おまえに岩とかわ一徳 (宮尾節子+まちこ)


 

奥武蔵

緑葉繁る

山懐を清く流れる

谷川のとある場所に

 

ぽっこりと

おまえに岩が立っている。

 

夏場になると

森の子達がわんさと

この岩に登っては飛び降りて

賑やかに声をあげ、水浴びをする

おまえに岩は、大層りっぱで

形もいいが、ひとつだけ

難がある、説教する

岩のくせに──

 

きょうも

森の子のなかで

ぴかいちの勉強嫌いで

遊び好き、水浴び好きな子

かわ一徳(いっとく)が

学校さぼって

 

あ、この川の名は

さぼ川だ

学校の名はそうさな

森学園の

 

前略後略

どぼん!と一徳。

 

さっそく、ひと言

言わずにはいられない

岩の、説教がガンガン始まった

おまえに──

(おまえに、岩れたくない!)

ひとびとのおもいの石のつぎに

おまえに岩ができた

と聞いている。

 

どぼん!

 

だけど

おまえに岩は

飛び込むとき思いっきり

顔面、蹴られつつ

かわ一徳の

白い足裏が揃って

ヒラリと、宙に舞うのが

好きで好きで

 

今年も岩がやめられない

ついでに

得意の説教も

 

 

 

2014.7.31

 

カテゴリ: 牛乳岳(宮尾節子)
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