【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年4月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2023年4月編

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皆さんこんにちは。「下を向いていたら、虹を見つけることはできないよ」でおなじみの編集部島田です。

将棋情報局ゴールドメンバー限定記事「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」第8弾でございます。4月、春ですね。私は桜が咲いたら藤井先生と兼六園に行くという約束を(妄想の中で)していたので、そろそろお出かけの準備を始めたいと思います(冒頭から気持ち悪い)。

先月の記事で書いていた藤井先生へのインタビューは無事に終えることができました。
皆様の「島田がんばれ」という心の声が瀬戸市まで届いておりました。ぴよりんは売り切れで買えませんでしたが、興味深いお話をたくさん聞くことができました。藤井先生、お忙しい中お時間割いていただき本当にありがとうございました。

インタビューの補足は例年通り将棋情報局の方で掲載したいと思っていますが、せっかくですので、インタビュー以外の藤井家探訪のエピソードをこの記事の最後の方に書きたいと思います。
と、いうわけで皆さん、最後まで読んでくださいね(謎の圧力)。

では、いつものように対局の振り返り、いってみましょー!
まずは4月の藤井先生の対局をまとめてみます。

4月の対局まとめ

5、6日 名人戦七番勝負第1局 渡辺明名人戦 勝ち
11日 叡王戦五番勝負第1局 菅井竜也八段戦 勝ち
23日 叡王戦五番勝負第2局 菅井竜也八段戦 負け
27、28日 名人戦七番勝負第2局 渡辺明名人戦 ??
4月は名人戦と叡王戦のスタートで、4局行われました。名人戦の第2局については来月に書かせていただくとして、そうすると今回の記事で取り上げる将棋は3局しかありません。今までの連載の中で一番少ないです。

でも考えてみると、藤井先生の場合対局のほとんどがタイトル戦なので、対局数は予選から勝ちまくっていた若手時代(なお、今も若い)より少なくなって当然です。六冠であることを考えると、このくらいが平均的な対局数なのかもしれません。十分な休養が取れるので、お母さんとしても体調面を考えて安心します。・・・と、言いつつ1週間以上藤井先生の対局がないと、ちょっと寂しいというか、人生のハリが失われてしまうのも隠し切れない事実です(わがまま)。

いつも通り前置きが長くなったところで1局目からいってみましょー!

人戦、白星スタート

4月5、6日 渡辺明名人戦
第81期名人戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)七番勝負第1局

序章 たどり着いた舞台
ついに藤井先生が名人戦七番勝負に登場しました。C2から始まって、C1で9勝1敗で足踏みをして(師匠との昇級争いもありました)、B2は全勝、B1は2敗と苦戦、そしてA級を戦い抜き、プレーオフを制してたどり着いた舞台です。藤井先生もおっしゃってますが、名人戦はA級にならないと出場資格がないタイトル戦なので、積み重ねが大事です。
一歩一歩着実に階段を上って、ここまで来たんだなと感慨深いものがあります。

小学生の時の夢を叶えるためにも、悔いのない戦いをしてほしいです。

この対局の前に朝日新聞の村瀬さんと北野さんによるインタビューがありました。島田的に興味深かったのは幼少期の負けず嫌いから、内容を重視するように考え方が変わったのはいつか?という質問に対しての藤井先生の回答です。

「棋士になって対局を見ていただくという立場になったので、いい将棋を指したいという気持ちが大きくなったのかなとは思うんですけど」

と、お手本のような答えを言った後に

「ただそうですね、やっぱり何と言うか『いい手を指して勝つというのが一番楽しい』というところもあるので、そういう意味では結果だけではなくそういう(いい内容の)将棋を指したいという気持ちはもっと前から自然に持っていた部分かなと思います」

う~ん、いいですね~。『いい手を指して勝つというのが一番楽しい』という純粋な気持ちをそのまま出してくれたのがうれしかったです。
藤井先生の内容の良さを求める姿勢は、やっぱりこういう原初的な感情によるものなのですね。だから強い。

子どもの時からずっとそうなんだと思うんですが、その気持ちをこれからも持ち続けていってくれれば、島田は一生ついていくことでしょう(気持ち悪い、もはや怖い)。

第1章 雁木
竜王VS名人の頂上決戦の第1ラウンドは渡辺先生の先手で雁木模様の将棋になりました。棋王戦がオール角換わりだったので、渡辺先生としても少し変化させたかったのかもしれません。

渡辺先生が玉を堅く囲ったのに対して、藤井先生が居玉(玉を動かさない状態)のまま、桂馬をぴょんぴょん跳ねていったのがお互いの棋風が出たところ。

藤井先生は玉の可動域が狭くなることを嫌うので、玉をガチガチに固めることはあまりしません。また、桂馬を跳ねる手を好む印象もあります。銀よりも桂の方が相手陣に到達するスピードが速く、いかにも現代将棋という感じがします。

第2章 居玉を避けない男
後手番ながら藤井先生が先に攻める形になって、やや局面をリードしました。とはいえ居玉というのは玉の守備力が低いので、渡辺先生からの反撃を覚悟しなければなりません。将棋を習い始めた頃、まず「居玉は避けよ」と教わるのも、自分の攻撃以上に相手からのカウンターが厳しいためです。

しかし、居玉の低さを生かすように指したのが藤井先生にしかできない高等テクニックでした。これは良い子はマネしちゃいけない指し方です(まぁマネできないんですけど)。
結果的に渡辺先生のカウンターより藤井先生の攻めの方が速く相手玉に届く形になり、藤井先生が勝ち切りました。終盤、玉の可動域を生かして渡辺先生の最後の攻撃をかわしたのも藤井先生らしい勝ち方でした。

第3章 えぐいよなあ
本局の直後、渡辺先生がTwitterで「えぐいよなあ」とつぶやいたことが話題になりました。「全体の読みの精度が高い。ちょっとずつ苦しくて、そのままゴールまでいかれた」というのが真意だったようです。

ビジネスの場面でもそうですけど、問題解決の際に「できていること」と「できていないこと」がはっきりあるほうが打ち手を考えやすいんですよね。できていることを伸ばすか、できていないことをできるようにすればいいので。大変なのは「全体的に少しずつできていない」状態で、この場合はどこから手を付けていいかわかりません。渡辺先生もこのような気持ちから「えぐいよなあ」という嘆きの言葉が出てきたのかな、と推察します。

そして、普通はこういう心情を表現すると勝負としては不利だと思うのですが、そこを正直に出してくれるのはいつもながら渡辺先生のすごいところで尊敬します。

とはいえ番勝負は始まったばかり。すでに次の対局での作戦を練っていると思いますので、2局目以降、渡辺先生がどういう形で巻き返してくるのか注目したいです。

もちろん、藤井先生がさらにエグさに磨きをかけて、エグすぎる手をみせてくれることも期待しています。

王戦も幸先よし


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