【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2022年9月編|将棋情報局

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【試し読み版】編集部島田が綴る今月の藤井聡太 2022年9月編

お得で気軽に参加できる将棋大会『第6回 将棋情報局最強戦オンライン』11月13日開催! エントリー受付中 皆さんこんにちは。「虹を見たかったら、雨も我慢しなくちゃね」でおなじみの編集部島田です。

今回は将棋情報局ゴールドメンバーへのサービスの試みとして「編集部島田が綴る 今月の藤井聡太」の第1弾をお送りします。

タイトルの通り、島田が今月の藤井聡太竜王を振り返る、というものです。

藤井先生は毎月対局していますが、その将棋の内容を「観る将」の皆さんも含め誰でもわかるような形で記述しているものは少ない気がしました。

ここでは指し手の符号をなるべく使わず、将棋をストーリーとして描きつつ、かといって内容もきちんとわかるような形で藤井先生の将棋を語っていきたいと思います。時に島田の感情(藤井愛)が入ることもありますが、そこは大目に見てやってください(笑)

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棋王戦、ベスト8進出!

9月1日 久保利明九段戦
第48期棋王戦コナミグループ杯(主催:共同通信社)挑戦者決定トーナメント

■第1章 穴熊ダメ、絶対
久保九段と言えば、飛車を初期配置から左側に動かして(振って)戦う、振り飛車党のトップ棋士の一人。本局も飛車を左から4列目に動かす「四間飛車」を採用しました。

対して藤井竜王の取った作戦は「居飛車穴熊」。四間飛車の天敵と呼ばれる指し方で、玉を穴熊のように盤のすみっこに配置して金や銀でガチガチに固めるもので、穴熊が完成すればそれだけでかなり負けにくくなります。本局の藤井竜王は一目散に穴熊を目指しました。

「穴熊に囲いますよ。完成すればこちらが有利ですよ」(藤井)という感じです。

ただし、穴熊にも弱点があります。それは穴熊が完成するまでに仕掛けられてしまうことです。穴熊は完成したら鉄壁なのですが、城の建設に時間がかかる上に建設中は他の囲いよりもスキが多いのです。そして本局の久保九段はそこをついてきました。藤井竜王の穴熊が完成する寸前に攻撃を仕掛けてきたのです。

「穴熊ダメ、絶対」(久保)とばかりに怒涛の波状攻撃が始まりました。

■第2章 久保九段が優勢に
久保九段の仕掛けは奏功しました。藤井竜王はこう振り返っています。

藤井「仕掛けられてこちらの対応もいろいろ考えられるのかな、と思ったんですけど、ちょっといい指し方がわからなくて。本譜はあまりよくない順を選んでしまったのかなと思います」

仕掛けられた時は「何とかなるだろう」と思ったけど、意外にいい指し方がなかった、という感じでしょうか。

一方、久保九段は「中盤の入りから終盤の入りあたりまではまずまず指せたかなと思ってやってたんですけど」と手応えを感じていました。

穴熊の完成前に仕掛けられてしまったので藤井陣はバラバラ。そのまま押し切られてもおかしくない状況でしたが、悪くなってもそう簡単に決め手を与えないのが藤井竜王。
「いいとは思ったけど、なにをやっていいのか、わかりませんでした」と久保九段は振り返っています。

藤井竜王の受けに対して久保九段が寄せを発見できず、気が付けば久保九段の攻めは息切れ気味に。藤井竜王が有利になっていました。

■終章 一手耐えている
久保九段は攻めを続けますが、藤井竜王はその攻めがわずかに届かないことを見切っていました。観ている方からするとぎりぎりの受けに見えるので怖いのですが、藤井竜王はどこ吹く風で時間を使わずに、スッスッと駒を動かしていきます。

全然関係ないですけど、藤井先生の跳ねるような手つきが好きです。

最後の玉を引いた手も、ものすごく危ないように見えるのですが、藤井玉に詰みはありません。詰将棋を得意とする藤井竜王。相手玉を詰ます能力は将棋界随一ですが、自分の玉が詰まないように逃げる技術も一級品です。

藤井竜王いわく、「玉を引いた形で一手耐えているのかな、と思いました」。

藤井先生が「一手耐えているのかなと思った」ということは、「絶対に耐えている」という意味です(笑)

さぁ藤井竜王に攻めのターンが回ってきました。受けながら駒を蓄えていたため、久保玉に詰みが生じています。そしてその詰みを逃す藤井竜王ではありません。時間を使わずビシビシと指し進めて久保玉を即詰みに討ち取りました。

勝った藤井竜王は棋王戦では初めてベスト8に進出。勝ちまくっている藤井竜王がタイトル戦の中で唯一結果を出せていなかったのが棋王戦。今期はついにタイトル戦登場なるでしょうか。

藤井竜王のコメントは「棋王戦ではこれまでなかなか上に進むことができていなかったので、この機会を生かせるようにがんばっていきたいと思います」と、いつも通りの謙虚なものでした。素敵です。

王位防衛、タイトル10期獲得

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