SECTION-05 サーバの種類|Tech Book Zone Manatee

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インフラエンジニアの教科書

SECTION-05 サーバの種類

ITインフラの世界が理解できる珠玉の1冊『インフラエンジニアの教科書』から、「SECTION-05 サーバの種類」を紹介します。

CHAPTER 02 サーバ

>>>本章の概要

 サーバとは、ユーザからのリクエストを受けてレスポンスを返すハードウェアのことです。サーバはITサービスを提供するITインフラの要となります。

 「どのようなサーバをどの程度、調達すべきか」という悩みはITインフラの構築を検討するあらゆる現場で日常的に見られます。それほど、サーバの選定は複雑で難しいテーマとなります。サーバの選定を難しくする大きな理由は選択肢の多さです。一口にサーバと言ってもラックマウント型サーバとタワー側サーバといった形状の違いもあれば、サーバに搭載するさまざまなパーツの種類、エントリー/ミドル/ハイエンドサーバといったランクの違い、もしくはクラウドや仮想サーバといった物理サーバでないサーバの形態もあります。

 本章では適切なサーバの選定を行えるように、選択肢となる要素を一通りご紹介し、各々の要素で選定のヒントを記してあります。

 

SECTION-05 サーバの種類

 設置場所や用途が多様なことから各ベンダーからさまざまなモデルのサーバが発売されています。ここでは、サーバの種類をいくつかのカテゴリーに分けてご紹介します。

 

●ラックマウント型サーバとタワー型サーバの違い

 サーバにはラックマウント型サーバとタワー型サーバがあります。ラックマウント型サーバはデータセンターや社内サーバルームに設置されているラック内に収容します。それに対してタワー型サーバは社内サーバルームに置かれる他、オフィスや店舗などにも置かれます。

 

◎タワー型サーバの例(写真提供:デル株式会社)

 

◎ラックマウント型サーバの例(写真提供:デル株式会社)

 

 ラックマウント型サーバは19インチラックに収容することを前提としています。19インチラックに搭載する機器は1U、2Uといったユニット単位でサイズが決まっています。1Uは高さが1.75インチ(44.45mm)です。エントリーサーバの場合は1Uサイズのものが多いですが、ミドルレンジサーバ以上の場合は搭載できるパーツが多いため、2Uサイズ以上のものが多いです。

 

◎サーバラック(写真提供:デル株式会社)

 

 サーバは冷却と騒音対策が必要なことから設置場所を選びます。データセンターや社内サーバルームといった空調が整った密閉された専用空間にサーバを設置するのであれば特に問題となりませんが、オフィスや店舗といった人がいる空間にタワー型サーバを設置する場合には一般的なサーバの代わりに静音サーバなどと呼ばれるオフィス設置を前提として開発されたサーバを用いることもできます。また、サーバは数kgから数十kgもの重量があるので、社内にラックを立てて高密度にサーバを設置する場合は床面の耐荷重に注意する必要があります。

 

●エントリー/ミドル/ハイエンドサーバ

 サーバは、用途によってエントリー/ミドル/ハイエンドサーバを使い分けます。ただし、これらの区分に厳密な定義はないので、一般的な区分をご紹介します。

 

エントリーサーバ

 数十万円。主にWebサーバやアプリケーションサーバで利用されます。通常、ソケット単位で1~2個のCPUが搭載可能なサーバのことを指します。

 

ミドルレンジサーバ

 数百万円。主にデータベースサーバや基幹系サーバで利用されます。おおむね、ソケット単位で4個以上のCPUが搭載可能で、かつハイエンドサーバに属さないサーバのことを指します。

 

ハイエンドサーバ

 数千万円~数億円。主に基幹系サーバやデータベースサーバで利用されます。おおむね、ソケット単位で数十個以上のCPUが搭載可能なサーバのことを指します。

 

●IAサーバ

 IAサーバとは、Intel社や、AMD社などのインテル互換CPUを搭載し、かつ通常のパソコンと同様のアーキテクチャをベースにして製造されたサーバのことです。IAサーバの場合、基本的にはどのベンダーを選んでもアーキテクチャは同じですが、ベンダーや機種によって形状や機能に多少の違いがあるため、IAサーバを選定する際は次の要素に気を付けるとよいでしょう。

 ●データセンターのラックにサーバがきちんとマウントできるか。もし、ラックマウントレールがラックサイズに合わないなどの理由でラックにサーバがマウントできない場合、ラックに棚板を設置し、機器を棚板の上に直置きすることになる。

 搭載できるパーツの数(例:ハードディスク搭載数12本、メモリ18枚までなど、ベンダーによって搭載できるパーツ数は異なる)。

 障害発生時のサポート体制。

 リモートコントロール機能(ベンダーによって呼び名や機能が異なる。SECTION-06のコラム参照)。

 納期。

 

◎ラックマウントレール

 

◎棚板の例1(写真提供:サンワサプライ株式会社)

 

◎棚板の例2(写真提供:サンワサプライ株式会社)

 

●エンタープライズサーバ

 システムの中核を担う基幹系に使われる機器は、基本的にどれも高価です。これは大量のアクセスに耐えられるキャパシティがあり、かつ耐久性が高い機器が選定されるためです。基幹系に使われるようなサーバのことをエンタープライズサーバと呼びます。

 IAサーバと違ってエンタープライズサーバは高価なため、普段は扱う機会がほとんどなく、何をどう選んだらわからない場合があると思います。初めて扱うことになる機器については購買する判断基準がないので、通常はベンダーに来訪してもらい、営業SEなどから技術説明を受けることになります。

 特に重要度の高いエンタープライズサーバでは、ハードウェアアラートが発生するとベンダー側に自動通報されるように、サーバに電話回線を接続するサービスを利用することがあります。この場合、特に問い合わせしなくてもベンダー側にて自動的に修理対応が手配されます。

 

COLUMN サーバとパソコンの違い

 サーバはパソコン同様、マザーボード(メインボード)、CPU、メモリ、ディスクなどの部品で構成されています。
 サーバとパソコンでは用途の違いから設計思想が異なります。サーバは24時間365日稼働を前提としているため、ハードウェアの故障が発生しにくく、また、故障しても極力システムが止まらないように設計されています。具体的には、パーツ自体の品質が高くてパソコンと比べて壊れにくいこと、主要パーツを冗長化することでパーツの故障が発生してもサービスを止めずにパーツ交換を可能としていること、ハードウェア故障時のベンダーサポートが充実していることなどが挙げられます。また、サーバはパソコンと比較してはるかに多くのメモリやハードディスク(HDD)などといったハードウェアリソースを搭載できるものが多いです。
 一方、パソコンは個人利用を目的としているためグラフィックスやサウンドといったマルチメディア機能が充実しています。
 サーバには原則、サーバ用OSをインストールする必要があります。サーバは高い安定性が求められるので、サーバベンダーが動作保証しているサーバOS以外のOSを使うことは推奨されません。

著者プロフィール

佐野 裕(著者)
1973年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士通株式会社でSE職を経て、2000年より現在所属しているLINE株式会社に創業メンバーとして勤務中。趣味はベルギービールや日本酒を飲むことと、韓国語。システム管理者Blogを運用中です。
URL : http://blog.livedoor.jp/sanonosa/