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『令和3年度版将棋年鑑』棋士アンケート ~自分だけが知っている他の棋士の素敵な一面は?~

棋士名鑑のアンケートをご紹介!

初心者歓迎のオンライン大会『第5回 将棋情報局最強戦オンライン』8月14日開催! みなさんこんにちは。「我思う、故に我あり」でお馴染みの編集部島田です。

好評につき第2弾!ということで『令和3年版将棋年鑑』の棋士アンケートを紹介したいと思います。



今回取り上げる質問は以下です。
 
Q.自分だけが知っている他の棋士の素敵な一面を教えてください。

棋士を最もよく知っているのは棋士。しのぎを削る敵として、時には仲間として、長い間相対しているからこそわかる魅力があるはず。それを教えてもらおうという質問でございます。

今回も例によって回答の中から私的に面白かったものをいくつか紹介したいと思います(安定の自分本位スタイル)。

では、早速見てみましょー!

永瀬拓矢王座の答え
藤井二冠の謙虚で素晴らしい人格

―はい。知ってました。藤井二冠が謙虚で素晴らしい人格の持ち主であることも知ってましたし、永瀬先生がその魅力に惚れ込んでいることも知ってました。でも安定の回答、ありがとうございました。


石田直裕五段の答え
松尾八段は酒の席もダンディー

―やはり。Barが似合う棋士、松尾先生。最近Twitterを始められたようです。素敵です。


佐々木大地五段の答え
増田康宏くんの家はおしゃれで広い

―家行ったことあるんですね。仲良し。


折田翔吾四段の答え
学生時代、斎藤八段が夜行バスで寝ずに詰将棋を解いていた。自分は寝ていた

―さすが詰将棋を愛している男。私も100%寝ます(笑)


千葉涼子女流四段の答え
千葉幸生七段。子どもに対して辛抱強く接する

―将棋年鑑を通じて旦那様に感謝していくスタイル。素敵です。


羽生善治九段の答え
小堀清一先生は深夜の終局後に、残っていた奨励会員にジュースや菓子パンを配っていました

―小堀先生は1912年生まれ。1996年にお亡くなりになった棋士。72歳(!)で九段に昇段、その2年後の順位戦が現役最後の戦いになりました。なんとその時、当時15歳の羽生善治四段と対戦しており、午前0時33分、159手に及ぶ熱戦の末、敗れたという記録が残っています。

羽生先生のこの回答は恐らくその時のものでしょう。1986年8月26日のことです。15歳の超新星と現役生活最後を迎えた大棋士の一瞬の交錯。その時のエピソードを50歳になった羽生先生が、今将棋年鑑に記してくださるとは。胸が熱くなります。
この一つの回答を掲載できただけでも今回の将棋年鑑、価値がありました。

このように、自分の若手時代、修業時代のことを答える方は多かったです。
他の棋士の回答を見てみましょう。


中村太地七段の答え
奨励会時代に、仲間の奨励会員と定食屋でご飯を食べていたら島九段がいらしていました。ご挨拶だけしたのですが、いつの間にか我々の分のお勘定もして店を出られていたこと。その流れが自然であまりにもカッコ良かったです

―いや、島先生カッコよすぎ。「え? え? えーーー!!」ってなるやつですね。こんな大人になりたいものです。


大橋貴洸六段の答え
奨励会時代から研究会で教えていただくなど、大変お世話になった先生の1人に、牧野光則六段がいます。牧野先生は、挨拶すると、軽く右手を挙げて「よっ。」と返してくれます。この「よっ。」を見ると、ああ牧野先生だなぁと安心します

―いい! もうすごくいい。マイナビ女子オープン一斉予選からすっかり大橋先生の素晴らしさに魅了されています。この短い回答の中で、情景が目に浮かぶような文章。お二人の素晴らしい関係が伝わってきます。

以上、「修業時代系」の回答でした。続いては「谷川先生系」です。谷川先生クラスになると一人で一ジャンルになります(笑)


神谷広志八段の答え
かなり昔、谷川さんとテレビ棋戦で大差になってしまった。全駒も覚悟したが、攻め合いで一手違いにしてもらい、感謝しながら投了した

―かっこよ!対局相手に感謝されるって、どんだけすごいんですか。谷川先生の実力と人間性のなせるワザですね。


村田智穂女流二段の答え
谷川先生とイベントの実行委員をさせて頂いた時、張り切りすぎて少しでも早く送ろうと、夜中にパソコンメールに修正書類などを送ったら、「あまり遅くなりすぎないよう、夜はゆっくり休んでくださいね」とお気遣いのメールをいただきました

