段級と大会のクラスの選び方【将棋大会の基礎知識#3】|将棋情報局

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段級と大会のクラスの選び方【将棋大会の基礎知識#3】

将棋大会は棋力別にクラス分けされていることもあり、申込時にクラスを選択する必要があります。将棋大会の基礎知識#3では、どのクラスで出たらいいかという疑問にお答えします。また「過少申告」の問題についても考えてみました。

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 将棋大会は「将棋のルールが分かれば誰でも出られます」のような間口が広いものも多いです。そうなると必要になるのが棋力別のクラス分け。S(四段以上)、A(初段~三段)、B(1~3級)、C(4~6級)、D(7級以下)のように細かく分かれていることもあれば、県代表決定クラス(主に有段者)、一般クラス(級位者)のような分け方もあります。1~5級限定大会など対象棋力別に分けて小規模で実施する大会も最近は増えてきました。

しかし、将棋の段級は基準がバラバラ。そもそも、将棋の級は一番下は何級からということも全国統一基準はありません。子どもに昇級の喜びをたくさん味わわせたいという気持ちから30級からスタートする教室もあれば、10級からという将棋道場も。なので、同じ8級でも全然実力が違うのは将棋界あるあるです。大会で参加者の実力の差が大きくなってしまいがちなのは、一番下のクラスと言えます。

大会を運営する側としては、一番下のクラスは初心者同士で対戦してほしいと考えていても、なかなかうまくいきません。
たまに「道場や指導員から初段以上の認定を受けている」ことが必要な大会もありますが、ほとんどの場合は認定も不要、段級は自己申告で大会に出られます。級が無い、分からなくても多くの場合、参加OKです。


※アマ将棋の段級についてまとめました

自分の段級が分からない場合

「教室や道場に行ったことがありません。二段のおじいちゃんに強いと言われたのですが、どのクラスで出ればいいですか」。大会運営をしているとこんな質問メールをよく受けます。そのおじいちゃんの二段がどれくらい信用できるか分からないし、雲を掴むような話だなと思いつつ、メールを返信するのも大会運営者の仕事の1つ。

どう返信しているかというと、将棋ウォーズなどネット将棋の級はないか聞いてみます。それも分からないようならば、一番下のクラスで出ることを勧めています。相手のプライドを傷つけないよう「最初は一番下のクラスが良いと思いますが、ほとんど勝てるようならば次は上のクラスで出るのはいかがでしょうか」みたいな文面にしています。

ネット将棋の段級がある場合は、将棋ウォーズ、将棋クエスト(ある程度の局数を指し、実力に近い段級になっている場合)は、その級に合ったクラス(ウォーズ2級なら、1~3級のクラス)を選ぶように勧めます。一度、道場にも教室にも行ったことが無く大会も初めて、将棋ウォーズ二段という小学生がいて、どうかなと思いながら小学生名人戦の代表決定クラス(一番上のクラス)を勧めたら、勝ち越して十分通用するなと思ったことがあります。

ただ、大会によってクラス別のレベルは違うので、一度出てみて、ほとんど勝てないようなら次はクラスを下げてもいいと思います。
問題なのは将棋倶楽部24で、非常に段級の基準が厳しいため、5級以上はリアル道場の有段者にあたるくらい。24で10級だけど道場初段という例もあります。難しいのですが、5級分くらい上のクラスに出るのが良さそうです。

複数の段級を持っている場合

複数の段級を持っている場合、どの段級に合わせればいいのかも問題です。首都圏で将棋を指している人なら、東京・将棋会館道場で6級、地元の教室で1級、将棋ウォーズ初段、将棋倶楽部24で8級というように複数の段級を持っていることが珍しくありません。

「こんなんで、段級によって大会のクラス分けをするのはおかしい。同じ段級なら実力も同じになるように全国統一の基準を作るべきだ」
などのご意見を聞いたこともあります。分かります、分かります。全国統一基準があれば、せっかくクラス分けをしてもクラス内で大きな実力差があることもなくなり、運営側としても嬉しいです。しかし、どんな基準を作って、その管理は誰がやるのか、これまで自由に段級を認定していた全国の道場や教室から反発も予想されるけど、どうするのかなど考えると実現には高いハードルがあると言わざるを得ませんし、誰でも気軽に大会に出られる良さが失われてしまうでしょう。

私も県内の段級を揃えたいと思い、段級の基準が甘めと思われる道場に話をしたこともあるのですが、厳し過ぎるよそがおかしいと怒られてしまいましたし、簡単ではないのです。

