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データで見る最新将棋事情 初手割合と先手勝率編

2019年度も▲7六歩は採用率5割を切る。▲2六歩は高止まり傾向

2019年度に行われた、将棋の棋士・女流棋士の公式戦は3,000局以上です。ここではそれらの対局を数字の観点で俯瞰していきます。今回は初手割合とその勝率を調べました。データは『平成31年・令和元年版 将棋年鑑2019』(発行:日本将棋連盟)と、将棋年鑑編集部が使用しているデータベースを活用しております。

将棋の初手の採用率トップ2は大昔から▲7六歩と▲2六歩です。しかし、かつては▲7六歩の採用率が圧倒的に高く、7割以上が当たり前でした。

しかし、数年前からその傾向が激変します。2015年度は70.4%あった▲7六歩の採用率が、16年度は66.1%、17年度は56.0%と年々急落。そしてついに18年度には48.3%と、5割を下回ります。代わりに採用率が急上昇したのが▲2六歩で、こちらは18年度は42.5%。▲7六歩に迫る勢いです。

それでは19年度はどのような結果だったのでしょうか。以下は初手の採用割合と、その際の先手勝率をまとめたものです。

初手   採用率  勝率
▲7六歩 47.2%  0.518
▲2六歩 42.5%  0.544
▲5六歩 6.7%   0.506
▲7八飛 2.9%   0.465
その他  0.7%   0.542

▲7六歩の採用率はわずかではありますが、19年度も下落しました。▲2六歩は相変わらず高い水準です。3位、4位にランクインしたのは初手から振り飛車を明示する▲5六歩、▲7八飛でしたが、上位2つとは大きく差が開いています。
では、なぜここまで▲7六歩の採用率が減ってしまったのでしょうか。その要因は勝率にあると考えられます。
16年度から18年度の初手採用率と勝率は以下の通りです。また、参考としてその年度の先手勝率も記載します(カッコ内は勝率を表す)

初手   18年度    17年度    16年度
▲7六歩 48.3%(0.509) 56.0%(0.505) 66.1%(0.514)
▲2六歩 42.5%(0.557) 36.0%(0.553) 28.9%(0.532)
先手勝率 0.533     0.529     0.522

ご覧のように、▲7六歩の勝率は一度も▲2六歩を超えていません。そればかりか先手勝率をも下回っています。19年度の先手勝率は0.527だったので、その傾向は昨年度も継続しています。一方、▲2六歩は常に高い勝率を残し続けています。

また、戦型という観点からみると、相居飛車の基幹戦法だった矢倉の激減が、▲7六歩の採用率減少の大きな要因と考えられます。16年度から17年度は、ちょうど左美濃急戦をはじめとする後手の速攻が台頭してきた時期。先手矢倉はそれらに苦戦を強いられ、対局数が大きく減りました。居飛車党が矢倉を指さないのであれば、初手に▲7六歩と突く必要はありません。それよりも相掛かりの含みや、振り飛車・雁木対策として▲2六歩△3四歩▲2五歩といきなり伸ばしていく含みがある、▲2六歩のほうが勝ると考えるのも納得です。

20200520.jpg初手の割合と先手勝率。高い勝率を残している▲2六歩の急増と、それに伴う▲7六歩の減少が見て取れる


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