―かかかかっこよ!何がかっこいいって、谷川先生自身も起きているわけですよね。それでいて相手の体調を気遣う優しさ。こういうことができる紳士になりたいです。

以上、「谷川先生系」でした。だいぶ長い記事になりそうな気がしてきたんですが、みなさんついてきてくださってますでしょうか?(笑)

いったん深呼吸して、次いってみましょー!
次は「言ってるあなたも系」です。

何やねんそれ、って感じだと思いますが、だまされたと思って次の回答をお読みください。


高見泰地七段の答え
クールに見えて、後輩想いでとても優しい(阿久津八段)。心配になるほど情に厚く、性格が良い。周りだけでなく自分を大切にして、幸せになってほしい(佐々木大地五段)

―優しい。誰が優しいって高見先生が優しいですよね。こういう人の優しさに気づけてる時点であなたが優しい。泣けてきますね。

これが「言ってるあなたも系」です。もう一人紹介させてください。

及川拓馬六段の答え
慎一さんは、誰かのために自分の時間を費やせる

はい。佐藤慎一先生が優しいことは私も知ってます。でも及川先生もめちゃくちゃ優しい先生で、まさに誰かのために自分の時間を費やされてるんじゃないでしょうか。こういう優しさに気づけるってことが素晴らしいです。

以上、「言ってるあなたも系」でした。次が最終テーマになります。その名も「スリッパ系」です。まずは次の回答を見てください。


上野裕和六段の答え
藤井二冠が対局中、お手洗いでスリッパを揃えているのを見たことがあります

―出ました。永瀬拓矢王座以来の藤井聡太二冠登場です。対局中という最も切羽詰まった状況にもかかわらずスリッパを揃える藤井二冠。やはり素晴らしいお方です。

これだけなら「なるほどそうか」で終わっていたんですが、驚くべきことにこの「スリッパネタ」には続きがありました。皆さんご存じの通り棋士名鑑は段位順に並んでいます。上野先生は六段ですが、六段でもう一人スリッパに言及した方がいたのです。


伊藤真吾六段の答え
羽生九段と稲葉八段がトイレのスリッパを整えていたこと

―なんと!! 羽生先生と稲葉先生もスリッパを!いや、素晴らしいですね。藤井二冠だけでなく、羽生先生、稲葉先生と、トップで活躍されている先生がこんな素晴らしい姿勢を見せてくれるなんて。将棋界はいいところです。



・・・って、これで終わりだと思うじゃないですか。終わらなかったんですよ、スリッパ物語は。五段まで目を通したその時、私の目にまたその単語が飛び込んできたのです。


池永天志五段の答え
対局室のフロアやトイレのスリッパを、綺麗に全部揃える

―え? ん? どういうことでしょう。この池永先生の回答には対象の先生の名前が記されていません。これは書き間違いか?そう思ってもう一回質問を思い出してみましょう。質問はこうでした。

「Q.自分だけが知っている他の棋士の素敵な一面を教えてください」

…そうか!!「他の棋士」という言葉で、池永先生は「ある特定の棋士」ということではなくて「棋士全般」を指していると思われたんですね!

つまり、池永先生の回答は
(棋士はみんな)対局室のフロアやトイレのスリッパを、綺麗に全部揃える

ということになるんですね!

わかりました。この3つ目の回答が出たことで点と点が線でつながりました。
つまり、対局室のフロアやトイレのスリッパをそろえるというのは、多くの棋士が実践している伝統なんですね。

それが羽生先生から稲葉先生、そして藤井先生にまでつながっている。

そしてスタートになっている羽生先生はその精神を15歳のとき小堀先生に教わったんでしょう。

全部つながりました。

今、将棋の対局中継は生配信されていますけど、対局室に入る前のフロアやトイレに行った時は見ることができません。その見えないところの棋士の皆さんの素晴らしさを知ることができたということで、この質問には大きな意味がありました。良かったです。
・・・期せずして壮大なストーリーになってしまいました(苦笑)。


こんな風に棋士アンケートをある質問に着目して横断的に読むと、こんな風に新しい発見があるかもしれません。質問は20個ありますので、他にもこういうことはあると思います。

ぜひ皆さんもご自身なりの楽しみ方で将棋年鑑の棋士名鑑をご堪能いただければ幸いです。


ここまで読んでいただいてありがとうございました。


(完)


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