研究と大局観の美しい調和 藤井竜王が快勝で名人挑戦に前進 第81期A級順位戦|将棋情報局

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研究と大局観の美しい調和 藤井竜王が快勝で名人挑戦に前進 第81期A級順位戦

第81期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、7回戦の藤井聡太竜王―豊島将之九段戦が1月18日(水)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、139手で勝利した藤井竜王が6勝1敗に星を伸ばして単独首位をキープしました。一方で敗れた豊島九段は4勝3敗となっています。

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■角換わり腰掛け銀の研究勝負
 
先手となった藤井竜王は得意の角換わりの序盤に誘導します。大方の予想通りに局面が相腰掛け銀に進んだところで、後手の豊島九段が6筋の位を取る工夫を披露しました。この戦型におけるマイナーな変化で、この位が安定すれば自陣角を打って盤面全体を制圧できるという考えです。豊島九段の歩突きに対して藤井竜王がすぐさま反発したため、盤面中央で早くも戦いが起こりました。
 
両対局者の事前研究がかみ合った結果、対局開始から1時間が経過したころには局面は45手目を迎えていました。先手の藤井竜王が銀をぶつけて交換を迫ったとき、豊島九段の放った自陣角が用意の一手。前例のない新手を前にして長考が予想される中、藤井竜王はまるで定跡手順をなぞっているかのように、わずか数分の考慮で応じます。数手のやり取りののち、この日最初の長考となる32分を記録したのは後手の豊島九段の方でした。
 
■藤井竜王研究の手渡し
 
6筋での折衝が一段落したとき、じっと玉を戦場から遠ざけて相手に手を渡したのが藤井竜王の準備していた答えでした。自陣三段目に玉を上がるこの▲4七玉は一見して不安定な形ながら、この戦型において藤井竜王が何度も見せてきた現代的な玉さばきともいえます。この手に対して豊島九段は1時間半の長考のすえ、いったんは自陣に銀を投入する辛抱を選びました。
 
手番を得た藤井竜王は、さらに飛車先の歩を交換して後手からの攻めを待ちます。しびれを切らした豊島九段は、7筋で飛車を切って角を手にしたのち4筋の桂も銀で食いちぎって攻めを継続します。続けて打った桂で金得を果たしたのは豊島九段としても大きな戦果でしたが、この折衝の中で藤井竜王は手順に自玉を安全地帯に逃がすことに成功しました。
 
■藤井竜王が抜け出して6勝目
 
戦いが夜に入っても形勢は互角を維持しつつ、局面は終盤戦を迎えています。後手の豊島九段が自玉を金銀四枚の堅陣に収めて堅さを主張する一方で、先手の藤井竜王は遠く3筋に逃げ込んだ自玉の深さをよりどころとしています。藤井竜王が竜を使った金取りで反撃を開始したとき、豊島九段が攻め合いを志向したことで形勢の針は藤井竜王の方に触れました。このあたり、形勢を悲観していた豊島九段としては再度自陣に銀を投入して粘り続ける勝負手を逸した格好です。
 
優位に立った藤井竜王は、豊島九段の攻めをいなしながら着実にリードを広げます。細い攻めをなんとかつなごうとする銀打ちに対してふわっと飛車を自陣三段目に浮いたのが受けの決め手。こうなってみるとこの飛車の守備力が大きく、豊島九段の方から藤井玉に寄りつく手段がまったくありません。終局時刻は23時43分、最後まで形勢を譲らなかった藤井竜王が盤石の指し回しで勝勢を築いて豊島九段を投了に追い込みました。
 
これで勝った藤井竜王は6勝1敗となり、名人挑戦権争いにおける単独首位をキープしました。敗れた豊島九段は4勝3敗となって残り2戦に臨みます。▲永瀬拓矢王座―△藤井竜王戦、▲佐藤康光九段―△豊島九段戦を含む次局8回戦の一斉対局は、2月1日(水)に各地の対局場で予定されています。



水留啓(将棋情報局)

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