将棋情報局

「将棋無双」を堪能しよう 第15番編 ~不利合駒をめぐる攻防~

『図式全集 将棋無双』の第15番を紹介します。



『図式全集 将棋無双』、ただいま絶賛予約受付中です!
これまで30番、29番、10番、と紹介させていただいておりましたが、今回は15番を紹介させていただきます。豪快さが強調されがちな無双の理知的な一面をご覧ください。



まず初手から▲9三歩△8三玉はこう進むところ。▲8九香と打ったところが問題です。


【0図】

かわす手は簡単に詰むので、8四に焦点の合駒をすることになります。
▲8四同香なら△9三玉、▲8四同馬なら△8二玉とする狙いです。注意しておきたいのは、この合駒は何を打ってもすぐに取られるということです。皆さんは、どうせ取られる合駒ならどれを選びますか? ふつうは安い駒を選びますよね。


【1図】

そこで、△8四桂としてみましょう。すると次のように進みます。

▲8四同馬△8二玉▲7三馬△同玉▲8三飛△6四玉▲7六桂△5四玉▲4四角成△同香▲5五歩


【2図】

この▲5五歩が急所。以下△同玉に▲5三飛成と龍ができて詰みます。これが正解でしょうか?
いえ、ここで驚きの手筋が登場します。相手にあえて強い駒を渡すことで得をするという、「不利合駒」の手筋です。それがこちら!


【3図】

△8四飛! どうせ取られるだけの合駒なのに、飛車を渡してしまいます。これはどのような狙いなのでしょうか。先ほどの桂合のときと同じように進めてみましょう。先ほどの手順から、▲7六桂が▲6五飛に変わるだけです。すると……?

▲8四同馬△8二玉▲7三馬△同玉▲8三飛△6四玉▲6五飛△5四玉▲4四角成△同香


【4図】

 なんと、2図で急所だった▲5五歩が打ち歩詰で打てません! この局面はもう手が続かず逃れです。
 整理すると、つまりこういうことになります。
 
①△8四合駒はなんでも取られるだけ。
②その駒は取られたあと△6四玉を5四に運ぶ王手に使われる。
③その駒が5五にも利けば、攻め駒が強すぎて▲5五歩を打てなくなる。

②からその駒は6四に王手をかけたとき5四に利きを持ってはならず、かつ③から5五には利いている必要がありますので、飛車だけがこの延命効果をもつ合駒であることになります。玉方にとって一番不利なように思える合駒が結果的に最善になるのが「不利合駒」の名前の由来。ロジカルな最善と直感的な感覚が一致しないように見えるのが面白いですね。
 さて、驚いてばかりもいられません。何しろ「これが妙手で詰みません」では詰将棋になりませんから、宗看はさらなる切り返しを用意しています。それが以下の手順。

3図(△8四飛)以下の手順
▲8四同馬△8二玉▲9二歩成△同香▲9三馬


【5図】

▲7三馬と飛車を取る代わりに▲9三馬とこちらに捨ててしまいます。これによって次の手順を用意しているのです。
△9三同玉▲9五飛△9四歩


【6図】

飛車を離し打つ空間を確保して▲9五飛が地味ながら巧妙。飛車はもう売り切れですから、これで飛車より弱い持ち駒に持ち変えることができるわけです。桂でもほぼ同じですが、作意は歩合。以下はこれまで働いていなかった9六の金を使って最初に想定していた手順に持ち込んでいきます。

6図以下の手順
▲9四同飛△同玉▲8五金△9三玉▲8四金△8二玉▲7三金△同玉▲8三飛△6四玉▲6五歩△5四玉▲4四角成△同香▲5五歩


【7図】

馬捨てによって、渡された飛車を安い駒に持ち変えることで、狙いの▲5五歩を打つことができました。以下は龍も消してのまとめ。

7図以下の手順
△5五同玉▲5三飛成△5四金▲4四龍△同金▲5六香まで33手詰。



不利合駒をめぐる攻防はいかがでしたでしょうか。
宗看の難解作といえば、圧倒的な読みの量によって作られている作品が多いのですが、本作は読みの量としてはそれほど多くありません。しかし、桂合というわかりやすい想定手順、その手順に持ち込ませない玉方の妙手、さらにその場合のみ成立する手段によって局面を打開していくところと作者の思惑通りの順番で全部の変化を読まされるように作られています。そのため、解き終わった後に良質な謎を解いたなという感覚が残るはずです。
こうした理知的な作品も数多く収められているのが将棋無双という作品集。ぜひ予約購入してお確かめください!
 
将棋情報局では、お得なキャンペーンや新着コンテンツの情報をお届けしています。

著者