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用意周到な序盤作戦で永瀬拓矢王座が羽生善治九段に快勝! あまりにも早い端歩突き捨ての意味とは

永瀬王座は3勝0敗、羽生九段は3勝1敗の成績に

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お~いお茶杯第62期王位戦(主催:新聞三社連合)の白組、▲羽生善治九段(3勝0敗)-△永瀬拓矢王座(2勝0敗)戦が4月14日に東京・将棋会館で行われました。無敗同士の天王山の戦いとして注目された一戦は、80手で永瀬王座が勝利。2期連続の王位リーグ優勝に向けて大きく前進しました。

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第62期王位戦のリーグ表

相掛かりの将棋となった本局は、永瀬王座が序盤から工夫を見せます。9筋の端歩を早々に突き捨てたのがそれで、狙いはすぐに明らかになります。

羽生九段が▲4六歩と突いて、次に▲4七銀と上がって好形に組むのを目指したのに対し、永瀬王座は先の突き捨てを生かして△9六歩と歩を垂らしました。好きなタイミングで端攻めを行うための素早い端の突き捨てだったのです。

この歩を放置すると端攻めが厳しいとみた羽生九段は、香で歩を取りました。それに対する永瀬王座の△7四角が継続手。9六の香取りと、遠く3八の銀に狙いを付けた一石二鳥の一手です。

さらに永瀬王座は9筋に歩を垂らした後、飛車を切って角を入手して、と金作りに成功。優位に立ちました。

羽生九段は3筋から反撃に転じ、飛車を2一に打ち下ろします。次に厳しい狙いのある攻めでしたが、永瀬王座はその余裕を与えませんでした。

△1五角が決め手となる痛烈な一撃。7四の角と合わせて2枚の角が、羽生陣ににらみを利かせます。羽生九段は飛車取りを飛車をかわして受けましたが、永瀬王座は1五の角をばっさりと切って、一気に羽生玉を追い詰めます。

以下も羽生九段は懸命に粘りましたが、永瀬王座の寄せは正確でした。7四角も切り飛ばし、飛車を打ち込んで詰めろ、詰めろで迫ります。最後は受けが利かなくなった局面で羽生九段の投了となりました。

本局で最も存在感を示したのは7四角です。この角が羽生陣攻略の要の駒となりました。では、なぜこの角がそこまで働いたのかと言うと、羽生九段が▲4六歩と突いたために打った角の利きが羽生陣にまで通る状態になっていたからです。単純な9六の香取りだけだと本譜ほどの威力は発揮できませんでした。

しかしながら、先手としては▲4六歩が突けないとなると、陣形を発展させることが困難になります。そこが永瀬王座の早い端歩突き捨ての狙いだったのでしょう。突き捨てを入れておくことで、△9六歩~△7四角を用意し、先手に▲4六歩を突かせにくくする。永瀬王座の用意周到な準備を感じる一局でした。

本局は永瀬王座の見事な指し回しが光りましたが、今後の先手の改良策に注目です。角を打たせても大丈夫とみて▲4六歩をこれからも突くのか。それとも△9六歩を取らないのか。はたまたもっと前で変化するのか。前例を踏まえて、定跡がどのように進歩するのかに着目する、というのも将棋の楽しみ方の一つです。

全勝者対決を制した永瀬王座は3勝0敗の成績となりました。自身のほかに無敗はいなくなったため、残りの佐々木大地五段戦、近藤誠也七段戦を2連勝なら白組全勝優勝、1勝1敗なら最低でもプレーオフ進出となります。

前期は紅組で優勝しながらも、挑戦者決定戦で藤井聡太七段(当時)に敗れた永瀬王座。藤井七段は勢いそのままに王位を獲得し、現在は二冠です。永瀬王座は今期こそ挑戦権を獲得し、藤井二冠とのタイトル戦に臨むことができるでしょうか。

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リーグ優勝に大きく前進した永瀬王座

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