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斎藤慎太郎八段が執念の逆転勝ちで先勝 渡辺明名人を破る 第79期名人戦七番勝負第1局

斎藤八段は179手の大激闘で名人戦の初陣を飾った

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渡辺明名人に斎藤慎太郎八段が挑戦している将棋のタイトル戦、第79期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)第1局が4月7・8日に東京都「ホテル椿山荘東京」で行われました。結果は179手の激闘の末、斎藤八段が勝利。初の名人戦で幸先のいいスタートを切りました。

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第79期名人戦七番勝負の星取表

本局の1日目は、千日手が心配されるほどの膠着状態となりました。

先手の斎藤八段はバランス重視の土居矢倉に組んだ一方、後手の渡辺名人は銀矢倉にさらにもう一枚金をくっつける鉄壁の囲いを構築。渡辺名人の作戦は玉を固めるだけ固めて、ひたすら待機するというものでした。先手が仕掛けてくれば、カウンターを決めようという狙いです。

斎藤八段は角や金を自陣で細かく動かし、仕掛けのチャンスをうかがいます。渡辺名人は初志貫徹で金の横移動で待機、さらにチャンスと見て穴熊にまで組み替えました。

そして2日目の午前中、斎藤八段がついに仕掛けていきます。持ち時間を相手より多く使っている上に、先手番で千日手では不満とみてのものでしょう。しかし斎藤八段は局後に、「仕掛けに苦労したので、プランがなかったというか、あまりうまくいかなかったかな」とすでに苦しい形勢と感じていたと明かしました。

実際、この仕掛けの反動は大きく、渡辺名人のカウンターが炸裂します。桂と銀の交換で駒損ながら、と金を作ることに成功。相手玉の盤上右辺への脱出をと金で防いだ後に、今度は8筋から斎藤玉に襲い掛かります。

角をばっさりと切って継ぎ歩攻めを繰り出した渡辺名人に対し、ここから斎藤八段の執念の頑張りが始まります。まずは▲6九角と受け一方の自陣角を放ちます。その後働いていなかった飛車も守りに参加させ、徹底抗戦です。

渡辺名人の攻めは止まりません。相手の守り駒をはがしながら着実に迫っていきます。心が折れてしまいそうな局面ながらも、斎藤八段は自陣に金銀を次々と打ち付けていきます。そして相手の攻めの間隙を縫って、相手の鉄壁の穴熊を崩すための準備を進めていきました。

ここまで優位に進めてきた渡辺名人でしたが、136手目に岐路を迎えることになります。攻め続けるか、一旦受けに回るか。AIの評価値的にはどちらでも問題なかったようですが、人間同士の勝負という観点ではここが分岐点だったようです。

渡辺名人は角を自陣に引き付ける受けの順を選択しました。しかし、「寄せにいかないといけなかった」と局後に後悔のコメントを残しています。

本譜は斎藤八段に反撃のチャンスが回ってきました。桂2枚で穴熊の金銀を削ることに成功。とてつもなく堅かった穴熊が、ついに馬1枚だけにまで弱体化しました。相手玉が見えてきたので、ついついそのまま攻めを継続したくなるような局面ですが、斎藤八段は一転、冷静に自玉の受けに回ります。この辛抱強さが本局の大逆転を生んだ要因です。

評価値上の形勢は依然渡辺名人が良し。しかしながら、これまでは一切自玉を見ずに攻めに専念できたのに、もはや自玉は裸同然。攻守に気を使わなければならなくなり、ミスが出やすくなります。

そして、斎藤八段に馬と成香の両取りをかけられた手に対する、渡辺名人の158手目の応手が敗着となりました。この手を境に斎藤玉は鉄壁に。そしてあっという間に渡辺玉を受けなしに追い込んでしまいました。そして22時1分、斎藤八段の179手目を見て渡辺名人が投了。激闘に終止符が打たれたのでした。

本局は途中までは完全に渡辺名人の勝ちパターンでした。玉を固く囲って、細い攻めをつなげていくという得意の展開。そこから逆転勝利を収めた斎藤八段の指し回しがあまりにも見事でした。

どんなに苦しくても、自陣に駒を投入し続けて自ら崩れない頑張り。そして光明が差したように見えた局面でも、慌てずに自玉周りの傷を消す冷静さ。斎藤八段の底力を見ました。

この七番勝負、開幕局を制した斎藤八段が一歩リードしたのは間違いないですが、その差はわずかと筆者は見ます。

先手番が有利とされている現代将棋。特にトップレベルの対局ではそれが顕著です。かなり意地の悪い言い方をすれば、斎藤八段はその先手番をキープしただけとも言えます(逆に言えば、この将棋を落としていたら1敗以上の重さがあったということです)。さらに相手はタイトル戦で番勝負全体を考慮して、綿密な作戦を組み立てることで知られる渡辺名人です。先後が決まった2局目以降は、周到な準備をして臨んでくるでしょう。

第2局は4月27・28日に福岡県「麻生大浦荘」で行われます。ここで斎藤八段が渡辺名人の先手番をブレイクし、一気の連勝を決めるのか。それとも渡辺名人が先手番をキープし、1勝1敗の振り出しに戻すのか。大注目です。

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激闘を終えた直後の斎藤八段(提供:日本将棋連盟)

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