藤井将棋の強さが凝縮された一局! 藤井聡太三冠が竜王戦第1局を制する|将棋情報局

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藤井将棋の強さが凝縮された一局! 藤井聡太三冠が竜王戦第1局を制する

豊島将之竜王相手に逆転勝利で四冠獲得に好発進

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豊島将之竜王に藤井聡太三冠が挑戦する将棋界最高峰のタイトル戦、第34期竜王戦(主催:読売新聞社)七番勝負第1局が10月8、9日に東京都「セルリアンタワー能楽堂」で行われました。結果は123手で藤井三冠が勝利。タイトル奪取に向け幸先のいいスタートを切りました。


第34期竜王戦七番勝負の勝敗表

今年度はタイトル戦ラッシュにも関わらず、勝率が8割4分を超えるという驚異的な成績を残している藤井三冠。本局はその藤井将棋の強さが凝縮されたような一局になりました。藤井将棋の特徴、それは「劣勢時の辛抱強さ」と、「優勢時の踏み込みの良さ」という二面性です。

第1局のため行われた振り駒は、豊島竜王の振り歩先でと金が4枚。藤井三冠が先手番になりました。戦前の予想通り、戦型は相掛かりとなって局面が進んでいきます。

中盤でリードを奪ったのは豊島竜王でした。窮屈な藤井三冠の飛車に狙いを付け、角で飛車を入手することに成功します。藤井三冠は2枚の角で反撃しますが、豊島竜王の的確な対応によって2枚角が存分に働いているとは言い難い状況に追い込まれます。

ここで暴発することなく、辛抱強くチャンスを待てるのが藤井三冠。相手の攻めから事前に自玉を遠ざける▲5八玉、そして金取りを避けるための▲6六金という手にその特徴が良く表れています。

▲5八玉は後の▲4七玉につながった手。4七のポジションに収まった藤井玉は意外なほど耐久力がありました。また、この4七玉が後の寄せにも働くことになりました。

▲6六金は△4四桂の金取りから金をかわした手。7七の角の利きを遮るだけに指しにくさのある手ですが、このような苦しい場面で切り合いに行ってしまうのではなく、しっかりと我慢できるのが藤井三冠です。

76手目、豊島竜王は△7七飛成で飛車を切り、角を入手しましたが、この手が疑問。飛車を渡さずに△3六桂と跳ねて歩を入手し、飛車2枚の攻めを継続した方が良かったようです。

辛抱が実った藤井三冠は、ここから一気にギアチェンジ。▲7一飛と敵陣の狭いところに飛車を打ち下ろし、攻め合いに出ます。絶妙なタイミングでの攻守の切り替えです。

さらに数手進み99手目、▲4五歩と桂取りに歩を突き、△3六桂と跳ねてきたところで▲3五歩と打ったのが決め手。これだけなら相手玉を上から攻めただけに見えますが、藤井玉は3七の地点にいます。流れ弾に当たってもおかしくなく、心理的には指しにくい順ですが、このような局面で踏み込んでいけるのが藤井三冠。卓越した終盤力に裏打ちされた正確な攻めです。

以下も豊島竜王は粘りますが、藤井三冠は間違えません。しっかりと豊島竜王を寄せ切って、開幕局を制しました。

序・中盤で優位に立つと、そのまま正確無比な指し回しで押し切る将棋が多い藤井三冠。これは優勢な局面でも慎重になることなく、踏み込むべき場面ではしっかりと踏み込んでいく棋風によるものです。リードを守るために大事に指そうとすると、逆に綻びが生じて逆転につながるのが将棋というゲームの特徴ですが、藤井三冠には大事に指そうというという考えはなさそうです。

よって藤井三冠に勝つためには、序・中盤でリードを奪うことが重要になってきますが、そのような展開になっても簡単には勝たせてもらえません。リードを広げられないように背後からピッタリと追走され、少しでも緩手が出るとあっという間に抜き去られてしまうからです。まさに本局がそうだったように。

藤井三冠のプレッシャーを感じつつ、わずかなリードを保ったまま勝ち切ることは、実力者の豊島竜王をもってしても困難でした。

しかし、藤井三冠を相手にして、そのような勝ち方が最も期待できるのも豊島竜王と言えるでしょう。次局、豊島竜王は自身の研究をぶつけやすい先手番。どのような作戦を披露してくれるのか注目です。

竜王戦第2局は10月22、23日に京都府「総本山仁和寺」で行われます。豊島竜王が先手番をキープしてタイにするのか、それとも藤井三冠が後手番でブレイクして一気に連勝となるのか。大注目の戦いです。


逆転勝利で四冠獲得に向けて絶好のスタートを切った藤井三冠(提供:日本将棋連盟)

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