深い研究と見切りが生んだ会心譜 豊島九段が藤井王位を破り先勝 お~いお茶杯第63期王位戦第1局|将棋情報局

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深い研究と見切りが生んだ会心譜 豊島九段が藤井王位を破り先勝 お~いお茶杯第63期王位戦第1局

藤井聡太王位に豊島将之九段が挑戦する、お~いお茶杯第63期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)の第1局が6月28、29日に愛知県犬山市の「ホテルインディゴ犬山有楽苑」で行われました。結果は121手で豊島九段が勝利し、開幕戦を飾りました。

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■猛攻スイッチが発動

本局は振り駒の結果、豊島九段の先手で角換わりに進みます。序盤は豊島九段が9筋の位を取ったのに対し、藤井王位が右金を動かさないまま玉を入城したのがやや珍しい形。そしてその形に目をつけた豊島九段が、驚きの手順で戦いの主導権を握ります。

藤井王位が後手番ながら積極的に銀取りに桂を跳ね出した手を見て、豊島九段の猛攻スイッチが発動します。

まずは跳ね出した桂馬を食いちぎり、空いたスペースに飛車取りに角を打ち込みます。藤井王位が右金を動かさない形であることを咎めた攻め筋です。そしてすかさず「矢倉崩しの歩頭桂」の捨て駒を打ち込みます。そしてさらに、端で香を捨て、歩頭桂で作った拠点に飛車を打ち込み、その飛車も即座に捨てるという暴力的な猛攻を繰り出します。豊島九段は大きな駒損となりますが、敵陣に竜を作って藤井玉に厳しく迫ります。対する藤井王位も頑強に受けて竜を追い返し、ひと呼吸つきました。

■派手な応酬を経ても保たれたバランス

猛攻がいったん落ち着いた局面は、豊島九段の駒損ながら駒が目いっぱいに働いており、AIが示す形勢もいまだ互角。これぞトッププロ同士の戦いです。

ただし持ち時間には大きな差がついています。封じ手局面での消費時間は豊島九段が2時間7分、対して藤井王位5時間4分と、実に3時間ほどの違いがあります。ここまでをハイスピードで飛ばしてきたことからも、豊島九段の入念な研究がうかがえます。

■豊島九段、達人の踏み込み

2日目に入り、豊島九段の攻めがいったん落ち着き、藤井王位に攻めの手を指す順番が回ってきます。この貴重な反撃のターンで藤井王位は7筋の歩を突き捨てました。攻めの幅を広げようという、いかにも筋の一手。しかし、この手を藤井王位は悔やみました。

豊島九段が2時間7分の大長考の末、突き捨てを手抜いて一直線の攻め合いに向かったのが好判断。豊島九段は自らの切っ先がわずか一歩早く相手に届くことを見切っていました。と、書くのは簡単なことですが、この決断をするためには、数十手先の局面を見通して、互いの玉が詰むか詰まないかを正確に読まないとならないのです。トッププロの真骨頂と言える踏み込みです。

最後は藤井玉を長手数の即詰みに打ち取り、豊島九段は前期に続いて王位戦の開幕局を制しました。

藤井王位の2日制タイトル戦の連勝は12でストップです。第2局は7月13・14日(水・木)、北海道札幌市「ぬくもりの宿ふる川」で行われます。次局は藤井王位の先手番ですが、ここで藤井王位が巻き返すか。それとも豊島九段が後手番でもさらなる研究を披露して、リードを広げるか。七番勝負はまだ序盤ですが、早くも目が離せません。

大事な開幕戦を会心の内容で制した豊島九段(左)(提供:日本将棋連盟)

相崎修司(将棋情報局)

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