雁木破りの新構想で藤井王将が一歩リード 第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局|将棋情報局

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雁木破りの新構想で藤井王将が一歩リード 第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

藤井聡太王将に羽生善治九段が挑む第72期ALSOK杯王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は、第3局が1月28日(土)・29日(日)に石川県金沢市の「金沢東急ホテル」で行われました。対局の結果、95手で勝利した藤井王将がスコアを2勝1敗としました。

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■羽生九段の用意は雁木

本シリーズはこれまでの2局でいずれも先手番の棋士が勝利していることもあり、自然と後手番の棋士の作戦選択に注目が集まります。本局で後手となった羽生九段は、4手目に角道を止める趣向を見せました。先手の対応によっては振り飛車にする含みもあったという駆け引きのすえ、羽生九段が雁木の構えを採用して本局の骨格が決まりました。

羽生九段の作戦を見た先手の藤井王将は、雁木に対してここ数年のプロ棋界で定番となっている早繰り銀の速攻に出ます。3筋でぶつかった歩を取り込んでおいてから一転ふわりと飛車を浮いたのが含みのある一手。感想戦で羽生九段をして「そういう筋があるんですね」と言わしめた藤井王将のこの新構想によって、局面は前例のない戦いに誘導されました。

■藤井王将の緩急ある指し手

藤井王将の飛車浮きによって攻めを急かされた後手の羽生九段は、角道を通す歩突きで応戦します。ここから角交換ののち立て続けに銀の取り合いが行われて、局面は激しい戦いに突入しました。羽生九段からの攻めに対して受けの時間が続く藤井王将ですが、手順に角銀歩の攻め駒を駒台に蓄えて静かに反撃の時を待ちます。

盤面右方でのやりとりが一段落したタイミングで、先手の藤井王将はじっと玉を戦場から遠ざけて自陣を整えました。戦いが始まってから盤上はお互いの玉が不安定な乱戦が続いていましたが、この一手で陣形が引き締まったのが大きく、藤井王将が先手番の利をうまく指しやすさにつなげました。反対に羽生九段の陣形は金銀が分裂した形で、まとめるのに力が求められます。

■藤井王将が快勝で先手番キープ

羽生九段が封じた封じ手が開封されて2日目の戦いが始まります。羽生九段も乱れた自陣を整えるべく4筋に玉を上がりますが、局後羽生九段はこの手を後悔することになりました。とはいえこれに代わる構想も難しく、すでに後手がまとめづらい形になっていたようです。このあと羽生九段は玉を自陣三段目に上がって金銀の厚みを生かす方針を採りましたが、藤井王将も敵陣に馬を作って羽生玉の背後にピタリと迫ります。

四段目への進出を図る羽生九段の玉に対し、藤井王将は細かく歩の手筋を駆使してこの玉を危険地帯に押し戻します。開き直った羽生九段が銀を進出して上部開拓を目指したとき、手厚く銀を打って攻めの拠点を築いたのが藤井王将の決め手となりました。これによって後手玉の入玉の可能性がなくなり、藤井王将からの攻めの方針がわかりやすい展開になりました。

終局時刻は16時10分、最後は羽生九段が形作りをしたところで藤井王将が羽生玉を即詰みに討ち取って危なげない着地を決めました。これで勝った藤井王将は先手番をキープ。2勝1敗として七番勝負を一歩リードしました。注目の第4局は2月9日(木)・10日(金)に東京都立川市「SORANO HOTEL」で行われます。


勝った藤井王将は先手番での公式戦連勝を22に伸ばしている(提供:日本将棋連盟)

水留啓(将棋情報局)

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