川など


 

視界の右奥を、白い鷺が、より右へ、歩いている

その、より奥から、笛の音がきこえる

視界の真ん中の奥を、べつの鷺が右へ歩いてゆく

視界の中央の、川の中州の草むらのかげに入る

 

視界の右端へ消えた鷺が、中央へ向かって低く飛んできた、

そうすると、もう一羽、右から飛んでついてきた

視界の奥の対岸の道を、自転車が、右へぬける

視界の手前の、私のいる道を、自転車が右へぬけた

笛の音がまたきこえる

 

私の右上うしろの交差点では、

青信号にあわせて交互に鳥を模した声が鳴る

左下うしろを二羽の雀が鳴きながら歩き、右上うしろへ消えた

左とおくで、いーろろろろ、と、べつの声がする

 

そういえば、さっきは燕だった

七条大橋の下を二羽

 

視界の右なかほどを手前から奥へ賀茂大橋、

コンクリートミキサー車の青がゆく

視界の右なかほどから、中央上へ、羽ばたく茶色の中くらいの鳥

視界の右上から左へ、おなじ種類の鳥、羽ばたかない

 

右をむけば桜の葉、その枝、それは木

さきほどの雀だろうか、二羽、そのなかに

下の芝生を白い蝶

鷺は遠くに、こまかくなっている

橋は、わりと古い

 

左をゆるく自転車がうしろへぬけた

笛は練習だろう

すれちがうおなじ色は市バスだろう

わたしはこれから右上うしろの交差点を

さらにうしろへすすむだろう

 

今日は、会わないことになった

 

 

橋に咲く花とほくから夏の日差し

 

 

2014.6.24

 

カテゴリ: アルミレコーズ(佐藤文香)
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