振り返っていました。

玉自ら相手の飛車のラインに飛び込むので並の人間だと怖すぎて指せません。こういうの藤井先生に聞くと「え?これ怖いんですか?」って逆に聞かれちゃうんですけど、怖いです(笑)。しかもこのあと前線に出ていった玉が散歩から帰ってくるように自陣に戻ってきて、それで盤石と言うからすごすぎます。
今まで教わってきた将棋の概念をぶち壊すような手順で、高見先生もTwitterで「昨日までの将棋観が破壊されました」とつぶやいてましたね。

最後は佐々木先生の攻めを完全に受け止めて、藤井先生の勝利となりました。
魅せる将棋、強い勝ち方でした。

第3章 約束
ということで、1勝1敗で迎えた大事な3局目は凄まじい内容で藤井先生が制し、棋聖の防衛に王手を掛けました。

前回の記事に書いたのですが、この対局の数日前に藤井先生にお会いして「次、めっちゃ大事ですね」と言ったら力強く「はい」と返してくれた、というやり取りがありました。

宣言通りというか、絶対そんなことないんですけど、私との約束を果たしてくれたようでうれしかったです(妄想)。しかもこんな最高の内容で・・・。もう泣きましたね。
「島田さん、やりましたよ」という藤井先生の声が聞こえてくるようです(もはや幻聴)。

あと全然関係ないですけど、藤井先生が食べた「カツハヤシ」めっちゃ美味しそうでした。

 

しい戦い、王位戦先勝

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