大会の競技方法・その1【将棋大会の基礎知識#4】|将棋情報局

将棋情報局

大会の競技方法・その1【将棋大会の基礎知識#4】

将棋大会には様々な競技方法(試合方法)があります。「2勝通過2敗失格予選」、「スイス式トーナメント」などの将棋大会でよく採用される競技方法を理解すれば、次は誰と当たるのかの予想もつきやすくなります。競技方法とその仕組みを説明します。

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 スポーツの大会でもよく採用されているトーナメント。写真1のようなものは、ノックアウトトーナメントといいます。1回戦で負けたら競技終了。このような将棋大会も一部であります。しかし「せっかく大会に参加したのに1局しか指せないのは気の毒。たくさん指せるようにしたい」という考えがアマ将棋界にはあります。そんな将棋大会でよくある競技方法はどんなものでしょう。


写真1 このように負けたら終了のものはノックアウトトーナメントと呼ばれます。右端のような1戦少ない位置は「特クジ」と呼ばれることもあります。

2勝通過2敗失格

●最低でも2局指せる
●アマ竜王戦などメジャー全国大会でよく採用され、その県予選でもある。

これを通過すれば決勝トーナメント(ノックアウトトーナメント)に進出できる予選として使われます。表2を参照。
➀クジで参加者を4人ずつブロックに分けます。1戦目は各ブロックの1と2、3と4が対戦。

➁2戦目も同じブロック内で勝った同士、負けた同士で対局します。2戦目が終わった時点で必ずブロックごとに2連勝が1人、2連敗が1人、1勝1敗が2人でます。
※人数が4で割り切れないときは、3人ブロックにして、空いた番号と当たる人は勝ち扱いにします。

➂2連勝者は予選を通過して決勝トーナメント(ノックアウトトーナメント)へ、2連敗者は競技終了です(敗者トーナメントがある場合も)。

➃ブロックに2人いる1勝1敗者は、隣のブロック(1組と2組、9組と10組)の1勝1敗者と当たります。それぞれ小さい番号同士、大きい番号同士で当たるのが一般的。表2の場合は1組の1勝1敗は1番と2番、2組の1勝1敗は2番と4番なので、1組1番と2組2番、1組2番と2組4番が対戦し、それぞれ勝った方が予選通過です。

➄ブロックの数が奇数の場合は写真3のように最後の3組の組み合わせが変則的になります。



表2 2勝通過2敗失格形式は4人1組に分けて競技します。表は2組だけですが、実際の大会では10組以上になることも。
 
写真3 1勝1敗者同士の対戦は、このように別の表が用意されていることも。

例外➀

隣の組とは当てないで同じ組の1勝1敗同士を当てる方式もあります。表2の1組は1局目対戦した1番と2番が1勝1敗ですから同じ人と3戦目に再び対戦することになります。このような同じ人と2回当たることを避けるために考えられたのが、先に説明した隣の組と当てるという方法なわけです。

例外➁

ブロック分けをせずに、1局目で勝った人同士、負けた人同士を、終わった順にどんどん当てていくやり方もあります。どのやり方でも、2局目は勝った人同士、負けた人同士で対戦して2連勝は通過、2連敗は失格、3局目は1勝1敗同士が対戦するようにすれば、ちょうど半数が予選を通過することになります(3人ブロックがある場合、半数プラス若干名が通過です)。

1勝通過2敗失格

●最低でも2局指せる
●関西の大会や日本アマチュア将棋連盟の大会でよく採用されている

2勝通過2敗失格方式同様に、これを通過すれば決勝トーナメントに進出できる予選として使われます。違うのは予選通過率が高いこと。参加者の3/4が予選を通過します。
全員が指す1局目で勝利すれば、その時点で予選は通過。2局目は1局目で負けた人同士で対局し、勝ったら1勝1敗で予選通過。負けたら2敗で予選敗退となります。
当て方としては、クジを引いて1局目は1と2、3と4、5と6、7と8…が対局。2局はそれぞれの負けたほう(2、3、5、8が負けたとしたら)2と3、5と8…と当てていくことが多いです。

スイス式トーナメント

●勝敗に関係なくたくさん指せる。
●同じ勝数が複数出た場合は点数で順位が決まるのが分かりにくい。

「スイス式トーナメント」は耳慣れない言葉かもしれませんけれど、アマ大会ではよくある方法です。スイス式トーナメントは局数が進むごとに人数が減っていくノックアウトトーナメントとは全く異なり、原則全員が同じ局数を指します。スイス式トーナメント5回戦なら全員5局。参加人数が奇数の場合は対局の無い人が不戦勝扱いになりますが、同じ人が2回不戦勝にならないようにします。
ただ、スイス式“トーナメント”と言ってしまうと、ノックアウトトーナメントのことだと勘違いし、負けたら帰ってしまう人がたまにいて、実質的な形式はスイス式トーナメントでも「リーグ戦で4~5戦」と書いてある場合もあります。
当て方は、
➀クジで番号を決め1局目に1と2、3と4、5と6、7と8…と隣の番号と指します。

