深夜の激闘を制して稲葉八段が佐藤康九段を破り3勝目 第81期A級順位戦|将棋情報局

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深夜の激闘を制して稲葉八段が佐藤康九段を破り3勝目 第81期A級順位戦

第81期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)5回戦は佐藤康光九段―稲葉陽八段戦が11月16日(水)に東京・将棋会館で行われ、144手で稲葉八段が勝利しました。この結果、今期順位戦の成績は勝った稲葉八段が3勝2敗、敗れた佐藤九段が0勝5敗となりました。

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■佐藤九段得意の角交換向かい飛車
先手となった佐藤九段は5手目に▲6六角と上がる意表の作戦を見せました。これは佐藤九段が4年ほど前からまれに採用している形で、角交換向かい飛車に組む狙いがあります。直後に後手から馬を作られる心配がないのがこの角上がりのメリットです。佐藤九段の主張を呑んだ後手の稲葉八段は、代償として1筋の位を取ることに成功しました。
駒組みが進み、やがて佐藤九段は振り飛車穴熊の堅陣に玉を囲いました。対して稲葉八段は自陣への角の打ち込みを最大限にケアしたバランスのよい布陣を採ります。対照的な布陣となった本局、佐藤九段は自陣の空いたスペースに角を打ち込まれる展開を、稲葉八段は飛車交換から玉を直接攻められる展開を警戒しながら慎重に指し手を進めていきます。

■形勢不明のねじり合い
6筋で桂交換が行われたあと、佐藤陣の空いたスペースに稲葉八段が持ち駒の角を打ち込んで本格的な戦いが始まりました。稲葉八段としてはこのまま佐藤九段の飛車を押さえこむことができれば思惑通りの展開です。そうはさせじと佐藤九段も自陣角の勝負手を放ち、この角を拠点に飛車交換を実現しました。
飛車交換が実現して佐藤九段ペースかと思われた本局の中盤戦ですが、稲葉八段も根性の自陣飛車を放って相手に楽をさせません。逆に稲葉八段としてはこの一瞬のピンチをしのげれば、佐藤九段の攻めの要の銀桂を根こそぎ奪う楽しみがあります。ここで佐藤九段がギリギリの返し技を見せて2枚の攻め駒を死守したことで、局面は形勢互角のまま終盤戦に突入していきました。

■踏み込みを欠いた佐藤九段
たがいに攻めては守り、守っては攻めのねじり合いを繰り返し、戦いは深夜を迎えます。薄かったはずの稲葉八段の玉は、気づけば金銀3枚に馬・飛車・桂・香がくっついた魔城に囲われていました。盤面の反対側、金銀3枚が密集する佐藤九段の要塞を稲葉八段がやっとの思いで崩し、118手目にして初めて王手をかけたころには時刻は0時を回っていました。奇しくも両者は対局中に「将棋の日」を迎えることになりました。
形勢はまったくの互角ながら、持ち時間を10分ほど残す稲葉八段は攻めの手を休めません。佐藤九段としてもいち早く攻め合いに出たいところでしたが、迫りくる一分将棋の秒読みに追われつつ、迷った挙句に守りの手を指す場面が続きます。勝つことよりも負けないことを優先した佐藤九段ですが、結果的にはここ数手での消極的な指し手が仇となって攻め合いに一歩出遅れる格好になりました。
最後は攻め合っての一手勝ちを読み切った稲葉八段が、佐藤九段の玉に確実な詰めろをかけて熱戦に幕を引きました。0時45分の終局後、両者による感想戦は1時間ほど続けられました。
次局6回戦では▲稲葉八段―△菅井竜也八段戦、▲永瀬拓矢王座―△佐藤九段戦が予定されています。


勝って名人挑戦に望みをつないだ稲葉八段(写真は第80期順位戦B級1組のもの 提供:日本将棋連盟)
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