金井恒太六段「金の狙撃手が教える錬金術」~将棋世界 2019年3月号より|将棋情報局

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金井恒太六段「金の狙撃手が教える錬金術」~将棋世界 2019年3月号より

盤上も世の中も金次第!

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将棋世界 2019年3月号の戦術特集は「賢い金の運用法」。金井恒太六段による解説「金の狙撃手が教える錬金術」、次の一手、そして北島忠雄七段による付録「次の一手 実戦から学ぶ金の手筋」の3部構成で、玉の守備、寄せの主役、受けの要と、あらゆる局面で重要な役割を担う「金」の上手な使い方が身に付けていただきます。

本ページでは金井六段の解説の一部を紹介します。「金の狙撃手」のネーミングからはやや怖い印象を受けますが、講座はお人柄同様とてもやさしい内容になっています。どうぞお読みください。

※ウェブ掲載用に内容を一部変更しております。

金という駒の基本性能

─金井恒太六段に金の賢い使い方を解説してもらいます。決してマネー講座ではありませんので、読んでもお金持ちになるわけではありません。

金井 私の名前にも「金」が入っていますし、子どもの頃からいちばん好きな駒でした。現実の金遣いはさておいて、盤上での金使いは得意にしています(笑)。特に寄せの決め手で放つ持ち駒の金は、一局の中で気持ちのよい瞬間です。

2018年3月号の本誌特集「桂の技法」では、「桂の貴公子」こと三枚堂達也六段が解説しましたが、金井六段はサウスポーから相手の玉を遠く射抜くというイメージがありますので、「金の狙撃手(スナイパー)」でいかがですか。

金井 気恥ずかしいですが、ゴルゴ13みたいでかっこいいですね。

おまけ 日本将棋連盟HP内、桂の貴公子・三枚堂達也六段が教える「桂の技法」【将棋世界2018年3月号のご紹介】

─それでは本編に入ります。まず金はどういう性格の駒ですか。

金井 周りのマス目は、竜や馬を除けば玉の次にカバーできる範囲が広く、使い勝手がよい駒です。盤上では重要なポジションに置くことによって無類の守備力を発揮しますし、持ち駒になれば決め手の切り札としても活躍するので、能力が高く、頼れる相棒です。金をうまく使うことが強くなる近道と言っても、過言ではありません。

─金と銀は同じカナ駒として括られていますが、価値は同等ですか。

金井 無条件の金銀交換なら、1マス利きの多い金のほうが、価値が高いでしょう。ただし駒の価値は局面によって変動するので、一概には比較できません。

─飛車角の大駒と金銀の2枚換えは、どちらが価値が高いですか。

金井 基本的には金銀のほうが飛車1枚よりは得ですが、これも状況次第です。 第1図は▲2三銀不成に、△2七歩▲同飛△2六歩と飛車頭を連打された局面ですが、以下▲3二銀不成△2七歩成▲3一銀不成では、2枚換えといえども先手陣に飛車の打ち込みが残って失敗です。

【第1図は△2六歩まで】

─桂香の小駒と金の2枚換えでは、いかがですか。

金井 桂香は局面によって価値が大きく変動します。形勢互角なら好みもあると思いますが、私は金の狙撃手ということなので、金を推したいですね。桂の貴公子こと三枚堂六段なら、桂香を好むかもしれません(笑)。

 

金銀逆は成立?

─棒銀、腰掛け銀、早繰り銀、ツノ銀中飛車、カニカニ銀など銀の名前がつく戦法名は多いですが、それらが金だと成立しますか。

金井 創作してみましたが、第2図のツノ金中飛車では心許ないですね。例えば▲3五歩△同歩▲3八飛と進むと動かす駒が難しく、早くもピンチです。次に▲4六銀~▲3五銀と出られると、3二の銀が浮いているのでとても戦えません。また第3図はカニカニ銀ならぬカニカニ金ですが、これも玉の薄さが壊滅的に弱く、決戦になったらひとたまりもありません(笑)。この図からも分かる通り、金は初形から玉を献身的に守っていることに、改めて気づかされます。

【第2図は△7四歩まで】

【第3図は▲4六歩まで】

─逆に対石田流の棒金、阪田流向かい飛車、対ひねり飛車のタコ金戦法などが、銀だったら成立しますか。

金井 いずれの戦法も共通していることは、銀のように仕掛けてさばきを狙うというよりも、金の圧力で押さえ込みを狙うことを目的にしています。そのためにはヨコや後ろに動ける金は、適しているわけです。

─俗に金銀逆形は悪形といわれますが、どうしてですか。

金井 第4図左下のような矢倉の金銀逆形では、△8五桂と跳ねられたら▲8六金とかわしますが、7七にも9七にも利いておらず、守備には働いていません。また▲7八銀の形も側面や7九の地点が弱く、6八には6七金の1枚の利きしかありません。反対に第4図右上の矢倉囲いなら、▲2五桂には△2四銀で利きは健在ですし、ヨコからの攻めにも強い形です。また金銀の可動域が多く組み替えも容易ですし、何よりも陣形に弾力性があります。その差は一目瞭然です。

【第4図】

 

 

全編は、将棋世界 2019年3月号でお読みいただけます。「序盤の金は囲いの駒」「中盤の金は用途多彩」「金は寄せに必須の駒」「金は受けでも主役」など、さまざまな局面で活躍する「金」の正しい使い方が学べる内容となっています。ぜひお読みください。

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