「羽生ゾーン」の金打ちで貫録示す 羽生九段が白星発進 伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦挑戦者決定リーグ|将棋情報局

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「羽生ゾーン」の金打ちで貫録示す 羽生九段が白星発進 伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦挑戦者決定リーグ

伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は挑戦者決定リーグが開幕。紅組1回戦の羽生善治九段―徳田拳士四段戦が2月6日(月)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、132手で羽生九段が勝利してリーグ成績を1勝0敗としました。

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■角換わり腰掛け銀の定跡形
 
先手となった徳田四段は得意の角換わり腰掛け銀に誘導します。対して後手となった羽生九段は4筋の歩を早目に突いて先手からの仕掛けを警戒する変化を採用。細々とした間合いの計り合いが続いたのち、後手の羽生九段が6筋に桂を跳ねて最初の戦いが始まりました。先攻を許した徳田四段も4筋の歩を突いて攻め合いを望みます。
 
局面が激しさを増してきたところで、一転羽生九段は盤面中央に角を打って桂取りをかけました。徳田四段が自陣角を打ってこれを受けるよりないのを見越して、その後じっくりと3筋の桂頭攻めを間に合わせようという大局観です。この角打ちをきっかけに羽生九段が攻めの主導権を握りますが、形勢自体は互角のまま難解な中盤戦が続きます。
 
■徳田四段に訪れた分岐点
 
局面は徳田四段がどのタイミングで攻め合いに持ち込むかに焦点が当てられています。4筋で銀交換が行われたとき、徳田四段は5筋に銀を打って後手の角を追う穏便策を採りました。ここは同じ地点に自陣の金を出る積極策もあり、その場合は持ち駒の銀を温存しての反撃を重視する組み立てになります。実戦では徳田四段の銀打ちに対して後手の羽生九段がタダ捨ての銀の手筋を放って猛攻を続けました。
 
攻めの手番を握った羽生九段は、先手陣に打ち込んだクサビの歩を頼りに、持ち駒の金を打ち込んでおかわりの攻めを繰り出します。「寄せは俗手で」の格言に従った攻めが厳しく、ここで羽生九段が形勢をリードしました。先手玉を囲いの外に追い出しておいてから今度はそっぽのところに金を打ったのが挟み撃ちの寄せを実現する好手。いわゆる「羽生ゾーン」からの攻めを前に、先手の徳田四段は防戦の時間が続きます。
 
■羽生九段が攻め切って快勝
 
先の金打ちで先手の飛車を捕獲した羽生九段は、すぐにこの飛車を敵陣に打ち込んで竜を作ります。上部脱出に望みをつなぐ徳田四段が玉を自陣三段目に逃げ出したのを見て、今度は遠く盤面左方に金を打って角取りをかけたのが羽生九段の緩急自在の指し回しでした。先手玉の守りの要である角をいじめながら盤面全体を支配して、ジワジワと体力勝ちを目指したのが実戦的な勝ち方です。
 
終局時刻は19時35分、逆転の望みなしと認めた徳田四段が投了を告げて羽生九段の勝ちが決まりました。投了図で徳田四段は自玉が盤面中央に孤立している一方で、ほとんどの駒が駒台にあり守りようのない状況でした。これでリーグ成績は勝った羽生九段が1勝0敗、敗れた徳田四段が0勝1敗となりました。2回戦で羽生九段は永瀬拓矢王座と、徳田四段は豊島将之九段と顔を合わせます。


羽生九段はこの対局の3日後にタイトル戦の対局を控えている(写真は第33期竜王戦七番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留啓(将棋情報局)



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