菅井八段が死闘の末に永瀬王座を破る 第81期A級順位戦|将棋情報局

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菅井八段が死闘の末に永瀬王座を破る 第81期A級順位戦

渡辺明名人への挑戦権を争う第81期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、9月7日(水)にA級3回戦の永瀬拓矢王座―菅井竜也八段戦が行われました。結果は200手で菅井八段が勝利し、リーグ成績を2勝1敗としました。

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本局は後手番の菅井八段が中飛車に振り、永瀬王座は超速▲3七銀で対抗します。序盤は先手が一歩損の代償に、後手の飛車を押さえ込みに行く展開となりました。後手の飛車は歩越しの形になっているので使いにくい状態にあります。

後手は懸命に飛車を押さえ込みの網から脱出させようとしますが、先手はその間に桂得に成功しました。ただし押さえ込みの網を破る過程で、後手の金銀が前に出てきたので、全く主張がないわけではありません。

後手の金銀の連結を断つために跳ねた75手目▲7七桂に対し、△7六銀が強手です。銀のひもがなくなったので▲5四飛と金を取られますが、そこで一度△8三歩と自陣を補強してから▲6六金に△7七銀成と突っ込みます。▲同金と取られた局面は飛車金と角桂の交換で後手の駒損なのですが、玉の安定度は後手に分があります。数手後に△3六角と使えていなかった角を働かせることが出来て、徐々に後手ペースになっていったように見えます。

93手目、▲5一飛と敵陣に飛車を打ち込んだ永瀬王座はここで1分将棋となりました。対して菅井八段はまだ1時間以上残しています。ですがノータイムで打った△6一歩は危険な一手でした。ここでは△7一銀と打った方がより手堅かったのです。▲6一同銀成から清算されて後手玉に詰めろが掛かりました。対して先手玉を先に詰ませば話は早いのですが、100手目△2八飛の王手に対する▲6八角が好手で先手玉は詰みません。角の合い駒以外だといずれも詰んでしまいますが、この角打ちで逃れているのです。

菅井八段はやむなく自玉を受けましたが、今度は永瀬王座が攻める番です。自玉を端に追い詰められた菅井八段は千日手含みの順で頑張ります。これを永瀬王座が打開するかどうか。結果的に打開したのは正解なのですが、直後の119手目▲6二金では▲7一銀がまさったようです。△同玉▲6二金△8二玉▲7一銀△9二玉▲7二金の変化は後手に駒を渡すので怖いところもあるのですが、ギリギリ先手が残していたようです。実戦の▲6二金には△7一銀▲同金とさせてから△6八飛成▲同玉△3五角で王手飛車がかかりました。△7一銀▲同金の交換を入れないと、後手は王手飛車から先手の竜を抜いたときに▲7一銀と打たれて危なくなります。

以下は死闘が続きますが、172手目の△3六桂で菅井八段が抜け出したでしょうか。ここでは△5六桂と金を取ることも出来ますが、▲同角成とされると先手陣が手厚くなります。桂を逆に跳ねて先手陣の守備の要である竜に働きかけるのが好手でした。菅井八段はここでも1時間ほど残り時間があるのも大きいでしょう。

とは言え永瀬王座の185手目、▲6四馬も恐ろしい勝負手です。△同歩でタダですが、これでもう一枚の馬筋が後手陣に通りました。次の▲7一銀に△同玉なら馬筋を通した効果で後手玉はトン死します。実戦は銀打ちに△9二玉▲8四桂(これも△同歩は詰み)△9三玉で後手玉が詰まないことがはっきりしました。ちょうど200手目の局面で永瀬王座が投了し、菅井八段が白星を一つ先行させました。次戦のA級順位戦は9月12日(月)に藤井聡太竜王―糸谷哲郎八段戦が行われます。

白星を先行させた菅井八段

相崎修司(将棋情報局)

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