先手中飛車の快勝譜で里見女流王座が防衛に王手 第12期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局|将棋情報局

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先手中飛車の快勝譜で里見女流王座が防衛に王手 第12期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局

里見香奈女流王座に加藤桃子女流三段が挑戦する第12期リコー杯女流王座戦五番勝負は、第3局が12月13日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、97手で勝利した里見女流王座が通算成績を2勝1敗として防衛まであと1勝としました。

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■先手中飛車対一直線穴熊

先手となった里見女流王座は得意の先手中飛車に構えます。中飛車に対して急戦と持久戦の両方を使いこなす加藤女流三段は、本局では居飛車穴熊の作戦を採用しました。加藤女流三段は攻撃陣には一切手をかけず、攻めに使われることの多い右銀も囲いにくっつけて一直線に穴熊の完成を急ぎます。ここまでは両者の間で指された7月の清麗戦五番勝負第2局と類似した進行で、このあとどちらが工夫を見せるかに注目が集まりました。
専守防衛の構えを見せる加藤女流三段に対し、先攻を目指す里見女流王座は自玉の囲いを片美濃囲いで済ませたのち、飛車を4筋に転回して積極的な仕掛けを用意します。ここで本局における「里見女流王座の攻め対加藤女流三段の受け」という構図が浮き彫りになりました。里見女流王座が右桂を端に跳ねてさらなる攻めを見せたとき、2筋の歩を突いたのが加藤女流三段の用意していた改善策でした。これは先手からの桂跳ねを遅らせ、四枚穴熊の堅陣を目指す戦い方です。

■勝負を分けた形勢判断

後手の加藤女流三段が四枚穴熊を完成させたタイミングで里見女流王座が4筋に銀を進出して、ここから本局は本格的な戦いに突入します。後手としては素直に歩を打ってこの銀を追い返すのも有力でしたが、実戦で加藤女流三段は飛車を回って迎撃の姿勢を見せました。積極的な駒交換に持ち込めれば自玉の堅さが生きるという大局観で、おとなしく歩を打っていては主張点がなくなるという姿勢が見て取れます。
加藤女流三段は局後の感想戦で、守りの手が続く実戦の展開を悲観する様子を見せました。対する里見女流王座も同様に、指し手の方針がわかりやすいことから形勢に自信をうかがわせました。しかし、攻め続ける先手としても具体化な優位をつかむには繊細な攻め方が要求され、実際には形勢は互角を保っています。攻めを続ける里見女流王座が後手の金頭にたたきの歩を放った局面が、本局における厳密な意味での分岐点となりました。

■里見女流王座が攻め切って快勝

里見女流王座のたたきの歩を見た加藤女流三段は金を左にかわして応じましたが、結果的にはこの手を後悔することになりました。ここは金を右にかわして辛抱する手が優りました。この数手後に里見女流王座から5筋に歩を垂らす好手があり、先手の攻めが切れなくなったのが加藤女流三段の誤算です。歩を垂らす手に代えて、先手が自然な飛車回りを指していれば形勢互角ということも不運に働きました。
加藤女流三段の失着を見た里見女流王座は、ここをチャンスとばかりに攻めを加速させていきます。やがて交換で手にした飛車と桂を立て続けに後手陣の急所に打ち据え、自然な攻めで後手の穴熊を崩すことに成功します。自陣飛車を打って徹底抗戦を見せる加藤女流三段に対し、最後は里見女流王座が有無を言わさぬ寄せで後手玉を即詰みに討ち取って勝利を手にしました。感想戦で本局を振り返った加藤女流三段は、守勢に回った駒組みを反省しました。
これで今シリーズ成績を2勝1敗とした里見女流王座は、防衛まであと1勝に迫りました。注目の第4局は12月20日(火)に東京・将棋会館で行われます。

 


里見女流王座は2018年に女流王座戦3連覇を達成している(写真は棋士編入試験第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留啓(将棋情報局)

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