定跡外れもなんのその 藤井竜王が中川八段に快勝 第71期王座戦挑戦者決定トーナメント|将棋情報局

将棋情報局

定跡外れもなんのその 藤井竜王が中川八段に快勝 第71期王座戦挑戦者決定トーナメント

第71期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、挑戦者決定トーナメント1回戦の藤井聡太竜王-中川大輔八段戦が5月10日(水)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、87手で勝利した藤井竜王が2回戦進出を決めました。

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 ■中川八段の奇策

振り駒が行われた本局、先手となった藤井竜王は迷わず角換わり腰掛け銀の布陣に構えます。これに対してこちらも腰掛け銀で応じた後手の中川八段ですが、早い段階で6筋の位を取ったのが工夫の一着。「位を取ったら位の確保」の格言通りに銀を進めたのは中川八段が考慮中に思いついたという独自の発想で、これによって局面は早くも定跡形を外れました。

後手の斬新な布陣を見た藤井竜王は、じっくりと腰を落ち着けて対策を練ります。すかさず4筋の歩を突いて仕掛けたのは後手の6筋の位が安定する前に仕掛ける大局観で、後手が素直に応じれば飛車による横歩取りの筋から暴れていく含みがあります。盤上は、臨機応変な対応で満足な仕掛けを得た藤井竜王が主導権を握って本格的な中盤戦に突入しました。

■堂々の指し回しで藤井竜王が快勝

右桂を五段目に跳ね出した藤井竜王は、じっと飛車先の歩を交換して後手に手を渡します。この直後、6筋から逆襲される筋を嫌った後手の中川八段は攻防の自陣角を打って局面を落ち着けにかかりますが、局後にこの手を後悔することになりました。先に角を手放したことで、2筋突破を狙う藤井竜王からの角打ちにぴったりの受けがありません。

受けていてもジリ貧と見た中川八段は右辺を放置して左辺から攻め合いに出ますが、形勢をリードした藤井竜王の対応は冷静でした。無理攻めをいなして持ち駒を蓄えつつ、「玉の腹から銀を打て」の格言通りの銀打ち一発で後手玉を仕留めることに成功。終局時刻は19時35分、自玉の受けなしを認めた中川八段が投了して藤井竜王の勝利が決まりました。

勝った藤井竜王は局後、次戦に向けて「少しでも何とか上に進めるように頑張りたい」と抱負を語りました。敗れた中川八段は「なんとか(藤井竜王の)八冠阻止に向け頑張りたいという気持ちで対戦した」と胸中を明かしています。勝った藤井竜王は2回戦で木村一基九段対村田顕弘六段戦の勝者と対戦します。


藤井竜王には前人未到の八冠同時制覇への期待が高まる(写真は第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局) お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。