はじめに
二〇一八年秋に広島県廿日市市で行われた囲碁大会の会場での出来事で す。多面打ち指導碁を終えた、広瀬優一第43期新人王が頭を抱え込んでい ました。
「どないしたん」
と尋ねると、
「指導碁全敗したんです。しかもどの碁も2、30目の大差で」
これはただならぬことです。逆の結果なら日常茶飯事ですが、活きの良 い若手棋士が置碁とは言え、まさか完膚なきまでにやられるとは。
興味を持った私は詳しく聞いてみました。すると、指導碁を受けた方々 は普段、山本賢太郎五段に打ってもらっていたのです。
それで分かりました。我が弟子、山本賢太郎のした手打ちの技術が凄い と噂には聞いたことはありました。指導碁を受けられた方は、広瀬新人王 にも同じだけの置石か、あるいは強い若手棋士が相手ということで、山本 五段と打つ時より一目多く置いていたかも知れません。指導碁の経験が多 いとは思えない彼にとって、それは災難でしたね。
その時にふと思い付きました。山本賢太郎流のした手ごなしの秘技を世 に出そうと。それからは自分でもした手を困らせる作戦を研究しました。 どんな実戦にでも必ず出て来る、隅の星に対しての打ち方に限定して。
本書に登場する手段は私達師弟の合作です。
置碁のうわ手の立場で解説していますが、した手に正しく打たれると形 勢を損ねるような、いわゆるハメ手とは一線を画しています。部分的に互 角以下にならない手段を厳選しており、互先でも使えます。それどころか、 うわ手に対して使ってみても有効だと思います。
皆さんも本書の手段をマスターして、是非碁敵をあっと言わせる楽しみ を味わって下さい。
二〇一九年七月 九段 後藤俊午
うわ手の心得
![](/files/user/img/978store/articles/amahissyou001.png)
一、 むやみに形を決めない。
様々な狙いや可能性を残しましょう。
一、 後手を引かない。
先手先手は囲碁の基本ですね。
一、 選択肢の多い手を選ぶ。
相手を悩ませる訳ですね。
一、 大きく構える。
焼きもちを焼かせましょう。
一、動きを止めない。
盤上所狭しと走り回って、相手の眼を回させます。
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