【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年5月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年5月編

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皆さんこんにちは。「人の価値とは、その人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第9弾でございます。これを書いているのが5/29なのですが、昨日行われた叡王戦第3局があまりにも感動的だったために、興奮冷めやらぬ中で書いております。
と同時に、TLに流れてきた藤井聡太駅長のあまりの可愛らしさに、もだえながら筆を進めています。
一日の違いでここまでの「かっこよさ」と「可愛らしさ」のギャップを表現できるのは世界広しといえど聡太先生だけでしょう(圧倒的当社比)。

さて、5月、6月は将棋書籍編集部としては「将棋年鑑」の制作に忙殺されるのが常で、今年も例にもれず忙しくしております。
私は特集記事を担当しておりまして、今年は藤井先生と杉本先生のインタビューを行いました。藤井先生からは毎年のことですが面白い着想や思わずうるっとしてしまうようなお話をたくさん聞けたのですが、杉本先生のお話もこれまた素晴らしかったです。
二人の話で共通していることや補完し合っている部分もあって、2つのインタビューを合わせて読んでいただくと、さらに理解が深まると思います。
私が感じたことについては将棋情報局のインタビューの補足として随時アップしようと思いますが、インタビュー全体を読んでいただきたく、先日予約開始した将棋年鑑本体をポチっとしていただければ幸いです(流れるような告知)。

業務連絡が終わったところで、「今月の藤井聡太」行ってみましょう!

5月の対局まとめ

6日 叡王戦五番勝負第3局 菅井竜也八段戦 勝ち
10日 王座戦挑戦者決定トーナメント 中川大輔八段戦 勝ち
13、14日 名人戦七番勝負第3局 渡辺明名人戦 負け
21、22日 名人戦七番勝負第4局 渡辺明名人戦 勝ち
28日 叡王戦五番勝負第4局 菅井竜也八段戦 勝ち
5月は名人戦と叡王戦が並行して行われているなかで、王座戦の挑戦を目指す戦いが始まりました。結果は5局対局して4勝1敗。皆さんご存知の通り、叡王戦は藤井先生の防衛で決着し、3連覇を果たされました。
タイトル戦続きで藤井先生は過密日程での対局だったと思います。こうなってくるとまたお母さん島田が発動して体調面が心配になってくるのですが、インタビューや感想戦などでの笑顔を見るたびに「まぁ大丈夫なのかな」と少し安心しています。お腹痛くなったらいつでも言うんやで。

安定の気持ち悪さが炸裂したところで、藤井先生の5月の戦いを振り返っていきましょう。
・・・と、その前に4月27・28日に行われた名人戦七番勝負第2局について前回書けませんでしたので、そこからスタートしたいと思います。

人戦は連勝スタート

4月27、28日 渡辺明名人戦
第81期名人戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)七番勝負第2局

序章 最年少名人に向けて
現在六冠を保持している藤井先生が、将棋界で最も歴史のある「名人」を目指して渡辺先生に挑戦している第81期名人戦。藤井先生は第1局を制して幸先良い番勝負のスタートを切りましたが、七番勝負は長丁場。勝負はこれからです。
第2局は静岡市の「浮月楼」での対局となりました。毎年A級順位戦の最終局が行われる場所で、島田的に一度は行ってみたい対局場でもあります(どうでもいい情報)。

第1章 角換わり拒否
第2局は藤井先生の先手番で、予想されたのは角換わり。藤井先生が最も自信を持っているであろう作戦で、渡辺先生との棋王戦は全局角換わりになって藤井先生がタイトルを奪取しています。
ところが、渡辺先生は4手目に角道を止めて角換わりを拒否しました。藤井先生の得意戦法に付き合わない姿勢です。渡辺先生は第1局でも角換わりを避けて雁木を採用したので、「角換わりにしない」というのが今シリーズの方針なのだと思います。
第1局に続いて雁木かと思いきや渡辺先生の用意していたのは左美濃囲いでした。珍しい構えで、お互いに手探り状態の力戦に突入しました。

第2章 互いに誤算
駒組みが終わって藤井先生が3筋で戦いを起こしましたが、渡辺先生が金をぐいっと前面に押し出したのが藤井先生が「見えていなかった」という構想。渡辺先生がわずかに優位に立ちました。その後、藤井先生が香を取る予定だった局面で、取ってしまうと一気に悪くなることに気づき、軌道修正を余儀なくされるということがありました。局後に藤井先生が大いに反省していた箇所になります。それでも軌道修正することで決定的な差をつけられることなく形勢を保ったのはさすがでした。
その後、今度は渡辺先生に誤算がありました。香を打った手に対して当然受けてくると思っていたところ、藤井先生は受けずに攻めてきたのです。これが好判断でした。さらに藤井先生が端に桂を跳ねた手に対して玉を逃げたのが良くなかったようで、形勢逆転、あとは藤井先生の正確かつスピーディーな寄せを見るばかりとなりました。

・・・と、書くと渡辺先生が悪い手を指したように思うかもしれませんが、渡辺先生の玉を逃げる手は飛んできた桂を空振りさせるようなとても自然な手なので、これを悪手と判断するのは難しい(と、解説の中村太地先生もおっしゃってました)。むしろ、自然に見える手を悪い手にした組み立て、そして逃げられても大丈夫と見切って攻めを決行した藤井先生を讃えるべきところかと思います。

いずれにしても超ハイレベルなお二人にとっての「誤算」や「疑問手」というお話です。我々地上に住む人間から見ると、差があることすらわからない神々の戦いなのです。


第3章 勝因とかない
名人戦第2局は藤井先生が苦戦の末に見事勝利を収めました。
藤井先生のコメントで島田的に印象に残ったのは対局直後に行われたアベマさんの単独インタビューのものです。

質問は「勝因になった一手は?」というものでしたが、これに対する藤井先生の対応がとても藤井先生らしかった。

「いや、基本的には苦しい将棋だったので、何か、ここが良かったということではないんですけど・・・。うーん、そうですね。いや、うーん・・・。(長考して)そうですね、何と言うか、本局に関してはちょっと反省点が多かったかなという風に思っています」

以前に将棋年鑑インタビューの補足で書いたこともあるんですけど、藤井先生は逆転勝ちを誇ることをしないんですよね。将棋は一度リードされたら相手が間違えない限り勝てないので、おそらく藤井先生の中ではリードされた時点でその将棋は反省点しかない。そこから逆転で勝ったとしてもそれは他力なので、偉くもないし勝因などない、という考えなのだと思います。

このインタビューも、勝った人に「勝因は何ですか?」と聞いているので自然な質問なんですけど、藤井先生が相手だと「勝因ないです」となっちゃうんですよね。
インタビュアーさんは戸惑ったかもしれないですけど(苦笑)、私的にはとても藤井先生らしくて好きな回答でした。

名人奪取に向けて2連勝と快調な序盤戦となりましたが、皆さんご存知のように、ここから試練が待っていました。

熱の大熱戦!ぎりぎりの勝利

 
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