研究に裏打ちされた対応力を発揮し藤井竜王が完勝 防衛に王手 第35期竜王戦七番勝負第4局 |将棋情報局

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研究に裏打ちされた対応力を発揮し藤井竜王が完勝 防衛に王手 第35期竜王戦七番勝負第4局 

藤井聡太竜王に広瀬章人八段が挑戦する第35期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は、第4局が11月8・9日(火・水)に京都府福知山市の「福知山城天守閣」で行われました。結果は95手で藤井竜王が勝ち、シリーズ成績を3勝1敗としました。

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■広瀬八段の定跡提示

角換わり相腰掛け銀の戦型に進んだ本局で、後手の広瀬八段はややマイナーな定跡を採用しました。局後、広瀬八段が「実戦例の少ない形に誘導した」と明かしたように、この変化は5年ほど前から細々と研究が進められてきた形です。後手としては右金を上がって先攻の構えを取ることで先手からの仕掛けを誘発し、手にした持ち駒で反撃していこうという構想です。広瀬八段の定跡提示に対し、先手の藤井竜王も桂跳ねに始まる猛攻を見せました。

藤井竜王の跳ねた桂はすぐに捕獲されてしまいますが、その代償として後手陣に作った馬で香を取り返せるので駒割のバランスは取れています。激しいやり取りが一段落した局面で、▲3五歩と突いて持ち駒の香の活用を見たのが広瀬八段の作戦選択に対する藤井竜王の答えでした。ここは自陣に香を打つ前例が多く、広瀬八段としてもこのあたりで事前の想定を外れたとのことでした。昼食休憩明けから局面は中盤の難所を迎え、長考の応酬が始まります。

■2筋突破をめぐる攻防

1日目の15時頃、藤井竜王が▲2七香と打った局面が本局のポイントとなりました。縦に重ねた香と飛の連携で2筋を突破してしまおうという単純な狙いながら、広瀬八段はこの攻めへの対応に悩まされることになります。1時間の長考でひねり出した桂打ちは苦心の対応でしたが、攻めに使いたかった桂を使わされており不本意の感は否めません。実際、広瀬八段は局後に「封じ手のあたりからはすでに指しにくい」と振り返りました。

広瀬八段が封じ手とした歩打ちに対して藤井竜王が飛車をかわして2日目の戦いが始まりました。3筋に飛を回った藤井竜王は方針を転換し、先に広瀬八段が打った桂をタダ取りする手を見せて後手の無理攻めを誘います。放っておくと駒損となる広瀬八段は歩の手筋を連発して先手陣を乱していきますが、藤井竜王も丁寧に面倒を見て崩れません。

■反撃を抑えて藤井竜王が制勝

形勢を悲観する広瀬八段は飛車を引いて馬取りとしましたが、この手を境に形勢の針は藤井竜王に触れました。感想戦では飛車は自玉の守り駒としてキープしたままじっと桂取りを受ける手が検討され、これならまだ大変とされました。実戦では、形勢よしと見た藤井竜王がスイッチを切り替えて攻め合いの姿勢を取ります。「と金の遅早」の格言通り、2筋に歩を打ったのが遅いようで速い攻めでした。

と金を作ってから数手後に打った銀取りの桂が決め手となり、本局における藤井竜王の勝勢が明らかになりました。先手の囲いも崩れており怖いところですが、藤井竜王は読みで不安を打ち消していきます。終局時刻は15時21分、攻防ともに見込みなしと見た広瀬八段が駒を投じての幕引きとなりました。一局全体を振り返ると、中盤の折衝で藤井竜王が手にした香と広瀬八段が手にした桂の働きの差が両者の明暗を分けた格好です。

藤井竜王が自身初の竜王防衛を果たすか、広瀬八段が混戦に持ち込むか。注目の第5局は11月25・26日(金・土)に福岡県福津市の「宮地嶽神社貴賓室」にて行われます。

タイトル戦での敗退の経験がまだない藤井竜王(提供:日本将棋連盟)

水留啓(将棋情報局)

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