【将棋世界こぼれ話】「美しい代表局を残したい」藤井聡太竜王・名人 インタビュー|将棋情報局

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【将棋世界こぼれ話】「美しい代表局を残したい」藤井聡太竜王・名人 インタビュー

2016年10月、藤井聡太四段が棋界に降り立った。史上最年少棋士、というだけでも新しい歴史の始まりを感じさせるに十分だったが、実際に到来したのはそれだけに留まらず、将棋史の中でももっともセンセーショナルな現象だった。記録づくめの10年を振り返る。

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気がついたら季節が変わっていた

──プロ棋士としてデビューしてから10年を迎えます。率直に、どのようなお気 持ちですか。

藤井  「10年」と聞くと長く感じますが、もうそんなにたったのか、というのが率直な思いです。棋士になってからは、コンスタントに対局があるという状況が続いてきました。1つの対局が終わると、また次の対局に向けて準備するというサイクルで日々が進んでいくので、気がついたら季節が変わっていた、ということもよくあります。そうした繰り返しと積み重ねの中で、10年という月日が流れたのだと思います。

──14歳でデビューした当時、「10年後にどうなっていたいか」と聞かれることもあったと思います。当時は、どのような将来像を描いていましたか。

藤井  当時そういう風に聞かれたことはあったかなと思うんですが、うーん、どう答えていたんでしょう(笑)。おそらく「タイトルを取りたい」というようなことを答えたんだろうと思いますが、当時からそういった意識は薄いほうで、恐らくタイトルを取りたいかと聞かれたからそう答えたというのが正直なところだったかなと思います。

──現在のご自分に近い姿を想像することはありましたか。

藤井  そもそも、将来の自分を具体的に想像することがなかったように思います。奨励会に入った時点で、棋士になる姿や、その後に活躍する姿を思い描く方もいると思いますが、私の場合はそうではありませんでした。棋士になったときも同じだったと思います。ただ、当時は根拠のない自信のようなものがあったと思います。それは「タイトル戦に挑戦できる」といった具体的なイメージを伴うものではなく、漠然と湧いてくる自信でした。ですから、将来の具体的なイメージや目標は、比較的希薄だったと思います。

デビュー戦と29連勝

デビュー戦の加藤名誉十段戦。世間の注目は圧倒的なものだったが、これすら始まりに過ぎなかった(撮影:常盤秀樹)

──デビュー戦では、加藤一二三名誉十段と対局しました。どのような記憶として残っていますか。

藤井  私は三段時代に公式戦を指した経験がなかったので、本当に初めての公式戦でした。当時は勝手もわからず、「公式戦はどういう感じなのだろう」と思いながら対局場に向かったのを覚えています。実際に加藤先生が目の前に座られると、やはりそれだけで非常に大変な迫力を感じました。加藤先生が休憩中に指されたということも印象深く記憶に残っています(笑)。加藤先生は当時76歳でしたが、本当に真剣に考えておられることがこちらにも伝わってきました。指し手からも闘志が感じられましたし、デビュー戦で非常に貴重な経験ができたと思います。

──史上最年少棋士と最年長棋士の対局として、大勢の報道陣が集まりました。注目度の高さに戸惑いはありませんでしたか。

藤井  その時点では、普通の公式戦を経験したことがなかったので、「公式戦とはこういうものなのか」と思っていたのかもしれません。2局目以降になって、普段の公式戦との違いに初めて気づきました。

──10年後の今、デビュー戦に臨む14歳の自分に声をかけるとしたら、何と言いますか。

藤井  特にかける言葉はないですね。もちろん、いまのほうが技術面以外でも知っていることは増えているとは思うんですが、ただ、当時の漠然とした自信が、自分にとっていい方向に働いたというところもありますし、当時は当時で自分なりに取り組んでいた、ということでいいのではないのかな、と思います。それに、昔から頑固なほうだったので、何かアドバイスをしても聞かなかったと思います(笑)。

この続きは『将棋世界12月号』でお読みいただけます。
本誌では、藤井竜王・名人がデビューから10年で最も悔しかった対局や八冠達成時の「心残り」、記録やタイトルとは別に、これから棋士として実現したいことを語っていただきました!
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著者

藤井聡太(出演)
會場健大(著者)
将棋世界編集部員。詰将棋を見るのが好き。解くのはそれほど好きではない