プロに二枚落ちで勝てたら初段という基準も聞くのですが、これも難しくて棋士が本気を出したら、普通のアマ初段はまず勝てません。
正当な答えとしては「複数の段級をお持ちの場合は一番高い段級に合わせて大会に出て下さい」なのですが、その基準で大会に出ている人は少ないように思います。

複数の級を持っている場合、自分でも「実力より下だな」と思える段級はあると思います。それを除いて大会出場クラスを決めていただければと思います。

過少申告を考える

「過少申告」という言葉があります。持っている段級より下のクラスで大会に出ることを言います。出るからには勝ちたい気持ちは分かるのですが、大会のクラス分けは、実力差の大きすぎる人との対局を避け、いい勝負を楽しんで欲しい、初心者でも大会に出て欲しいという意味で行われています。根底にあるのはより多くの人に将棋を楽しんでもらう「普及」の考え。有段者なのに初心者クラスに出るようなことをされると、その普及の妨げになってしまいます。

基本的なルールとしては、一度優勝や入賞したら、クラスを上げましょう。私が関わっている小学生名人戦と小学生倉敷王将戦では、3位以内に入賞した方はクラスを上げて下さいと明記しています。その結果、入賞したクラスと同じクラスでまた申し込んでくる人はいなくなりました。

その一方で、明らかに有段者なのに県をまたいであちこちの大会の級位者クラスに出て、毎回のように賞品をもらっている例もみかけます。バレているので「過少申告であちこちの大会に出る」ことはやめましょう。

逆に級位者なのに有段者のクラスに出る「過大申告」はOKとされることが多く、積極的なチャレンジとして評価されることもあります。ただ、見ていて心配になるケースも。小学生の大会では「小学生なら大人みたいに強い子はいないだろう」という思い込みがあるようで、初心者向けのクラスがあるにも関わらず、下級位者が代表を決めるクラスに申し込んでくるケースがあります。

小学生といえども有段者はたくさんいます。強い子どもと下級位者が対戦すると、序盤早々、角に紐がついていないのに角道を開けてしまい、角をタダで取られ、意気消沈してさらにミスをして飛車も取られ、もう何を指したらいいか分からない。そして次の対戦でもあっという間に大駒を取られ泣いてしまうことになりがちです。相手の子どもだって代表をかけた真剣勝負ですから手加減なんてできません。

どんなに相手が強くてもそこから学びたいと思える子どももいるので一概には言えませんが、過度の過大申告は将棋が嫌になってしまいかねないので、実力とクラス分けをよく考えてから申し込むのが良いと思います。

正式免状と大会

日本将棋連盟では段位の免状を発行しています。厚手の和紙に美しい毛筆で書かれ、時の竜王と名人、会長が1枚1枚手書きで署名します。現在の免状は羽生善治会長と、藤井聡太竜王・名人という将棋界2大スターの署名が! 現在免状は大人気だそうです。

自分でお金を払って免状を取得するのが一般的ではありますが、優勝すれば無料で免状を取得できる大会もあります。「三段以上の免状を持っていないこと」など条件が明記されている「免状獲得大会」もあれば、何段の免状を持っていても出ることができ、優勝者が該当の段位以上の免状を持っていない場合のみもらえる大会も。

A級で優勝したら三段、準優勝なら二段、C級で優勝したら3級、準優勝なら4級というように結果によって段級の認定が受けられる大会もあります。また、支部会員のための大会で同じ支部の3人チームで出場する支部対抗戦では「四段以上の免状を持っていないこと」が出場条件になっています。

都道府県別に予選が開かれるアマ竜王戦やアマ名人戦では、県代表になったら五段、四段の免状が無料で申請できます(大会や代表回数により違います)。全国優勝すると六段免状がもらえ、アマ竜王戦の場合は全国優勝1回で七段の免状です。

全国優勝はもちろん、県代表になるのも大変なので、そのような大会実績で認定され免状ももらった段位は「本物の六段」などと言われることがあります。

宮田聖子(将棋情報局)
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著者

宮田聖子(著者)
県代表決定大会を中心に将棋大会の運営を15年。手合いをつけるスピードには自信あり。複数代表を選ぶ大会の競技方法を工夫するのが好き。公平で開かれた大会を心掛けています。女性大会を中心に大会出場50回以上。ペンネーム宮田聖子で将棋の記事を書いていますが、将棋は弱いです。