豊島将之叡王が迫力満点の追込みで藤井聡太二冠に逆転勝利! 第6期叡王戦五番勝負第2局|将棋情報局

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豊島将之叡王が迫力満点の追込みで藤井聡太二冠に逆転勝利! 第6期叡王戦五番勝負第2局

藤井二冠に焦りを生じさせた勝負手▲5四銀

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将棋のタイトル戦、第6期叡王戦(主催:株式会社不二家)五番勝負第2局、▲豊島将之叡王-△藤井聡太二冠戦が8月3日に山梨県「常磐ホテル」で行われました。結果は苦しい将棋を豊島叡王が161手で逆転勝利。シリーズ成績を1勝1敗のタイにしています。


第6期叡王戦五番勝負の勝敗表

第1局に続き、本局も角換わりの将棋に。戦型は両者の間で争われている、第62期王位戦第2局と同じ相早繰り銀となりました。

途中、王位戦と同一局面になるも、先に手を変えたのは藤井二冠でした。「王位戦は途中かなり苦しい展開になってしまったので、△4四歩のところで手を変えようとは思っていました」と語ります。

本譜の藤井二冠の指し回しは、王位戦と比べると積極的なものでした。△7五歩▲同銀△7六歩で銀取りをかけられた局面で、△4五歩と突き出して相手にも銀取りをかけたのです。これが前例のない新手で、豊島叡王の意表を突きました。「王位戦2局目は負けてしまいましたが、途中まではまずまずうまくいっていたので、もう1回(相早繰り銀を)指しました。ですが△4五歩と突かれた手に対して準備がなかったので、自信がない展開にしてしまったかもしれない」と振り返ります。

後手の4五歩を目標にして、豊島叡王は▲4六歩と突いていきます。藤井二冠は飛車を4筋に転回して応戦。守りの銀も繰り出していって、4筋で全面戦争が勃発しました。

激しく戦い、両者角と銀を持ち駒にした局面。手番を握っていた藤井二冠は△4九角と敵陣に角を打ち込んでいきました。対する豊島叡王も▲2六角と打っていきましたが、この手が失着。「途中からはっきり苦しくなったような気がしました。(▲2六角の前の)▲6八玉とした手とか、▲2六角と打った手とかで別の手のほうがよかったかもしれない」と豊島叡王。形勢の針は藤井二冠に振れました。

▲2六角は次の▲5三角成を狙った手ですが、その機会は訪れませんでした。藤井二冠は△3九銀と飛車取りに打ってから、△5八角成で角を切って金を入手し、△2七金と飛車角両取りをかけました。先手陣は飛車の打ち込みに弱い形のため、豊島叡王は飛車を逃がしますが、せっかく打った角を取られてしまいました。感想戦で検討されたのは▲1七角。こちらなら角に紐が付いているので話が違います。「(▲1七角なら)本譜よりはだいぶいいですよね。本譜、(▲2六角に対して)受けてくれないんじゃひどい」と豊島叡王は語ります。

本譜は駒の損得はないものの、豊島玉を危険地帯に引きずり込むことに成功した藤井二冠。攻め駒が少なく、攻めをつなげるのが難しそうな局面で、藤井二冠の手は盤の端に伸びました。今までは盤面中央で戦っていたのに一転、△9六歩と端を突いたのです。この手が好手でした。「△9六歩と突いて攻めがつながる形かなと思いました。そのあたり手の流れとしては悪くないかなというふうに思っていました」と藤井二冠もここでは手ごたえを感じていました。

ゆっくりしていられない豊島叡王は、まず▲3八金と銀取りに打って自陣を補強。そして飛車と持ち駒の角・銀を総動員して攻めていきますが、如何せん攻め駒が少なく、藤井玉には届かなさそうです。さらに飛車取りに香を打たれ、飛車の逃げ場がなくなってしまいました。豊島叡王、絶体絶命か!? と思われたその時、豊島叡王は驚きの勝負手を放ちました。

91手目、なんと豊島叡王は相手の歩の利きに▲5四銀と打ちました。△5四同歩▲同飛として飛車を助ける狙いですが、そのために貴重な銀を捨てるとは! 「▲5四銀のあたりはダメかと思いましたが、ほかにやりようがない。ちょっと無理攻めになってしまったかなという感じでした。銀もかなり苦しいと思ったんですけど、一番可能性があるかなと」と豊島叡王は無理攻めだったと振り返りますが、この手が本局の流れを変えたのは間違いありません。藤井二冠も大盤解説会場での振り返りで、「▲5四銀△同歩▲同飛は見えていない手順でした」と語っています。

この勝負手に対し、藤井二冠は本譜の対応を悔やみました。「▲5四銀△同歩▲同飛のところで、△8八と▲5五飛の取り合いは損をしたのかなと思います。一回銀を取られないように受けておくとかの方がよかったかなと思います。△8八とはやりすぎでした」と藤井二冠。本譜は銀取りを受けずに強気に攻めましたが、いったん手堅く受けておけば逆転劇は起きなかったかもしれません。

形勢は依然藤井二冠が優勢。しかし、豊島叡王の追い上げは迫力満点です。少ない攻め駒を最大限活用して、藤井玉に迫っていきます。藤井二冠も△6九銀、△5九角と王手の連続で豊島玉を寄せにいきましたが、この順を藤井二冠は後悔。感想戦では△6九銀に代えて△3一玉と一度受けておく手が検討され、「玉を寄っておくのが普通でしたね。本譜は追いすぎてちょっと……なかったですね……(苦笑)本譜だけはなかった気が」と自分に呆れていた様子でした。

そして116手目、ついに形勢が逆転します。本譜藤井二冠は△7八とで金を取りましたが、AI推奨の指し手は桂を取る△8九と。これなら優位を維持できていました。金よりも桂を持った方が先手玉に迫りやすかったのです。

本譜でも豊島玉は風前の灯火ですが、藤井二冠にあともうひと押しが足りない形となりました。その一瞬のチャンスを豊島叡王は逃しません。藤井陣の急所を突く攻めであっという間に藤井玉を受けなしに追い込みました。

もはや豊島玉を詰ますしかない藤井二冠。最後の王手ラッシュは14手も続きました。しかし豊島叡王はそれらすべてに正確に対応し、逃げ切ることに成功。有効な王手が続かなくなった局面で、藤井二冠は投了を告げました。

豊島叡王の追い上げに対し、本譜の藤井二冠の対応は焦りを感じさせるものでした。△8八との攻め合い然り、△6九銀~△5九角の豊島玉への迫り方然りです。どこかで冷静に自陣に手を戻しておけば、違った結末となっていた可能性が高いです。普段は正確無比な終盤力を発揮する藤井二冠ですが、それを狂わせる迫力が豊島叡王の指し手にはあったのでしょう。

▲5四銀の迫力ある勝負手から逆転勝利を収めた豊島叡王。これでシリーズ成績は1勝1敗のタイになりました。

大きな勝利を手にした豊島叡王は「内容的には結構押されているので、少しでもよくなるように頑張りたいと思います」と第3局の抱負を語りました。

一方、終盤で逆転されるという珍しい負け方をした藤井二冠。「3局目もすぐあるので、内容的にはしっかりと反省しつつ、気持ちは切り替えて臨めればと思います」と前を向きました。

勝者がタイトル獲得に王手をかける、本シリーズの山場になりそうな第3局は、8月9日に愛知県「か茂免」で行われます。


逆転勝ちで対藤井戦の連敗を3で止めた豊島叡王(提供:日本将棋連盟)

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