➁2局目は近い番号から勝った同士、負けた同士で指します。

➂3局目以降は同じ勝数の人同士が当たるようにしたうえで、〇〇同士、〇×同士、×〇同士、××同士と同じ星の並びの人と当てていきます。
※表4(スイス式4回戦の場合)参照。
※同じ勝数の人同士を当てるのは共通していても、○×と×○を分けずに1勝の人同士を番号順に当てていくやり方や、○×と×○で対戦のように星の並び方が逆の人同士を当てるやり方もあります。

➃参加人数が2のn乗で無い場合は、同じ勝数の人、同じ星の並びの人が奇数になりますが、同勝数、同星並びの人と当てられない場合のみ勝数が1つ差の人、並び方が近い人を当てていきます。同じ人と2回当たらないようにします。

➄こうすることで、全勝者が1戦ごとに減っていき、参加8人なら3戦で、16人なら4戦で、32人なら5戦で全勝1人になります(17~31人の場合は4戦か5戦で全勝1人になります)。
 
表4 スイス式トーナメントの表。これは16人での競技の場合です。

大会運営をしていると、参加人数が32といった2のn乗の人数になると小躍りしたくなります。同じ星の並びの人が必ず偶数で当て方が分かりやすく、必ず5戦で全勝1人になると読みやすくなるからです。
最初からスイス式5回戦と決まっている場合もあれば全勝が1人になった時点で終了という場合もあります。

さて、スイス式は勝数が多い人が順位が上になるのは当然ですが、同じ3勝1敗の人の順位は点数で決まります。表4には4人の3勝1敗者がいます。
➀対戦点 まず見るのは対戦点(ソルコフ=SCと表記される)。対戦した4人(5戦なら5人)のそれぞれが勝った数を合計します。表の15番七田さんは1戦目の16番が2勝、2戦目の14番が2勝、3戦目の11番が3勝、4戦目の4番が4勝ですので、合計11点となります。同じように計算すると、13番の五川さんが8点、1番の玉川さん8点、11番の三山さんが7点です。

➁勝星点(SBと表記される) 対戦点が同点の1番と13番は勝星点という対戦点のうち自分が勝った相手の勝数を合計した点数を見ます。6点と4点なので順位は13番が上ということになります。

➂中間勝点(MDと表記される) 勝星点も同じ場合は中間勝点という勝星点のうち、一番多く勝った相手の点数と一番少なく勝った相手の点数をカットした残りの点数で決まります。
※ここまで細かく順位をつけず、同点3位2名のようにする場合もあります。

県代表が2名の場合にスイス式トーナメントを採用すると、全勝1人が優勝なのはいいとして、2~5位が3勝1敗の点数差で決まると、3~5位で代表になれなかった人は、モヤモヤしてしまうというご意見も聞きます。その欠点を補うために、1敗者を集めて第二代表決定トーナメント(ノックアウトトーナメント)を行う方法もあります。こうすると、最後まで1敗なら(スイス式トーナメントで負けた1敗のみで、第二代表決定トーナメントで勝ち抜いたら)必ず代表になることができます。

この決定トーナメントで負けたなら、自分が2敗したなら代表になれなくても仕方ないと納得できるでしょう。私が運営に関わる小学生倉敷王将戦(低学年、高学年に分かれて都道府県代表を決定する大会を行い、8月に岡山県倉敷市で全国大会が行われる。代表は高学年、低学年それぞれ64人で、一部の都道府県は高低2人ずつ代表枠がある)の県大会では、代表それぞれ2枠のため第二代表決定トーナメント方式を採用しています。

この方式ですと32人の場合、スイス式トーナメント5戦+第二代表決定トーナメント最大3戦(5人のノックアウトトーナメント)で8戦分の時間が必要になるのですが、ここはスイス式トーナメントの手合いを速く正確につけることで終わらせています。

例外➀

将棋大会で使われるスイス式トーナメントは1と2、3と4など近い番号を当てていく方式が多いですが、半分で折り返し1と9、2と10のように当てていく方式もあり、高校生、大学生の大会でよく採用されています。

例外➁

相手の勝数を合計して点数を出すのは少々難しいため、一律で1局目に勝ったら5点、2局目に勝ったら6点、3局目に勝ったら7点、4局目に勝ったら4点のような点数計算法を採用している大会も。同じ勝数なら何局目で負けたかが順位を分けます。
将棋大会はローカルルールがやたらと多いのです。「なんで同じじゃないんだ!」と言われると辛いのですが、大会ごとの競技方法の細かい違いを楽しめるようになったら、大会の達人です。

例外➂

スイス式は全員が同じ局数を指すのが原則ですが、3敗したら失格になり、残りの対局は指せなくなる〇敗失格制を取り入れる例もあります。途中で失格になった人と対戦していたら対戦点が低くなるデメリットは大きいのですが、5戦全敗で心が折れるようなことにはならないのがメリットかもしれません。

総当たり、予選リーグ→順位別にトーナメントなど、将棋大会で採用される競技方法はまだあります。連載の次回で紹介します。


宮田聖子(将棋情報局)
  お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。

著者

宮田聖子(著者)
県代表決定大会を中心に将棋大会の運営を15年。手合いをつけるスピードには自信あり。複数代表を選ぶ大会の競技方法を工夫するのが好き。公平で開かれた大会を心掛けています。女性大会を中心に大会出場50回以上。ペンネーム宮田聖子で将棋の記事を書いていますが、将棋は弱いです。