藤井聡太三冠が細い攻めをつなげて木村一基九段に勝利! 第80期順位戦B級1組5回戦|将棋情報局

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藤井聡太三冠が細い攻めをつなげて木村一基九段に勝利! 第80期順位戦B級1組5回戦

藤井三冠は4勝1敗の成績で3番手

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第80期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の5回戦、▲藤井聡太三冠(3勝1敗)-△木村一基九段(1勝2敗)戦が9月20日に東京・将棋会館で行われました。結果は87手で藤井三冠が勝利。4勝目を挙げました。


第80期順位戦B級1組リーグ表

他のB級1組の対局は16日に行われましたが、木村九段は15日に王座戦五番勝負第2局、藤井三冠は17日に棋王戦挑決トーナメントの対局があったため、本局は日にちをずらして実施されました。

藤井三冠が先手番で戦型は相掛かりに。藤井三冠は先手番では角換わりや矢倉も採用することがありますが、最近は相掛かりを連採しています。

強く横歩を取った木村九段に対し、藤井三冠は8・9筋から反撃。局面は一気に激しくなりました。

藤井三冠は△8五桂と跳ねてきた桂に▲2五飛で狙いを付け、△8四歩の受けに対して▲8七金と上がって飛車取りをかけます。飛車が逃げれば▲8六歩と打って桂を取ろうという狙いです。

木村九段は昼食休憩をはさんで53分の考慮で、△7九飛成と飛車を切って勝負に出ました。飛車で手にした銀を△7八銀と打ち込み、角金取りをかけて厳しく先手陣に攻め込んでいきます。

先手は角か金かどちらかは必ず取られてしまいます。しかし逆に言えば、1手ではどちらかしか取られません。そのことに着目して、「両取り逃げるべからず」という格言が将棋にはあります。逃げても逃げなくてもどうせどっちかは取られるのだから、逃げる分の1手を別のところで使おう、という教えです。

藤井三冠は40分考え、格言通りに▲7四歩と攻めの手を選択しました。角と金のどちらかしか取れない木村九段は金を選択。飛車と金銀の2枚換えで駒損ながらも、相手の成銀は自玉から遠ざかった一方、自らはと金を敵玉付近に作って藤井三冠好調です。

苦しい木村九段は粘りに出ます。せっかく手に入れた持ち駒の金を△3五金と受けに投入し、飛車取りをかけます。先手としては飛車をいったん逃がしておく手も有力だったようですが、藤井三冠はと金を捨てて持ち駒の飛車を敵陣に打ち込み、そして▲3五飛で飛車を切って最も激しい順に踏み込んでいきました。

そこから数手進んだ局面。木村九段の頑張りが功を奏し、盤上の先手の攻め駒は竜1枚になりました。後手玉は3三にいて不安定ながらも頑張れる形です。さらに次に△7八飛のような手で反撃に転じる狙いもあります。

ここで攻めの手が止まるようでは形勢が逆転してしまいかねないところで、藤井三冠は妙手を用意していました。それが3七の歩を相手の歩にぶつける▲3六歩突きです。

不安定な3三の玉を上部から攻めていこうというこの手が、攻めを継続させる好手でした。△3六同歩と取ってくれば▲3四歩のような叩きが生じますし、相手が無視してくれば▲3五歩と取り込んで攻めの拠点になります。これで先手の攻めが切れることはなくなりました。

竜も四段目に引き揚げ、何とか先手の攻めを食い止めようと粘る後手に対し、藤井三冠は3筋から巧みに攻略していきます。金と香の協力で木村玉の頭上から押さえつけるように攻めていき、香取りをかけられたところで決め手を放ちました。

それが▲2四金の空き王手。取られる寸前の香で王手をかけつつ、金で角取りをかけるこの手が痛烈でした。やむなく木村九段は香を取りますが、▲1三金で角を入手して先手が優位をさらに拡大します。

以下も不屈の闘志で粘る木村九段でしたが、藤井三冠の攻めは急所を突き続けます。そして藤井三冠が▲6五角と打ち、竜と成銀の両取りをかけたところで木村九段は投了を告げました。

藤井三冠がうまく攻めをつなげ、押し切ったように見えた一局でしたが、藤井三冠自身はずっと苦しいと思っていたと局後に明かしました。

「(△7九飛成の付近は)結構激しい変化が多いので、よく分からなかったですけど、難しいのかなと思っていました。(△7八銀に対して)▲7四歩は軽率な一手だったかなと思います。△8七銀成から△3四歩が予想以上に早い手だったので、その手順に対応する手が△7八銀のところで必要だったのかなと思います」

「△3五金と打たれた局面で、自信のある変化が分からなかったので、本譜進めたのですが、ただ△1三角まで進むと攻めをうまくかわされてしまって、こちらの7九角が残ってしまったので、ちょっときついのかなと思っていました」

「(香を入手するために)竜が9一に遠ざかってしまったので、こちらの攻めが細いという局面が続いていたと思います。▲2四金から角を取って、攻めがつながってきたかなと思いました」

先ほど決め手と表現した▲2四金の局面で、ようやく藤井三冠は良くなったと思ったとのことです。

この勝利で藤井三冠は4勝1敗の成績となりました。5回戦が終了した時点で、1位は5勝0敗の佐々木勇気七段。佐々木七段は藤井三冠と同時に昇級した、B級1組1期目の棋士です。2位は4勝1敗の千田翔太七段。藤井三冠とは同成績ですが、順位の差で上位となっています。

今後のB級1組の戦いについて問われた藤井三冠は「まだまだ先は長いですけど、一局一局を大事にしてやっていけたらと思います」とコメント。目の前の一局に集中するという、いつものスタンスを崩しませんでした。

一方、敗れた木村九段は1勝3敗と苦しい序盤戦になってしまいました。今後の戦いについて問われると、「精一杯、残り頑張ります」と前向きなコメントを残しました。


本局対局前の藤井三冠(提供:日本将棋連盟)

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