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遅咲きの苦労人木村一基王位に若き天才藤井聡太七段が挑戦 第61期王位戦七番勝負が7月1日に開幕!

最年長初タイトル獲得記録保持者の木村王位VS最年少タイトル獲得記録記録に王手をかける藤井七段 年の差なんと30歳の対決

将棋のタイトル戦、第61期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合)が7月1、2日に愛知県「ホテルアークリッシュ豊橋」で開幕します。初の防衛戦に臨む木村一基王位に挑戦するのは、17歳ながら最強と言っても過言ではない挑戦者藤井聡太七段です。様々な記録をどんどん塗り替えていく藤井七段とは、好対照な棋歴の木村王位の歩みを振り返ります。

 

【大器晩成の木村一基王位】

1973年6月生まれの木村王位が奨励会に6級で入会したのは小学6年生のとき。そこから順調に昇段を重ね、17歳、高校2年生で三段リーグに参加。しかし、そこからが苦難の道のりでした。

初参加の第8回三段リーグでは7勝11敗の成績で、参加者26人中24位に終わります。初めて勝ち越したのは第11回のとき。その後、第14回からは毎回2桁勝ち星をあげるものの、なかなか昇段することができませんでした。ようやく四段昇段を決めたのは、14勝4敗の成績を収めた第20回三段リーグ。実に13期、6年半の月日が流れ、デビューは23歳とかなり遅いスタートとなりました。

しかし、そこから木村王位は勝ちまくります。デビュー2年目にC級2組を9勝1敗の成績で昇級。98年度の将棋大賞新人賞を受賞します。翌99年度は勝率1位賞を受賞。さらに2001年度は勝率1位賞、最多勝利賞、最多対局賞を獲得しました。02年度の第33回新人王戦で棋戦初優勝を果たし、残るはタイトル挑戦、獲得です。

木村王位の初タイトル挑戦は、05年度の第18期竜王戦でした。このとき木村王位は32歳。対するは21歳の若きタイトル保持者、渡辺明竜王でした。この挑戦は木村王位の0勝4敗のストレート負け。苦い初挑戦となってしまいました。

その後08年度の第56期王座戦で羽生善治王座に挑戦しましたが、ここでも0勝3敗で敗れてしまいます。

 

【なかなか届かない「あと1勝」】

タイトル獲得のビッグチャンスが到来したのは、09年度でした。この年は第80期棋聖戦で羽生棋聖に挑戦。2勝1敗でタイトル獲得まであと1勝に迫るも、そこから連敗で敗退。さらに深浦康市王位に挑んだ第50期王位戦では開幕から3連勝。ついにタイトル獲得かとファンは誰しもが思ったはずです。ところがここから悪夢の4連敗。棋界2度目の3連勝から4連敗となってしまいました。

その後しばらく挑戦から遠ざかり、次の挑戦は14年度の第55期王位戦でした。しかし、ここでも2勝4敗1持将棋で羽生王位に敗れます。2年後の第57期王位戦でも羽生王位に挑戦。3勝2敗でタイトル獲得まであと一歩としながら、連敗でここでも届きませんでした。

第80期棋聖戦で2局、第50期王位戦で4局、第57期王位戦で2局。木村王位は勝てばタイトル獲得の一局を8度迎え、すべて敗れてしまったことになります。第57期王位戦で敗れたあと、木村王位は「棋士としての終活を考えるようになりました」(将棋世界2019年12月号「木村の二十一秒 不撓の河を渉れ」より)という心境だったそうです。

 

【百折不撓の精神で初タイトル】

しかし、木村王位はそこで折れてしまいませんでした。ソフトを使用した最先端の研究を開始。将棋に向き合う時間を増やしました。

その努力が実り、第60期王位戦の挑戦者決定戦で羽生九段を破ってタイトル挑戦を決めます。相手は豊島将之王位。七番勝負は第5局時点で木村王位の2勝3敗。カド番に追い詰められます。しかし、そこから2連勝でついに念願の初タイトルを獲得したのです。この七番勝負で現れた将棋はどれも定跡が完成されていない最先端の形ばかり。29歳のタイトル保持者に負けない研究量が遺憾なく発揮されました。

46歳での初タイトル獲得は、これまでの37歳を大幅に更新する最年長記録です。

終局直後のインタビューで木村王位は、「今日はうまく指せたと思います」、「うれしいです」と素朴な感想を述べ、その後「前回の王位戦のとき(2016年の第57期王位戦七番勝負)、これが最後のチャンスだという気持ちで戦っていました。もうタイトルには縁がないものだと思っていたので……。(結果を出せたのは)なぜかは分かりませんが、一生懸命、無我夢中でやった結果だと思います」と喜びを語りました。

 

【初防衛戦の相手は好対照な藤井聡太七段】

あれから早くも1年。木村王位の初防衛戦がいよいよ始まります。挑戦者は藤井七段です。藤井七段は10歳で奨励会に入会し、14歳2カ月で四段昇段を決め、史上最年少棋士。その後も数々の記録を更新して、今回の王位戦七番勝負はすでに2つ目のタイトル挑戦です。初挑戦の棋聖戦では、渡辺棋聖をなんと2勝0敗で追い詰めています。今の藤井七段の年齢のときには、木村王位はまだ奨励会三段でした。

年の差は30歳。全く異なる棋歴を歩んできた両者の対決が、いよいよ実現します。両者はこのタイトル戦が初対局。若き天才の攻めは、「千駄ヶ谷の受け師」の異名をとる木村王位に通用するのか。注目です。

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好対照な歩みがタイトル戦で交差。木村一基王位VS藤井聡太七段(藤井七段の写真提供:日本将棋連盟)


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