大会のルールとマナー【将棋大会の基礎知識#2】|将棋情報局

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大会のルールとマナー【将棋大会の基礎知識#2】

タイトル戦を始めとしたプロの対局が動画で中継されることが増え、将棋のルールやマナーが知られる機会が多くなりました。しかし、アマの大会とプロの公式戦では異なる点がたくさんあります。連載「将棋大会の基礎知識」第2回はルールとマナーについてです。

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振り駒

プロの公式戦では振り駒は記録係がしますが、アマは自分でします。まず、駒を並べてから、目上の人(段級が上の人、歳が上の人)が自分の歩を5枚とって振り、表(歩)が過半数出たら振った側が先手になります。重なっている駒や立っている駒はカウントしません。

棋士になった順や段の上下がはっきりしている棋士でさえ、上座の譲り合いが発生するのに、アマ同士でどちらが振るべきか分からない場合もありますよね。初対面の人に歳を尋ねるのは失礼かもしれません。どちらが振るかについて、厳密に考えなくてもよいのではないかと思います。過度な譲り合いをせず、相手に勧められたら自分が振るくらいで良いでしょう。勧められたからと言って「私の方が老けて見えるということ?」などと深読みしないようにしましょう。

どこで振るかというと、盤の上か、その横のスペースです。プロの将棋ではそんなことはしませんが、アマの大会では盤の上以外に振るべき場所がないことも多いです。盤の上で振ったら盤駒が傷むというご意見を聞いたこともあるのですが、多くの場合、安くて丈夫なビニール盤とプラスチックの駒。ビニール盤は木の盤の1/10くらいの薄さなので、大会会場に運ぶのも保管するのも便利です。
気を付けなくてはいけないのは、高く投げすぎて隣の席の人のところに駒を飛ばしたり、床に落として「どこ行った?」と他の人も巻き込んで捜す羽目にならないようにすることです。

将棋の駒は王が一枚、玉が一枚でできています。基本的には上とされるほう(振り駒をするほう)が王をとります。


将棋大会でよく使われるビニールの盤とプラスチックの駒。駒台は用意されないことが多いので、駒箱のフタと本体を駒台の代わりにする人も。

反則した時、された時

将棋の反則手は日本将棋連盟のサイトのこちらを見ていただくとして、将棋大会で多い反則は、筆者の体感では一番が王手放置、次が二歩。相手の反則に気が付いた時はどうすればいいでしょうか。基本的には、「二歩です」「(王手をしたのにそれを避ける手を相手が指さなかった場合)王手ですよ」などと指摘します。潔く投了するというのが本来のあり方です。しかし「あ、ごめんなさい」と言いつつ、やり直して別の手を指す人もいます。「許してあげる」というのもダメではありませんし、県代表を決定するような真剣度の高い大会でなければ、そういう優しい人もよくいます。納得いかない場合は、手を挙げて審判やスタッフを呼びましょう。その際、時計は止めたほうがいいです。スタッフが相手の反則負けを裁定してくれることもあれば、相手が認めずにトラブルになり、一から指し直しや対局続行など後味の悪いことになる場合もあります。全国大会の決勝でも無い限りは大会に映像記録などありませんし、双方の言い分が食い違う場合、なかなか正確な裁定は難しいのが現状です。

自分が反則をしてしまい、相手がそれに気が付いていない時はどうするか、難しい問題です。潔く投了すべきだという人もいますが、気が付かないのも相手の実力なのだから、指し続けて良いという考え方もあります。いずれにせよ、反則に気が付かず最後まで指して投了したら、それは投了した側の負けです。大会は「投了優先」とされていることがほとんどです。後から「そういえば反則があった」と指摘しても、それは覆りません。ましてや、大会が終わる頃になって1局目で反則されましたと言われても、運営側もどうしようもありません。

最近は初心者向き、級位者向きの大会も増え、反則負けは無し、違う手を指し直してOKとされる大会も増えてきました。初心者のうちは反則が多くなってしまうので、反則負けを厳しくとっていると、途中で対局が終わってしまい、終盤を経験できないままになってしまいます。それよりも最後まで対局して経験値を上げたほうが良いという考え方は一理あると思います。大会がどのような方針なのか、説明をよく聞く、読むようにしましょう。

たまに、同じ反則、同じクラスであっても、スタッフによって負けの裁定をしたり、指し直していいと言ったりの大会があるのですが、そこはスタッフ間ですり合わせをしてから大会を開いてほしいなと思います。

