藤井王将の封じ手は誰もが予想しなかった受けの勝負手 第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局|将棋情報局

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藤井王将の封じ手は誰もが予想しなかった受けの勝負手 第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局

藤井聡太王将に羽生善治九段が挑む第72期ALSOK杯王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は、第4局が2月9日(木)に東京都立川市の「SORANO HOTEL」で始まりました。先手の羽生九段が勝ってスコアをタイに戻すか、後手の藤井王将が勝って防衛に王手をかけるか。七番勝負の行方を占う両者の2日目の戦いに注目が集まります。

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■角換わり腰掛け銀の新定跡

藤井王将が2勝1敗として迎えた本局は、先手の羽生九段が角換わり腰掛け銀の定跡形に誘導して幕を開けました。これに対し後手の藤井王将も先手の攻めを堂々と受けて立つ方針を採ります。駒組みが頂点に達したところで腰掛け銀をいったん自陣に引き戻したのは藤井王将が披露した趣向で、タイミングを測りつつ先手の最善形を崩す狙いがあります。

藤井王将の駆け引きを見た羽生九段は、すぐには仕掛けに出ずに玉を一路右に寄せて間合いを取ります。藤井王将が6筋の歩を突っかけてきたタイミングで4筋に桂を跳ねたのが羽生九段の独特の呼吸で、本局はここから未知の局面に突入しました。立会人の森内俊之九段も「見たことのない将棋」と評する探り合いのなか、両対局者は小考を重ねて読みを深めていきます。

■藤井王将の異筋の銀打ち

羽生九段が攻め合いを求めたことにより、1日目の午前中ながら局面は激しい攻め合いの様相を呈しています。6筋に跳ねた藤井王将の桂を銀で食いちぎったのは羽生九段の決断の一手で、駒損ながら持ち駒の角と桂を生かして一気に藤井陣に攻め込もうという狙いが見て取れました。形勢は互角で、羽生九段の攻めが続くかが局面の焦点になっています。

守りの時間が続く後手の藤井王将は、羽生九段が角を打ち込んで次のと金作りを見せたときにじっと自陣一段目に銀を打つ受けを用意していました。と金作りを受ける以外の狙いがないこの銀打ちはひと目には効率の悪い手に映りますが、それだけに藤井王将がこの局面をしのぐことが重要と判断したことがうかがわれました。

■藤井王将の驚きの封じ手から戦いは2日目へ

藤井王将の銀打ちに対して羽生九段が軽快に桂を成り捨てたところで藤井王将が2時間以上の長考に沈み、そのまま次の手を封じ手としました。藤井王将の候補手としてはこの成桂を①銀で取るか②玉で取るかの2択で、前者の場合は先手がと金を作っている間に攻め合いに出る大局観、後者の場合は再び銀を中央に戻して丁寧に受けに回る構想です。

前日の控室では①銀で取る手を予想する声が大勢を占めていましたが、明けて2日目、開封された封じ手は②玉で取る手でした。

この手は、と金作りを許さない強気の受けとも言える手ですが、この手を指すと羽生九段からの猛攻が目に見えています。この猛攻をしのぐために自陣に受け一方の角を手放したのが藤井王将の選択でした。いかにも形が悪い受けで、常人なら選択肢から除外してしまいそうな筋ですが、前日の銀打ちに続き形にとらわれない頑強な受けの連発は「名人に定跡なし」という言葉を思い起こさせます。

難解な2日目の戦いは、羽生九段の猛攻を藤井王将が受け止められるのかが焦点になりそうです。七番勝負の行方を大きく左右する本局は本日2月10日(金)夕方以降の終局が予想されています。


封じ手を開封する立会人の森内九段(中央)(提供:日本将棋連盟)

水留啓(将棋情報局)

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