2020.03.10
服部慎一郎三段、谷合廣紀三段の四段昇段インタビュー! 第66回奨励会三段リーグ
共に次点持ちの実力者が四段昇段。個性ある将棋を指したいと意気込み語る
第66回奨励会三段リーグ最終日が3月7日に行われました。三段リーグは将棋の棋士になるための最終関門。10月から半年に渡り、30人の三段が2つの四段昇段枠をめぐって戦いを繰り広げました。
西山朋佳三段が女性初の四段昇段を達成するかが注目された今期でしたが、昇級枠を射止めたのは、服部慎一郎三段と谷合廣紀三段でした。
最終日を13勝3敗で迎えた谷合三段は最終戦に敗れて14勝4敗。12勝4敗だった服部三段は2連勝で同じく14勝4敗の成績でゴール。リーグ順位が上の服部三段が棋士番号322、谷合三段が棋士番号323で4月1日からプロデビューを果たします。
服部三段は富山県出身の20歳。2013年に奨励会に入会しました。昨年の10月には奨励会員枠で出場した、第9期加古川青流戦で決勝に進出。三番勝負で1勝2敗と健闘しました。
谷合三段は東京都出身の26歳。2006年に奨励会入会です。奨励会員として出場したプロ棋戦では14勝14敗と、互角の成績を残しています。
全対局終了後には昇段を決めた両者の記者会見が行われました。
【服部三段へのインタビュー】
──今の気持ちは?
三段リーグではあと1歩のところで昇段を逃してきたので、実感がまだわきません。
(服部三段は初参加の第61期でいきなり14勝4敗の成績をあげるも次点。その後も11勝、10勝、12勝と安定した成績を残していた)
──2番手で最終日を迎えた心境は?また、どんな戦いができたか
いつも昇段しようとすると、力が入ってしまうので、いい将棋を指そうと思っていました。2局とも苦しくなったが、持ち味の粘りでなんとか勝つことができました。
──4月からプロになる。目標は?
定跡にはとらわれない、個性あふれる将棋を指したいです。タイトルホルダーになるのが夢。
AIが示す手を指す人が多いと思うが、自分は自分の考えた手で、その場で思いついた手をどんどんやっていきたいです。
──目標・対局したい棋士は?
山崎先生と対局してみたいです。自分と似ているわけではないが、山崎先生も個性豊かな将棋を指される。僕も山崎先生と自由な将棋を指したい。(自身と棋風が似ている?)そうですね、そういうと山崎先生に多分怒られると思うんですけど(笑)
【谷合三段へのインタビュー】
──今の気持ちは?
嬉しいです。
──最終日対局前で次点は確定していた。どんな気持ちで迎えたか?
フリークラス入りは確定していたので、気は楽だったが、いつもと変わらない将棋を指そうと心がけてやりました。いつも通りの将棋が指せました。(2戦目は残念な結果だったが?)緩んだつもりはなかったが、負けてしまいました。最後は勝って決めたかったので、そこは残念です。
──プロになってからの目標は?
大学院に通っている特殊な立場なので、自分にしかできないことで将棋界に貢献していければと思っています。
(谷合三段は東京大学大学院の博士後期課程1年生。著書に『Pythonで理解する統計解析の基礎』(辻真吾監修、技術評論社、2018年)がある)
──得意戦法の振り飛車について
居飛車だと相居飛車の研究勝負になりやすいですが、自分はそういうのが好きではない。対抗形で力の出る将棋が指したい。自分は振り飛車に可能性を感じていて、振り飛車の可能性を探っていきたいです。自分の力で勝ちたいという思いがあります。
──大学院ではどんな勉強をしている?
自動車の運転支援についてです。ドライバーの不注意による事故をAIを使って防ぐ運転支援の研究をしています。
──大学院を卒業したら研究関係を続けるのか、棋士に専念するのか?
大学院を卒業しても、プログラミングが好きなので続けていきたいと思っています。趣味か仕事かはまだ決めていないです。
三段リーグ、そしてこれまで出場した公式戦で好成績をあげている二人。四段としてついにスタートラインに立った両棋士の活躍に期待しましょう。
4月からプロデビューする服部新四段(左)と谷合新四段