助言の禁止=人の対局に影響を与えることをしてはダメ

助言の禁止というルールがありますが、これが分かりにくい。「次の手は5二金がいいよ」と具体的な指し手の指摘がダメなのは分かると思います。では盤面を見た第三者が「もう詰みそう」と言ったり、対局者が持ち駒の金を掴んだ時、近くにいる人がクビを振って合図するのはどうでしょう? どちらも対局に影響を与えるので助言にあたると考えられます。が、指摘したところで「合図なんてしてない」と言われたり、発言したのが大会に出ていないただの見物人だったら、失格にしようもありません。
なので、対局者に聞こえるように話したり、見えるように合図したり絶対にしないようにしましょう。まったく将棋に関係ない話ならOKではないです。

大会ではよく人の対局を見ている人がいます。将棋の文化として根付いていることなので、あまり注意はされませんが、どんなポカをしようとも絶対に「あっ」とか言わない、見物人同士でヒソヒソ話などしない、静かに見ることのできる人だけに許されることです。また近づき過ぎないよう、机や椅子、対局者の体に触れないように気をつけて下さい。

スマホの扱い

スマホなどの電子機器を使って将棋ソフトに指し手を教えてもらう「ソフト指し」と呼ばれる行為。これを防ぐためにプロの対局では電子機器を対局前に預けます。しかし、アマの将棋大会ではそれは難しいのが現状です。ボランティアで資金もない多くのアマ大会の運営者にとって、スマホのような高額で紛失したら大変なことになるものを責任もって預かるのは厳しい。運営側が用意した封筒に電源を切ったスマホを入れて机上に置くというルールも試したことがありますが、取り違えが起きそうになったり、忘れて帰宅してしまった人が出たり(スマホを忘れられると連絡もできず、気がついて戻ってくるのを期待して会場で待つしかありませんでした)簡単ではないと実感しました。

スマホは電源を切って身につけないようにアナウンスがあったり、離席の際はスタッフに声をかけてもらうルールがあるなど対策を講じている大会もありますが、何の対策もしていないという大会のほうがまだ多いです。

言うまでもありませんが、対策のあるなしに関わらず、対局中にソフトでカンニングする行為はしてはいけません。1手だけでも絶対にダメです。ソフト指しでなくても、特に注意が無くても、対局中にスマホを見るのも極力避けましょう。イヤホンをしたまま対局するのも良くありません(補聴器などの場合はスタッフに申し出て下さい)。

指導対局の際には、スマホを机上に置き、棋譜を入力しながら対局するというやり方に「どうぞ。棋譜を持ち帰って役立てて下さい」と認めてくれる棋士が増えました。ある程度強くならないと、棋譜を思い出すことができませんからね。

大会の対局ではスマホに棋譜入力しながら指すのは一般的に禁止です。ゆるめな大会ではOKな場合もあるかもしれませんが、必ず運営と対局相手に許可をとってからにしましょう。
※指導対局の場合でも先生の許可をとってからにしましょう。

清潔や感染予防にも配慮を

和室で座布団に座って行われる大会もありますが、多くの場合はテーブルです。

このように密な大会も珍しくありません。1つのテーブルに6人ということも。対局中に鼻歌やブツブツ言う、貧乏ゆすり、将棋盤に駒を叩きつける、対局時計を乱暴に叩くようなことをすると周りに迷惑がかかるのでやめましょう。対局時計は1台1万6千円ほどしますので、運営側としても大事に扱って欲しいところです。

新型コロナウイルス感染症が5類になり、脱マスクが進んでいます。ただ、感染症が無くなったわけではありません。特に将棋大会は食事をともにするよりも近い距離で向き合い、相手が触った駒をとって自分の持ち駒にします。ノーマスクで咳やくしゃみの飛沫を相手にかけること、また咳の出る口を手でふさぎ、その手で駒を触ることは相手を不快で不安な気持ちにさせるマナー違反です。咳の心配があれば、マスクをしましょう。

対局の合間におやつを食べるのはいいのですが、チョコやスナックの油、飴やガムのベタベタがついた手で指すのはもちろんダメですし、指先をペロッと舐めて指すのも相手に嫌がられます。たまにいるんですね。清潔な手で指すことを心がけましょう。

宮田聖子(将棋情報局)
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著者

宮田聖子(著者)
県代表決定大会を中心に将棋大会の運営を15年。手合いをつけるスピードには自信あり。複数代表を選ぶ大会の競技方法を工夫するのが好き。公平で開かれた大会を心掛けています。女性大会を中心に大会出場50回以上。ペンネーム宮田聖子で将棋の記事を書いていますが、将棋は弱いです。